VRC開始1分後まで
ぴぴぴ。ぴぴぴ。判然としない意識が判然としないまま立ち昇る。腰に負担がかからないように状態を起こす。掛け布団を剥ぎながらのそりと立ち上がって、机の上で鳴っている目覚まし時計をほとんど視認出来ないまま叩いた。少し意識がはっきりする。視界がもやもやとしている。カーテンが開けっ放しで、目覚まし時計が鳴る前から陽の光によって少しずつ覚醒していたらしいことに意識が向く。重心のふわふわしている体が敷布団を畳む。一連の作業がしにくいのは視界が不明瞭な為だと気がついて、机の上に置かれていたメガネをかける。あ、朝か。んん・・・。なるほど、ぼやけた目で時計を見ると、どうやら午前8時半らしい。布団の隣にある机の上に置いた携帯用ボトルを手に取り蓋を開け、水を口に流し込む。意識が体重を取り戻して、重心が少しお腹の辺りまで下がってきた。今日は寝不足感がない。寝すぎた感じもない。気圧も良好。いいスタートだ。扉を開けて自室の外に出て階段をペタペタと降りてゆき、洗面所に向かう。洗面所に着くとメガネを外して洗面台に水を出し、そこに頭を突っ込む。寝癖を直して顔を洗い、わしゃわしゃとバスタオルでふき取ってドライヤーで髪を乾かす。温風でちゃんと乾かした後に冷風で少し乾かすと、髪のキューティクルが閉じていいと聞いたことがあるので実践している。コスパ最強のハトムギ化粧水を顔につけ、いい具合になったらキッチンへ向かう。キッチンに着くと棚を開けてシリアルを出し、皿と牛乳パックを取り出して適量注ぐ。牛乳とシリアルを元に戻してスプーンを取りだし、リビングに持っていく。椅子に着席すると手を合わせる。
「いただきます」
シリアルは美味しい。牛乳でふにゃふにゃになった部分とパリパリの部分のバランスがたまらない。これからの活動に欲しい量の糖分と、昼になるとお腹がちょうどすく程度の量。重すぎず軽すぎず、栄養価もなかなか良いという優れものだと私は思う。
「ご馳走様でした」
食器をキッチンに持って行って軽く水ですすぎ食洗機に突っ込む。濡れた手を拭き、再び洗面所へと戻る。今度は歯ブラシを取り出して、歯磨き粉を付けて磨きだす。こちらは軽く済ませて、歯間ブラシをより念入りにかける。シリアルは歯の間に詰まりやすい。一通り歯を磨くと口をゆすぎ、歯ブラシと歯間ブラシを元に戻す。
「おっしゃ」
来た道を戻り階段をのしのしと登る。自室に戻ると、椅子に座ってPCの電源ボタンを押す。PCが起動するまでの間に背中側にある本棚を見て、本を1冊取り出す。金銅先生のK3曲面。本をパラパラと開くとディスプレイの手前にある書見台に立てかける。机の上に置いてあるタブレットの電源も入れ、顔認証で開く。どうやらPCも起動したようだ。ログインIDを入力し、デスクトップ画面が開くと真っ先にVRChatと名前のついたアイコンをダブルクリックした。するとウインドウがひとつ開き、loading画面、すぐさまgo…VRCのHOMEにアバターが降り立つと、メニュー画面を開いてfriendの一覧を見る。すぐに目的のWorldによくいるフレンドが表示され、joinを押した。また少しloadingが成され、go。チリンチリン。いつものWorldに降り立つと、そこにはフレンドの姿があった。私は駆け寄ってフレンドに声をかけた。
「草薙さんおはござまーす」
「あ、はよござまーす」
こうして今日もVRCと共に一日が始まる。
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