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大人らしさは伝統芸能

子どもの頃に大人から何となく言われてきたことっていろいろあると思うんですけど、いざ自分が大人になってみると、年下の人に対して自分がそれを言うのってけっこう難しいなという話です。

すこし前のできごとなんですけど
知り合いの20代後半の社会人の女性(Aさん)が、大学生ぐらいの人(Bさん)に向かって
「Bちゃんぐらいの歳やったらもう名前に‘子’がつく女の子とかあんまおらんやろ〜」
と言ったのです。
大げさかもしれませんが、わたしはこの発言を聞いて一瞬時間止まるぐらい衝撃を受けました。
だって、わたしもこのセリフを子どもの頃から大人に散々言われてきたからです。
Aさんも、世代的にぜったい言われてきた側のはずなんです。
なんか、「言われてきたことを次の世代にも言う」というある種の伝統が受け継がれる瞬間を目撃したような気がしました。

わたしだったら絶対言えないです。思ってないから。
わたしの同級生も‘子’がつく名前の女の子は少なかったな〜と言うだけで終わります。
でも実際どうかとかは問題じゃなくて、そのテンプレ自体を伝統として受け継ぎ、言う という一連の流れを見ました。
こうやって、大人らしさは受け継がれていくんだなあと感じました。

もう一つ最近見かけたのは、さっきと同じ2人の会話なんですけど、Aさん(大人)が Bさん(学生)に対して
「若いうちは失敗しても全然大丈夫だよ〜」
と言ったんです。
わたしはこれもいろんな意味で衝撃でした。
もちろん伝統芸能として、しっかりとAさんが先代の大人から受け継いだセリフを次の世代に言ってあげているのだということに感動しました。
加えて、私は「失敗しても大丈夫」と言われたことがあまりなかったので、それもびっくりしました。
受験勉強して医学部入ってひたすら試験受けて卒業試験受けて国家試験受けてってしてると常に周りからプレッシャーをかけられていて、失敗しても大丈夫だと他人から言ってもらえるなんてドラマみたい!考えられない!みたいな。
(その頃の私がプレッシャーで壊れていて優しい言葉を受け止める余裕がなかっただけかもしれません。もし言ってくれてた人がいたらすみません。)
しかも、若いうちはってことは、知らぬ間に私は失敗できないゾーンに入りつつあるのか!?という驚きもありました。
わたしの感覚では、むしろ医師免許取れて研修医終わってやっとある程度プレッシャーから解放されて、自由に仕事できるようになって、むしろ今の方が失敗とか試行錯誤できるなぁという感覚でいたので、世間と自分がズレていることのショックもありました。
(自分の感覚が医者の中ではズレているという認識はもともとちゃんとありました。
一般的なお医者さんは「医師免許取ったぐらいで安心するな!もっとストイックに精進しなさい!てかするのが当たり前!」と言いますので。)

正直、わたしは大人らしさを受け継ぐ覚悟ができてません。たぶん一生受け継げないと思います。
だからわたしに大人の役割とか大人のセリフを期待するのはやめてください。お願いします。
心配しなくてもあなたにそんなレベルの高いコミュニケーションは期待してませんよ とどこからともなく言われそうですが…

大人のセリフの伝統芸能は、言ってる本人が違和感なく自然に言ってるのなら別にいいんですけど、でも表現によっては自分を生きづらくする暗示にもなってしまう気がするんです。
「若いうちは失敗しても大丈夫だよ」と他人に言うことで、言った本人が無意識に自分に制限やプレッシャーをかけてしまっているかもしれないし、言われた側も大人になるのが怖くなるかもしれない。

わたしの考えすぎなだけで、言ってる人も言われてる人もそこまで拗らせてなくてプチコミュニケーションとしてさらっとラリーしてるだけなら全然良いんですけどね。

結論としては、他人にも、もちろん自分にも、制限をかけず、プレッシャーをかけず、いらぬ役割を負わせず、自由な精神で生きたいものです ということです。
自分に厳しく制限かけてると、他人のことも制限したくなっちゃうから。
伝統芸能は、受け継いでもいいし、自分には合ってないなと思ったら受け継がなくてもいいと思います。
何人か受け継ぎ拒否したところで、全体で見れば受け継ぎたい人もたくさんいるでしょうから、伝統が途絶えることはないので心配いりません。

しかもこの伝統たぶん途絶えても大丈夫です。


きょうもおつかれさまでした。
読んでいただきありがとうございます。

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(一応調べたんですけど、‘子’のつく名前は1970年代までは圧倒的に多かったようですが、それ以降はだいぶ減ったみたいです。)

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