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旧作から新作まで、最近観た映画の話。 --------------------- 仕事…

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旧作から新作まで、最近観た映画の話。 --------------------- 仕事終わりのレイトショーが至福のひととき。 チュロスとポップコーンの匂い大好き。 半券は栞代わりに使いがち。

最近の記事

『ホールドオーバーズ』の話

それぞれの事情を抱えたなんの共通点もないように見える3人が、反発し合いながら、少しずつ歩み寄っていく様子が、微笑ましくて、あたたかい。 わからずやな親をギャフンと言わせたり、息子の死を心から受け入れられるようになったり、誰からも好かれるヒーロー的存在に変身したり… なんてドラマチックな展開はなくても、「ダメなこと」を一緒になってできてしまうようになる関係性の変化に胸が熱くなった。 チェリージュビリーと爆竹のシーン、好きだったなあ。 「置いてけぼり」は、やっぱり寂しい。 誰

    • 『チャレンジャーズ』の話

      女性として、テニスプレーヤーとして、若くして圧倒的な魅力を放つ女性に翻弄される親友同士の男たち…なんて構図を想像していたら、思っていた以上に複雑で繊細な三角関係だった。 出会ったばかりの10代。 選手として活躍した学生時代。 それぞれの形で大人になった現代。 時代ごとに矢印の方向があちこちに向いて、最後まで誰が誰にどんな思いを抱いているの!とハラハラドキドキな展開。 誰の言葉が本当で、誰の愛が本物か。 どの言葉も駆け引きのように感じたし、どのシーンも切実なような気もして、

      • 夜風を浴びながら『天才スピヴェット』を観た話。

        学生の頃、『ものすごくうるさくてありえないほど近い』を観て以来、久しぶりのピクニックシネマ@恵比寿ガーデンプレイスへ。 夕方まで土砂降りだった雨がちょうど開演前に上がって、芝生席にはお客さんがたくさん。 友人取ってくれた最前席で、心地良い夜風を浴びながら、可愛い天才少年の冒険を観た話。 科学の天才・10歳のスピヴェットが田舎町で一緒に暮らすのは、カウボーイのお父さん、昆虫博士のお母さん、人気者になりたいお姉ちゃん、そして自分とは正反対だけど仲良しな双子の弟・レイトン。 み

        • 『パーム・スプリングス』の話。

          タイムループといえば、不安感や切なさを煽られる映画が多い印象だけど、これは全く新しいラブコメだった。 ヒロインが結婚式の幸せな雰囲気に馴染めないシーンから始まるあの感じ。 おちゃらけた男に振り回されながらいつの間にか一緒になって楽しんじゃうんだけど、最後にはしっかり現実と向き合うことになる展開。 ラブコメのヒロインあるある満載で楽しい。 ヒロインをタイムループに巻き込む男、アンディ・サムバーグの、感情と一緒にコロコロ変わる表情の豊かさも相まって引き込まれる。 一日一日を好

        『ホールドオーバーズ』の話

          『ウェルカムトゥダリ』の話。

          助手となった若い青年の目線から描かれる、ダリと妻・ガラの晩年。 派手さを好み、老いを忌み嫌い、若者を集めてはパーティー三昧。 それぞれ公認の愛人もいて、ニューヨークでホテル暮らし。 常識外れな「ダリランド」の中に少しずつ垣間見える芸術家の孤独と苦悩。 作品がほとんど出てこなくても、ダリとガラの共依存のような夫婦関係や、それを最後まで理解しようとする人たちの敬意など、見応えは十分。 またダリ展行きたくなった。 ベン・キングズレーが人間味ある晩年のダリを好演。 ダリの助手(

          『ウェルカムトゥダリ』の話。

          『帰らない日曜日』の話。

          息子や恋人を失った喪失感。 親の決めた結婚や名家の後を継ぐことへの閉塞感。 帰る場所のない孤独。 第一次世界大戦後のイギリスで生きる人々、それぞれの絶望が静かに伝わってきて苦しい。 メイドと御曹司、許されざる二人だけの時間が唯一、あまりにも眩しかった。 ついさっきまで見つめ合い、触れ合っていた人が居なくなる。 その悲しみを押し殺して、記憶を糧に、地に足つけて時代を生き抜く強かな姿に「胸を打たれる」とはまさにこのことかと思うほど。 御曹司がメイドに別れを告げるシーン。 さ

          『帰らない日曜日』の話。

          『CLOSE』の話。

          兄弟のように育ったレオとレミ。 仲が良くて、そして美しい二人の関係を、同級生たちが性的な目で捉えるのも無理はないような。 その目を気にして距離を置こうとするレオも、戸惑いが怒りとなって抑えきれないレミも、新しい「世界」を知り始めたばかりだったと思うと、子どもって、正直で、可愛くて、繊細で、残酷。 息子に何があったのか知りたい母親と、重い十字架を背負った最愛の友人。 二人のシーンの緊迫感は、セリフこそ少なかったけど、どちらの感情も痛いくらいに感じて苦しかった。 震えながら木

          『CLOSE』の話。

          『パストライブス』の話。

          全体を通して「もしもあの時…」という会話や考え方が多い気がしたせいか、前世や来世に思いを馳せるより、今居る場所に目を向けて、今ここに居る誰かをうんと大事にしたくなった。 両親の都合でまだ幼い頃に韓国からアメリカに渡った彼女にとって、彼の存在は「初恋」であり「故郷」だったのかもしれない。 きっともう戻ることはないけれど、度々思い出しては引き戻されそうになる。 恋しくなって、つい前世だったら、来世だったら、と考えを巡らす。 そう解釈すれば、最後の涙も理解できる気がする。 でも

          『パストライブス』の話。

          『オッペンハイマー』の話。

          実話ならでは、登場人物がとにかく多い。 3つの時系列が細かく分割されて行ったり来たり…という構成。 次から次へと登場するキャラクターたちのテンポの速い会話劇。 冒頭15分くらいでついていけるかしら?と不安になったけど、無事3時間完走できた。 原爆を投下された日本の様子や、現地で戦う米兵は登場せず(それでもどうしたって頭をよぎるけど)。 一貫して描かれていたオッペンハイマーの苦悩や葛藤から、"原爆の父"の人間らしさを見た。 科学者は戦地に赴かないけど、その知見を武器として利

          『オッペンハイマー』の話。

          『夜明けのすべて』の話。

          PMSの藤沢さんとパニック障害の山添くん。 思い通りにいかない日も、誰かにちょっと寄り添えた日もある。 そんな2人の日々や言葉が、共感と感動を穏やかに運んでくれる。 夜が来てまた朝を迎えるように、みんなそれぞれ不安を抱えながら、それぞれ楽しく生きている。 劇的な変化がなくても、大きな一歩が踏み出せなくても、人生って静かにゆっくり、でも着実に進んでいくものなのかもしれない。 俳優さんたちがとても良くて、藤沢さんも山添くんも、その周りの人たちも、本当にそこに存在してる感じがし

          『夜明けのすべて』の話。