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デンマークのオフィスデザイン - ①明るさ

気持ちの良いオフィスのインテリアで欠かせないもの、いろんなファクターがありますがはじめは明るさについて。

空間の明るさには、ルクスという単位が使われます。。日本のオフィスの推奨照度は、よく参照されるJIS(日本産業規格)の推奨する基準で750ルクス、トイレで300ルクスくらいです。

デンマークを含むヨーロッパのISO規格では、オフィスの作業平面上の明るさは500ルクス程度であるようにという指示です。日本よりヨーロッパの方が明るさの基準が低いのですが、夜のデンマークのオフィスは絶対に規格を満たしていないほど、どこもなんとなく暗いんです。蛍光灯が天井にくっついたりしているオフィスは本当に稀で、全体の照度を担保する照明は弱弱しい間接照明です。窓が大きく取られているおかげであんなに明るかった昼間に比べて薄暗く、雰囲気が大きく変わります。
一般家庭も同じで、どこのお宅にお邪魔しても薄暗い。北欧デザインの素敵なペンダントライトやスタンドライトがテーブルやソファをほんのりと照らしてはいるものの、全体として輪郭がくっきり現れない、まるで中世の絵画を思い出すような空間です。電気代の節約のために我慢をしているわけではなく、そういった空間がみな落ち着きを感じて、好きなのです。

日本のJIS規格ではオフィスの明るさ、特に机の上を、最も人間のパフォーマンスが上がる昼の太陽の明るさと大体同じ、750ルクス程度にすることを推奨しています。しかし、光は光源に近くなる程強くなります。つまり、机の上より高い位置にある目の玉は750ルクス以上の明るさを受けているのです。朝から夜までの長い勤務時間の間その光の下にいるということは、目はずっとパフォーマンスの高い、アクセル全開で働いているということになります。基準よりも強い光をずっと受けている上、パソコンから受けるディスプレイの光も合わせて視神経は緊張した状態が続き、疲れ目や肩こりなどの原因となります。

建築学校の製図室でも、間接照明とデスクライトの組み合わせでした。

人間も動物なので太陽の光が強い昼は明るい光、夜はやや暗い空間を快適に思うことは想像できます。しかしいくら強い光が疲れやすいといえども、よく考えられた規格を遵守しないのはいかがなものでしょうか。なにより、オフィスが暗過ぎれば書類が読めないし、仕事になりません。
デンマークには照度について、労働監督局がオフィス環境について推奨基準を出しています。ISO同様、作業平面上で500ルクスを保持することを求めていますが、実は横に注意書きがたくさんあります。そのうちの一つが、デスクではデスクライトを使うこと。これは、人によって十分な明るさのレベルが違うことを前提とした措置です。青い色の瞳を持つ人は日本人のような黒色の瞳を持つ人よりも明るさを感じやすいらしいのですが、デンマークには青・黒を含めいろんな色の瞳を持った人がいます。目の色に関わらずそれぞれの人で明るさの好みもバラバラなので、手元のデスクライトで個人の好みそれぞれに明るさを変えられるのは、とても合理的な回答だと言えます。

デンマーク労働監督局HPのイラスト。PCが古くてかわいい。

作業平面が明るければそれで基準は満たされ、機能的にも問題ないので、オフィス全体の明るさは自由です。なので、望まない人がずっと強い光を受け続ける必要はありません。他にも、全体の照明として、必ず日光を最大限生かすこと・やわらかな光(天井からの光・間接照明)・しっかりとした光(デスクライト・ワークライトなど)を組み合わせ、用途に合わせた光の種類に考慮するようにも書かれています。多くの種類の照明を組み合わせると、自分の好きな明るさを選べますし、明るいところ・暗いところが生み出され、目や体が無駄に疲れない、リラックスしながらも明るい気分にさせてくれるオフィス空間になるのです。光を組み合わせる、その具体的な方法は、次回に続きます。

参考: デンマーク労働基準監督署HPより https://at.dk/regler/at-vejledninger/kunstig-belysning-a-1-5/

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