見出し画像

小説 本好きゆめの冒険譚 第四十三頁

「ふむ、そろそろかの?」

 ゼウスの一言。

 あれから半年が経過した…。

 と、言っても、この「何も空間。」での話で、現実世界の時間は止めてあるから、現実的には何も変わらない…。

「もう一度、行ってみるかの?本の世界へ!」

 ゆめも、力強く頷く。

「ちょ、ちょっと、私も連れて行ってよ!」
ヘーラーが慌てた調子でゼウスに言う。

「それは、ゆめに頼むんじゃな、儂もゆめに連れて行って貰ってるからの。」

「ゆめちゃ〜ん、お願い!」
 両手をパンパンと叩いてお辞儀をする。
 まるで、神社に参拝に来る人みたいだ。

「いいよ!私に掴まって!」

 光が3人を包み、本の世界へ…


――――――――――――――――――――――――――――


「あの獲物、なかなかこっちに来ないな…」
 太陽がつぶやく…。

「サッサと来いよ!焼き尽くしてやる!」

 反対側に目を凝らす。

「あれ?変態が増えてねーか?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 3人は光の中から現れた。
 場所は、前回と同じ「サボテン」がある場所。

 ゆめと、「大丈夫!」と書かれたTシャツ姿のゼウスが、進もうとすると、

「ゆめちゃ〜ん♡」
 どうしたの?って聞くと…。

「私も「お洋服」欲しいな〜♡」

 3人は、虫食い状態になった「サボテン」の前に立つ。

「思い出すの〜」

「そうだね、お父さん。」

「これがゆめちゃんが、初めてやったサボテン?」

「そうだよ、お母さん!」


 ヘーラーの頭の中に お母さん・・・お母さん・・お母さんと、木霊が響いている事だろう…酔いしれている。

 そんな、ヘーラーは置いといて、2人は練習の成果を確かめる。

「ゆめや、先ずはこの虫食い状態から、完全に元に戻すんじゃ、出来るな!」

「はい!お父さん!」

 ゆめの前に「万能本」が浮かび上がると、ページが、捲れていく…

 目当てのページが開くと、ゆめがペンを翳した!
 何もない、白紙のページに光り輝く文字が浮び上がる。

 眼の前のサボテンが、光をおび、そして元通りに復活した。

 ホッとしたゆめに向かって

「まだじゃ!緊張を緩めるな!」

 ゆめの顔が引きしまる。

「次は、消すんじゃ!」

 ゆめは浮かび上がる文字に消しゴムを当てる…。
 前回は、消しゴムで、ゴシゴシしていたが、今回は、当てるだけ…。

 消しゴムに全ての文字が吸収された
・・・「サボテン」は消えていた。

 やったー!と抱き合う2人、
 ようやく帰って来たヘーラーは、何が起こったのか判らなかったが、一緒に喜んだ。

「本当に凄いわね、ゆめちやん!」
 ヘーラーが、クロワッサンを食べながら話してる。

 このパンは、ママがパン祭りと称した朝食を私がイメージして、ゼウスがアウトプットしたもの…を食べている。

「全くじゃ、凄いの、ゆめ。」

「でもね、思うの…。」

「何をじゃ?」

「可愛くない…。やってる事がシュール。」

「そ、そうか?あれでも充分じゃと思うがの?」

「魔法少女みたいに、可愛くやりたい…。」

「そーよ、そーよ!可愛くしてあげて!」

「私のゆめは、この世界で一番、可愛いんだから!」

「お前…パンを食わんと言っとれば、説得力があったのにの…。」

「まぁ、それは今後の課題じゃな。」

「それよりも…。」

「ゆめ、わかっとるの?」

「はい。お父さん。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ハ〜イ!貴方のスーパー女神!ヘーラーです♡

今回は、やっとゆめちゃんに「お母さん」って、
呼ばれたの!

嬉しさと感動で頭がグワングワンになったワ!

それに、ゆめちゃんのママが作った「クロワッサン?」何あれ?美味しい!スッゴイ、フワフワ!

ゆめちゃんは、いつもあんなに美味しいごはん食べてるって、羨ましい!

今度、また食べさせてもらおーっと!

それとね、私も「お洋服?」の貢物、
貰っちゃった♡

コーディネート?は、こちら♡

ピンク色のピチっとしたTシャツ。真ん中に「爆乳」って書いてあるけど、どういう意味かしら?胸がちょっと苦しいけど、可愛いからいいわ!
これも体にピチッと体のラインが出るスリムジーンズ。
白のバスケットシューズ。

あと、何だかゼウスからも、もらったワ

チューリップ帽子。
ハートの形の特大サングラス。・・・なんだか、悪意を感じる・・・。

じゃあ、またね♡


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?