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小説 本好きゆめの冒険譚 第十四頁

ゆめは深い眠りについていた…

「………け」

 ん?

「………ズケ」

 何か聞こえる。

「ヒザマズケ!」


 ヒザマズケ?そんな言葉は知らない。

 暗闇だつたゆめの視界は、突如明るくなる。

 そこには「とても豪華で大きな」城があった。
 門の中を覗くと、お祭り?多くの人たちが行きかっている。

 声が聞こえるのは、この先の城からのはず…
 私は人込みをかき分け、声が聞こえる城の方に向かっていった。人が多すぎて前に行けない。

 すると、瞬間移動よりも早い速度、場面転換のように、ゆめの目の前の映像が変わった。

 そこには、いかにも高そうな赤い絨毯と綺麗な装飾を施されたテーブルがあり、3人が座っている。

「跪けと言うのが、聞こえんのか!」

 筋肉の鎧でも纏っているのだろうか?大柄で金髪、口髭を蓄えた男が言っている。

「ヤハリ オオモノデハ ナカロウカ?」

 何だか単調な声が…

「私達、舐められてるわ!」

 女性の声も聞こえる。


 眼の前にいるのは、先程の大柄な男はさておき、「ロボット」がいて、フリフリのドレスと先っちょにハートの形の宝石を付けた杖を持っている「魔法少女」がいた。

「あの、ひざまずけ?って言葉、知らないんです。」

 3人は目を合わせ、頷いた。

 大柄な男は、

「じゃあ、仕方ないか…そのままで良いぞ!」

「あの、あなた達は、誰ですか?」

 3人は胸を張って、言い放った!

 
…創造神ゼウス


 ゼウス?知らない人。と、ゆめは思い

「スミマセン、知らない人と話しちゃダメって言われてるから…。」

 すると、さっきまで胸を張っていた3人は慌てて私の前に「跪き」ながら、

「スマン!」「ゴメンネ〜!」「ゴメン」と謝りだした。

 ゼウス「達」は言った。

「儂らの事は知らんのか?」
「はい、知りません…ごめんなさい。」
「全く、最近の者は信仰心が足らん!」と、困った様子。
「儂らはの、神様なんじゃよ。」

 どうやらこの男「達」は、ゼウスと言う神様らしいけど、知らないし…。

「その神様が私に何の用事があるの?」
「取り敢えず、儂らを元に戻して欲しいんじゃ。」
 何を言っているのか、解らない。

 ゼウス「達」は、続けて言った。
「桃太郎の御伽噺は知っとるじゃろ?」
「はい、小さな時からママが読み聞かせてくれました。」
「ちょっと言ってみ?」
「むか〜しむかし、豪華で大きなお城があり…」
「待て〜い!」
「何で、豪華で大きなお城なの?そこは「あるところに」でしょ!?」

 ゆめは、そうでしたと笑いながら続きを話す。
 色々と突っ込まれ、訂正されながら、噺を進めて行くと、

「そこじゃよ、そこ。なんで桃太郎が3人なんじゃ?」
「1人じゃ鬼に勝てないと思って…」
「桃太郎は良しとしよう。でも何で桃次郎は合体ロボで、桃子は女の子?儂、男の子よ?なんで魔法少女なの?」
「だって、合体ロボは強いし、魔法少女は可愛いから。」
「あら、可愛いっだって♡」魔法少女のゼウスが喜ぶ。

 場の空気を取り戻さんと、大柄の「ゼウス」が咳払いをし、

「そう言えば主の名前を聞いておらんかったな?」
「私の名前は…」
 名前を言おうとすると、バッと手のひらを私の言葉を制するように向けて
「いや!言わんでも良い!儂が当てる!そうすれば、儂等が神様じゃと信じてくれるじゃろ?」
「それは、わからないです。」
「夢想と書いて「ゆめ」じゃな!ほれ、当たったじゃろ?儂らを神様と信じたじゃろ?」
 ・・・なんだか自慢げだ。

 何も言わないゆめに痺れを切らしたゼウス「達」は「ねぇ、何で信じてくれないの〜酷いじゃない!儂等、神様よ〜ねぇ、なんでなんで〜?」と駄々を捏ね始めた。

「だって、知らない人だし、パパとママの言う事を聞かないといけないし…。」

 そういう答えにポンッと納得の言った感じで手を叩き、「じゃあ、明日、パパとママに聞いてみるんじゃぞ。ゼウスって、な〜に?って、絶対に聞くんじゃぞ?」

 わかりましたと頷いていると
「では、また明日の〜」
 そう声だけ聞こえて視界が真っ暗になった。



「ゆめ、起きなさい。朝よ。」
 いつものベッドの上かどうか、ゴロゴロしながら確かめる。

・・・何だったんだろ、あの夢。

 リビングで、私がテーブルに座るのを待っている、パパとママに、聞いてみた。

「パパぁ〜、ママぁ〜。ゼウスって人、知り合いなの?」


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