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錬金術師の召喚魔法 第Ⅳ部 サルビア編 第26章 ガーベラの夢編 2606.他国からの依頼

 イーキ王国から戻った私は、直ぐに、下水道工事に取り掛かることにした。そのため、カタリナ王女に会いに行った。

 「カタリナ、今、イーキ王国から戻ったよ」

 「大変だったね。ムーンは、大丈夫なの?」

 「うん。僕は、大丈夫だよ」

 「それならいいの」

 カタリナは、黒死病と聞いて、私の事を心配していたようだ。この世界では、黒死病は、不治の病として、広く知られているから、当然のことだろう。

 「この国にも、いつ、あのような伝染病が流行るか分からないから、少し、対策をしておこうと思っている」

 「ムーン、何をするの?」

 「下水道工事を行って、国全体の衛生状態を改善しておきたいんだ」

 「ムーンの思ったようにしてね」

 「ありがとう。カタリナ」

 私は、カタリナを抱きしめて、額にキスをした。すると、カタリナが私に抱き付いてきた。最近は、カタリナが私の事を気に入っているようで、嬉しい。私も、同じように、抱きしめた。

 「カタリナ、好きだよ」

 カタリナは、何も言わず、頷いた。いつまでも、子供と思っていたけど、もう、15才になっている。この世界では、立派な大人だ。11才で、王女になってから、色んな事があったが、それによって、我儘だったカタリナも、立派な王女に育ったようだ。

 「それじゃ、カタリナ、出かけるよ」

 「はい、早く帰って来てね」

 「分かったよ」

 私は、テラ・ワールドの本店に行き、従業員を集めて、下水道工事の準備を始めた。一度、ヤガータ国で行っているので、それほど、悩むこともなく、同じように作業をスタートさせることが出来た。

 ヘノイ王国の下水道工事が、軌道に乗ってきたころに、イーキ王国にあるセダン魔法学院のコ―メン学院長から、連絡がシルバに入った。

 「先日は、医療チームの派遣、ありがとうございました。無事、切り抜けることができました」

 「それは、良かったですね」

 「それで、また、あのような事態にならないように、何か、対策を考えろと、国王から指示が出たのです。何か、いい案は、ありませんでしょうか?」

 「今回は、ペストによる伝染病だと、聞いています。それに対する対策と考えていいのですか?」

 「はい、そうです。今回の伝染病に対する対策を実行するということです」

 「わかりました。少し、時間を頂いてもいいですか?」

 「構いません。できれば、2~3日中にお願いできますか?」

 「いえ、そんなに掛かりません。今日1日だけ、待って下さい」

 「はい、よろしくお願いします」

 シルバは、コ―メン学院長の話をすぐに、ムーンに思念伝達で、伝えた。

 「シルバ、どうしたの?」

 「実は、セダン魔法学院のコ―メン学院長から、今回の伝染病に対する対策を考えて欲しいって、依頼があったの」

 「それで?」

 「だから、ムーンに何か、考えて欲しいのよ」

 「分かった。今回の伝染病は、ねずみのノミが病気を運んでいるんだ。それで、ねずみが住みにくくするのがいいよ」

 「だから、具体的にどうするの?」

 「シルバ、怒ってる?」

 「少し、イライラしてるだけよ」

 「分かったよ。僕が直接、コ―メン学院長に会いに行くよ。それでいいだろ」

 「ありがとう。よろしくね」

 シルバは、思念伝達を切った。また、シルバに、仕事を丸投げされてしまった。まあ、新しい官吏の仕事を考えているときだから、ちょうど、都合がよかったけどね。

 私は、ヘノイ王国で、行ったように、新しい官吏を使って、イーキ王国の下水道工事を計画した。後の実行は、リーダーに任せておくことにした。ただし、土木工事用の神具などは、テラ・ワールドの商品として、購入してもらった。今後は、この下水道工事をヤガータ国の事業として、他国に売り込むことが出来そうだ。そして、その時に使う神具は、テラ・ワールドから、購入して貰うことにした。

 イーキ王国での黒死病対策や、その後の感染症対策としての下水道工事をヤガータ国が請け負ったことが、全国に知れ渡った。その結果、多くの国から、下水道工事の依頼が入って来た。

 私は、ルナとなって、テントーウに会い、これからの仕事内容を確認した。ガーベラの後継者としては、まだまだだが、今回の仕事は、すべて、任せておいて大丈夫だろう。新規採用の官吏の数も、500人を超したので、そろそろ、新規募集を打ち切ることにした。

 私は、アンジと思念伝達で連絡を取った。

 「アンジ、ムーンだけど、今いいかな?」

 「はい、何でしょうか?」

 「ヤガータ国の官吏を募集していたが、打ち切ろうと思っている」

 「分りました。現在、登録している希望者は、どうしますか?」

 「それらの者は全員採用してくれ、そして、直ぐに移動させてくれ」

 「はい」

 仕事がひと段落ついたので、私は、転移魔法で、ミューの部屋に移動した。

 「久しぶり、元気だった?」

 「あら、ムーン、どうしたの?」

 「ミューの顔が見たくなったんだ」

 「へぇ、そんなこともあるのね」

 私は、ミューの方に向かっていった。そして、腰に手を回して、自分の方に、抱きよせた。

 「慌てないで」

 「いいだろ」

 私は、久しぶりにミューとベッドで、一晩を過ごすことにした。

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