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錬金術師の召喚魔法 第Ⅳ部 サルビア編第 22章 ショーバェ編 2208.リンドウのES細胞

 私は、リンドウの家にもう一度行った。そして、引っ越しの準備を始めた。まず、リンドウの研究室をしっかりと見て、そっくりにショーバェの研究所に部屋を作った。

 全くの瓜二つだ。次に、備え付けている装置をすべて、同じものを揃えた。最後に、リンドウに少しだけ、眠って貰った。そうでもしないと、研究を止めないからだ。

 私は、リンドウを抱き上げて、ショーバェの研究所に運んだ。そして、その他の書籍なども、すべて、運んできた。

 すべて、運び終わってから、リンドウを起こした。

 「リンドウ、大丈夫ですか?」

 「あら、私、寝てしまったの? こんなこと、初めてだわ。どうしたのかしら。」

 「リンドウ、私は、ムーンです。覚えていますか?」

 「あぁ、研究の資金を出してくれるって、そうでしたよね。」

 「はい、必要な物は、すべて、揃えます。条件は、2つだけです。研究内容を私に、一番先に報告してもらうことと、研究成果を利用できる権利です。」

 「私は、研究さえできれば、いいので。構いません。」

 「もし、必要なら、助手を揃えますが、どうしますか?」

 「要らないわ。邪魔なだけよ。内容を理解できない者は、邪魔よ。」

 「分かりました。先生の研究は、ESチェユラES細胞を利用したイプセクローン技術と考えてよろしいですか?」

 「そうですが、ムーン、理解していますか? その内容を。」

 「大体は、分かります。ESチェユラES細胞の作り方は、分かりません。所謂、万能チェユラですね。それを元に、遺伝子的に同じものを作ったということですね。どの段階まで、行きましたか? ねずみですか?」

 「ESチェユラES細胞からねずみの精子を作り、健康なマウスの赤ちゃんが誕生したわ。まだ、それを確実な物にしたいのだけど、まだ、不安定なの。」

 「実験を記録する者がいるだけで、研究ははかどると思いますよ。私より、優秀な者が居るのですが、会ってみますか?」

 「貴方より、理解している者が居るの? 本当? 研究仲間には、研究内容を信じて貰えていないの。」

 「少し、待ってください。呼んできます。」

 私は、急いで、ショーバェを呼んできて、リンドウに紹介した。

 「こちらが、ショーバェで、リンドウの報告書もすべて、読んで、整理しています。」

 「本当に、私の研究内容をすべて、読んでくれているの?」

 「はい、読んでいます。完全に理解できているとは言い難いですが、ESチェユラES細胞は、作ることが出来る所まで、研究の検証を終えています。」

 「貴方、ESチェユラES細胞を作れるの。それなら、私の助手として、合格よ。こんなことって、初めてよ。」

 「それじゃ、研究の打ち合わせをしましょう。」

 リンドウは、私をそっちのけで、ショーバェと打ち合わせを始めてて欲しい。そうすれば、私の希望が叶う。まあ、この際、倫理上の問題は、度外視でね。

 私は、遠隔通話器テレ・ボイスを操作して、セーロンに連絡を入れた。

 「テラ・ワールドのムーンです。先日は、お世話になりました。」

 「いえ、こちらこそ、これからも、よろしくお願いいたします。」

 「ところで、ベルーナ中将とは、連絡が取れましたでしょうか?」

 「はい、連絡が取れて、アポを取りました。しかし、こちらの港に帰って来るのは、まだ、先のようで、それからということになりました。」

 「そうですか。船で、旅行ですか?」

 「いえ、軍船です。あっ、これは、内緒にしてくださいね。軍事上の秘密です。」

 「もちろん、誰にも言いませんよ。」

 「それでは、引き続き、連絡をお待ちしております。失礼します。」

 私は、遠隔通話器テレ・ボイスを切った。とんだところで、いい情報を得た。

 軍船で、移動中ですか。それは、どこへ、移動中ですか?

 私は、魔大陸の港にある基地に思念伝達で、連絡を取った。

 「ソーロン帝国からの軍船が、そちらに向かった居るかもしれません。用心しておいてください。」

 「わかりました。もし、見つけたら、どうしましょう?」

 「すぐに、シロッコスに連絡を入れてください。お願いします。」

 「それから、偵察用気球があると思います。それを使って、海上を偵察してください。おそらく、北東の方角から、近づいてくると思います。そして、こちらの港は、まだ、発見されていないと思います。ですから、明かりは消しておいてくださいね。」

 「わかりました。早速、偵察用気球を出します。そして、見つからないように気を付けさせます。」

 「戦闘は、避けたいので、決して、こちらから攻撃をしないようにしてください。私は、直ぐに、そちらに向かいます。」

 私は、急いで、転移魔法で、港にある基地に移動した。そして、1台の偵察用気球を借りて、南に急いで、飛んで行った。

 もともと備え付けている風魔法を使わずに、自分で、風魔法を起動して、通常の5倍の風力で飛ばすことにした。そのために、予め闇魔法で、偵察用気球全体を結界で覆い、強度を増しておいた。

 暫くして、スキル探索で、海上を探索してみた。すると、10kmほど南に軍船が3隻見つけた。

 おそらく、この1隻にベルーナ中将が乗っているのだろう。更に、スピードを上げて、軍船に近づいた。そして、もう一度、スキル探索で、レベルが高い軍人を探した。すると、1隻にレベル60の軍人が居るのが分かった。おそらく、これが、ベルーナ中将だろう。

 私は、静かに、その軍船の上空に偵察用気球を移動させた。そして、軍船の甲板をしっかりと確認した。

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