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錬金術師の召喚魔法 第Ⅳ部 サルビア編 第29章 魔王復活 2907.魔王の反撃

 残った魔王の核は、2つになった。5つの内の2つなので、完全体からは、程遠い身体になっているはずだ。

 私は、闇魔法を使って、2種類のバリアで、魔王を覆った。1つは、転移魔法を防ぐためのもので、少し魔王から離れた所に展開した。そして、もう一つは、魔王の魔力を奪うための物だ。

 転移魔法で、魔王の近くに移動して、直ぐに、私のバリアは張り巡らせることが出来た。それを確認して、テラjrが、魔王に攻撃を開始した。

 勿論、私は、スキル鑑定で、魔王の核の位置をテラjrに思念伝達で連絡し続けていた。

 前回と同様に、テラjrは、魔王を切りつけ、核を分離し始めた。

 私は、テラjrの近くで、戦いの行方を見守っていた。私達の他の仲間は遠巻きにテラjrと魔王との戦いを見ていた。

 暫くして、テラjrが魔王の核を1つ分離した。私は、すかさず、闇魔法のバリアで、それを包み込んだ。今回も、2重のバリアで覆った。あと一つ、そう思った時だった。

 魔王の最後の身体が、激しく揺れ出した。それと共に、薄暗い靄の様な物が魔王を包み始めた。

 「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

 急に、テラjrが叫び声を挙げた。近くにいた私にも、何が起こったのか、俄かには分からなかった。私の目の前でまたもテラjrの叫び声が聞こえた。テラjrは頭を抱えて苦しんでいるようだ。

 「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

 すると、後ろの方から、大きな声が聞こえて来た。

 「白魔法で、防いで!」

 何をしたらいいのか、暫く、キョトンとしていた私に、また、大きな声が響いた。

 「ムーン、速く!」

 意味も分からずに、白魔法で、テラjrの身体をバリアで包み込んだ。すると、私が作ったバリアが、魔王の攻撃を少しは防いだようだ。

 「ムーン、助かった!」

 テラjrの唸りが止み、少しは、平静を取り戻したようだ。私は、後ろを振り返り、誰が声を掛けたのかを、確認した。それは、サーキだった。白魔導士のサーキだから、魔王の負の波動を直ぐに感じ取ったのだろう。魔王の攻撃は、精神に直接影響を与えたようだ。しかし、白魔法のバリアで少しは、防ぐことが出来た。

 私は念の為、もう一度、白魔法でバリアを創り、テラjrの身体を包み込んだ。

 ついに、テラjrは、最後の核を分離することに成功した。私は、直ぐに闇魔法のバリアで、最後の核と残った魔王の身体を包み込んだ。そして、テラjrに、声を掛けた。

 「ついにやったね」

 「何とか、倒せたよ。魔王の最後の攻撃は、かなり応えたよ」

 「サーキが、異変に気が付いたので、白魔法で、防御することが出来た」

 「そうか。サーキのお手柄だね」

 「テラjr、これから、どうする?」

 「そうだな。この場所に魔王の核を置いておくと、何が起こるか分からないから、5つの核をすべて、持ち帰ってから処分については、考えるつもりだ」

 「闇魔法のバリアで包んでいるので、マナを吸収することも出来ないから、このまま、永遠に復活できないと思う」

 「そうだね。このままでも、いいかもしれないね。これまでの封印とは、異なっているからね」

 「魔王を完全に殺した時に、この世界がどのように変化するのか、それが心配だ」

 「確かに、魔王に関しては、よく分からない事が多いから、もっと調べてからどう処理するかを考えた方がいいかもしれないね」
 
 「まあ、取り敢えず、元の世界に戻ろうか」

 「分かった。準備してくれ」

 私は、転移魔法で、元の世界に戻る準備をした。全員が、私の周りに集まったことを確認してから、転移魔法で、魔大陸への入り口の遺跡まで、移動した。

 「「やっと、戻れた!」」

 全員、安堵の表情だ。これまで、長い間、魔王の恐怖に晒されて来たので、やっと、緊張を解くことが出来たようだ。

 「それでは、ここで一旦解散する。これまで、ご苦労様でした」

 テラjrは、シロッコスに目で合図をした。おそらく、思念伝達で指示を与えたのだろう。シロッコスは、サーキやビーランを近くに呼び、テラjrからの指示を伝えた。そして、部下の戦士(28名)と土の魔人族の2人を伴って、移動を始めていた。その中には、氷の魔人族の2人、嵐の魔人族の2人とシロッコスが連れて来た白魔導士(戦士)
もいた。

 そして、テラjrは、レオナルド(剣士)、アロン(弓術士)、ライオス(斧術士)、炎の魔人族の2人にそれぞれ別れの挨拶をしていった。

 テラjrの挨拶で、今回のパーティーは、解散した。私とテラjrは、魔王の核の保管場所について、相談をした。

 それについては、誰にも、言わないことにした。私とテラjrだけの秘密にした。

 「ムーン、ご苦労様。一旦、これで、お別れだね」

 「テラjr、このまま、分離した状態でいいのかな?」

 「勿論、構わないさ」

 「ありがとう。また、何か、あれば、遠慮無しでね」

 「分かった」

 テラjrは、最後の言葉を発すると、転移魔法で、移動した。そして、私も、相棒のスピアとスピアの仲間2人(ラーンスとハプーン)と共に、転移魔法で、移動した。

 暫くは、お互いの生活を優先して、この世界を楽しむつもりだ。でも、魔王についての調査は、誰にも知られずに続けて行くつもりだ。それにより、この世界の事が、より詳しく分かる。それによって、より良い世界を構築する手掛かりになると思う。

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