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錬金術師の召喚魔法 第Ⅳ部 サルビア編 第29章 魔王復活 2906.新たな戦い

 私達は、魔王の一部を転移魔法で逃がしてしまった。ほんの少しだが、気が緩んでいたのだろう。魔王軍の四天王や魔王軍の右腕などをうまくあしらうことが出来て、驕りの様なものが、生じていたのだろう。

 だが、今更後悔しても、仕方がない。今できることを行うだけだ。

 魔王の核は、一定の時間が経てば、復元されてしまう。その為、今、目の前の魔王の一部の持っている核を破壊しても、無駄だ。取り逃がした残りの魔王の核が分裂して、回復されてしまう。それは、目の前の魔王の残りの核を逃がすことに等しい。

 そこで、私達は、核を壊さずに封印することにした。

 「テラjr、攻撃を開始して!」

 「分かった」

 テラjrは、私の助言通りに、攻撃を開始した。私は、闇魔法でのバリアをもう一度張り直した。

 今回は、魔王の魔力を減少するためのバリアだ。闇魔法のバリアの特徴である魔力の吸収を目的としたものだ。そのバリアを何重にも張り巡らせた。これにより、魔王の持っている魔力を吸収して減らすことができるはずだ。

 「テラjr、大丈夫か?」

 「今の所、問題ない」

 私は安心して、次の作業に掛かることにした。スキル鑑定で、魔王の状態を把握することにした。特に、核の位置を正確に知りたかった。

 「スキル鑑定」

 魔王の身体の細部に渡り、その状況を把握することが出来た。魔力量の大きさも当然、知ることが出来た。だが、核の正確な位置は、よく分からなかった。

 「テラjr、魔力量は、確実に減っているが、核の正確な位置は分からない。注意して攻撃してくれ」

 「分かった」

 確か、アスタロトは、これまでに、魔王が核を破壊されたことはないと言っていた。つまり、通常の攻撃では、核を破壊することが出来なかったのだろう。あるいは、核の存在自体が、私達のイメージしているものと、異なっているのかもしれない。つまり、固定した物ではないかもしれない。

 私は、再度、スキル鑑定で、魔王の身体を調べることにした。今度は、魔力の分布に重点を置いて、探査した。

 すると、魔力量が、他の部位とは異なり、異常に高い場所が3カ所あることが分かった。おそらく、これが、核なのだろう。

 魔王は、5つある核の内2個を転移魔法で、移動させた。つまり、核は、分離することができるということだ。

 私は、思念伝達でテラjrに連絡を取って、魔王の身体から、核を分離するように提案した。テラjrは了解して、私のスキル鑑定で得られた位置に攻撃を開始した。

 暫くして、1つの核が分離された。私は、すかさず、闇魔法のバリアで、その魔王の身体の一部を覆い元の身体と合体できないようにした。

 更に、もう一つの核が分離された。私は、先ほどと同様に、闇魔法のバリアで、その魔王の身体の一部を覆った。

 最後に残った核も、身体から分離された。これも、闇魔法のバリアで、覆った。

 これで、3つの核が、元の身体から分離することが出来た。残った身体から、魔力を吸い取り、遂には、魔力量0にすることが出来た。

 分離した核はそれぞれ別々に保管して、合体しないように注意した。闇魔法のバリアで包んでいるので、魔力量も、どんどん下がっている。少し時間は掛かったが、遂に魔力量を0にすることが出来た。これで、3つの核の封印が完成した。

 私は、テラjrに今後について、相談することにした。

 「テラjr、ここに魔王の核を3つ確保している。だから、もう、魔王の完全復活は阻止できたと考えていいだろう」

 「そうだね。ムーンの言う通りだと思う」

 「それなら、残りの魔王の核を確保しなくても、いいのでは?」

 「核が2つしかないからと言って、危険がないわけではない。それに、魔王軍の右腕の話が、すべて、正しいとも限らない。だから、今やれる最善をすべきだはないか」

 「そうだね。それなら、残りの核も確保するのだね」

 「そうしたいが、いいかな?」

 「勿論、テラjrの考え通りでいいよ」

 「それなら、魔王の転移魔法の痕跡を調べてくれるかな」

 「分かった」

 私は、直ぐに、魔王が転移魔法を実施した場所を調べに行った。転移魔法の痕跡は確かにあった。それを解析して、転移先を知ることが出来た。

 「テラjr、転移場所が分かった」

 「よし。追跡の準備を初めよう」

 私達は、テラjrの声掛けに従って、魔王の追跡の準備を始めた。今回は、全員で、魔王の近くまで、転移魔法で移動する予定だ。準備を進めながら、テラjrが、転移後の行動について、説明を始めた。

 「私とムーンで、魔王の封印を行う予定だ。その他の者は、私達の支援に専念してくれ」

 「「了解」」

 私は、闇魔法で、魔王を包み込み、マナを出来るだけ吸収していくつもりだ。それと、転移魔法を防ぐためのバリアも直ぐに張っておくつもりだ。

 全員の準備が完了したので、一カ所に集まって貰い転移魔法を発動した。転移後は、魔王を目視できる所まで、接近していた。

 私は、当初の予定通り、闇魔法を使って、転移魔法の防御と魔王の魔力の吸収を行うためのバリアを張り巡らせた。そして、更にスキル鑑定で、魔王の核の位置を把握して、その情報を思念伝達でテラjrに伝えた。

 テラjrは、私の情報を聞き、軽く頷くと、魔王に攻撃を開始した。

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