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失われた記憶を探す闇の魔法使い(The dark wizard searching for lost memories) 第1章 冒険者ルナ 第10話 ラズの過去

 偶然、リリアに会った。というか、リリアが私を待ち伏せていたという方が正確だ。

 「ラズ、ちょっと、来て!」

 振り返ると、以前一緒に初級ダンジョンに潜ったエルフのリリアが立っていた。

 「何?」

 「少し、話があるの。いいかしら」

 「少しなら、いいよ」

 私は、リリアの後について歩いた。暫く歩くと、街はずれまで、やって来た。周りには、誰もいない。

 「ラズは、本当に、私を覚えていないの?」

 「覚えていないよ」

 「そうか。姿も変わってしまっていたから、私の見間違いかとも思ったけど。やっぱり、貴方は、以前一緒に旅をした闇の魔法使いだわ」

 「リリアは、僕を知っているのか?」

 「以前の君を知っているわ。でも、今みたいな幼児の姿では、なくてよ。立派な大人の姿の時よ。どうして、今みたいな姿になったの。そして、何故、記憶をなくしたの?」

 本当に、リリアは、以前の私を知っているのか? 闇の魔法使いと言うのは、事実だが、今の私を見ても、それが分かったかもしれない。

 「一緒に旅をしたって、その証拠はあるのか?」

 「そうねぇ、何がいいかしら」

 リリアは、何か、考えているようだが、特に思いつかないようだ。

 「そうだ。ラズは、私が魔力量を誤魔化していることがわかるわね」

 「分かるよ。それが、どうした?」

 「相手の魔力量より、多くなければ、誤魔化し切れないのよ。それは、分る?」

 「なんとなく、分るよ。それで?」

 「だから、ラズ、貴方は、私より、魔力総量が多いということよ。この私よりもよ」

 「そうだと思うよ。で、僕の魔力総量は、予測がつくのか?」

 「無理よ。だから、言ったでしょ。少ない方は、誤魔化されても分からないのよ」

 「それは、納得したけど、それと、リリアが、私と旅をした事とは、無関係だよ」

 「ラズ、魔力総量は、経験年数に関係するのよ。つまり、若いと魔力総量は、少ないということよ。ここだけの話だけど、私は、これでも180才よ。その私より、魔力総量が多いって言うことは、それに匹敵するほどの経験年齢を重ねているっていうことよ。それが、5才ていどの幼児に出来ると思う?」

 「誰も、5才だとは言っていないよ。おそらく、もっと、年上だろうね。でも、僕は、エルフじゃないから、100才も、いっていないと思うよ」

 「それは、分かったいるわ。でも、隠されているはずの魔力総量を予測できるということは、どういうことかわかる?」

 「当てずっぽうかな?」

 「そうじゃないわ。実際にこの目で見たから、言えるのよ。あなたの魔法を見たことがあるからよ」

 「うーん。よく分からない」

 「まあ、いいわ。直ぐには、信用して貰えないって、分っているから」

 「それで、本当の用事は、何? もう、結構な時間が建っているけど。本題に入っていないようだね」

 「分かったわ。私の事を信用していなくてもいいわ。噂だけど、魔王が、死ぬ前に1度だけ使うことが出来る魔法があるの。もしかしたら、ラズは、魔王と戦ったの?」

 「だから、覚えていないって!」

 私は、少し、イラついて来た。私にとって、有益な情報を持っているみたいだけど、回りくどいのは、嫌いだ。

 「もう、行くよ」

 私は、話したそうにしているリリアをしり目に歩き始めた。単なる噂だ。そんなもの、聞いても仕方がない。

 リリアは、何故か、寂しそうに、私の後ろ姿を眺めていた。本当に、一緒に旅をしていたのか? そして、それは、どんな旅だったのだろう。全く、思い出すことができない。それに、魔王だって! 本当に、そんな物がいるのか? しかも、私が魔王と戦ったなんて、リリアは、本気で思っているのか?

 「ラズ、どうしたの?」
 
 「えっ、ルナか?」

 いつの間にか、冒険者ギルドまで、戻ってきていたようだ。ルナに声を掛けられるまで、気が付かなかった。こんなことは、珍しい。やはり、リリアの言葉が気になっていたようだ。

 「これから、ダンジョンに潜ろうと思っていたのだけど、大丈夫?」

 「もちろん。大丈夫だよ。アリアは、いるの?」

 「冒険者ギルドの中で、待機して貰っているわ」

 「それじゃ、直ぐに行こう!」

 「分かったわ。直ぐに、呼んでくるね」

 ルナは、冒険者ギルドの中に消えて行った。そして、直ぐに、アリアと一緒にに出て来た。

 「お待たせ。それじゃ、行くわよ」

 ルナは、いつも以上に張り切っている。前回は、第10階層で、戻って来たので、今日は、更に深い階層まで潜って行きたい。

 毒に対する耐性も、少し、付いているので、ポイズンスライムの群れも難なくクリアー出来た。

 「さあ、どんどん行くわよ」

 「「はい」」

 私達のパーティーは、ルナを先頭に、どんどん、深い階層に潜って行った。本当なら、アリアが先頭に立つべきだけど、アリアは、まだ、自信がないみたいだ。まあ、そのうちに慣れるだろう。それに、物理攻撃に対する耐性もつけて貰いたいなぁ。

 いつの間にか、第15階層にまで、達していた。そして、周りの魔物も、ゴブリンから、スケルトンやオークに代わっている。それらが、群れを成して、襲ってきた。ルナは、相変わらず、好戦的だが、アリアが、しり込みをし始めている。怖がっているようだ。私は、2人の様子を見ながら、のんびり、構えていた。

 この後、起こる事など、全く予想もしていなかった。少し、気が緩み、周りの警戒を怠っていた。私の失敗だ。

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