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錬金術師の召喚魔法 第Ⅳ部 サルビア編 第26章 ガーベラの夢編 2605.サルビアの派遣

 私は、魔法学院の教師にいくつかの作業をお願いした。それは、死体の火葬と症状による患者のグループ分けだ。症状により、病気の重症度が異なる。特に、激しい咳があると、他の者への感染が激しい。

 暫くすると、すべての教師と生徒を食堂に集待って来た。全員が集まったようだ。私は、皆に今回の病気について、説明を始めた。

 「忙しい時に、お集まりいただき、ありがとうございます。今回の病気は、ペスト菌によるものと考えられます。この菌は、非常に小さいので、肉眼で見ることが出来ません。通常は、ねずみについているノミを媒介して、感染していきます。その後、人から、人へ感染していきます。それは、咳によるものです」

 私は、一旦、説明を切って、皆の理解を確認した。ここまでは、特に問題は、なさそうだ。

 「死体を火葬にするのは、菌が、ばら撒かれないようにするためです。それから、症状により、部屋をまとめたのは、治療がし易いからです」

 私は、送られてきた防護服を見せた。

 「この服は、防護服と言って、ペスト菌から、皆さんを守る物です。患者と接するときは、必ず、この服を着てください。そして、患者のいる部屋から出たときに、身体全体を火魔法で、燃やして下さい。必ず、1分間は、燃やしてください。防護服は、火魔法によって損傷することはありません」

 私は、実際に防護服を着て、火魔法で、身体全体を燃やして、実演した。

 「このように、行ってから、防護服を脱いでください」

 テーブルの上に、アイテムボックスから、防護服を取り出して、並べていった。リンダに依頼していた治療が出来る者を10人(神具持参)が、食堂に入って来た。

 「今来た人は、患者を治療するための薬を投与できる医療技術者です。治療にあたる教師は、技術を学んでください。前に、出て来てくれますか?」

 私の声掛けと共に、教師が前に出て来た。

 「ムーンさん、生徒がやってもいいですか?」

 「はい、教師が、認めた生徒は参加させてください」

 教師の指示で、生徒からも、参加者が出て来た。

 治療にあたる教師や生徒は、ストレプトマイシンとストレプトマイシン用の神具で、治療する方法を確認していった。

 「それでは、最後に、担当を決めてください。激しい咳(肺ペスト)、身体に紫色の斑点(敗血症型ペスト)、身体に痛みがあるだけ(腺ペスト)の3つのグループに分かれて、担当するようにしてください」

 一同に集めた教師や生徒は、それぞれ、別れて、治療に向かった。私は、今回のような事が、他の国でも起こりうると考えて、知識を持つ者を増やすことにした。

 私は、サルビアに思念伝達で、連絡を取った。

 「サルビア、ムーンだけど、久しぶり」

 「はい、ご無沙汰しています」

 「サルビアにお願いがあるのだけど、いいかな?」

 「何かしら?」

 「今、僕は、イーキ王国のセダン魔法学院にいるのだけど、伝染病が流行っていて、治療に当たっている」

 「どんな病気なの?」

 「黒死病だよ。私は、ペストと呼んでいる」

 「それじゃ、ムーンさんは、黒死病を治せるの?」

 「多分、治せると思う。それで、治療できる者を増やしたい。サルビアにも、知っていて欲しい」

 「分かったわ。私も手伝うわ」

 「ありがとう。迎えに行くよ」

 私は、魔法学院を出て、人目を避けて、転移魔法用の魔法陣を描いた。そして、闇魔法で、結界をつくり、隠した。それから、転移魔法で、サルビアの家に移動した。サルビアは、玄関に出て、私を待って居た。

 「サルビア、迎えに来たよ」

 サルビアが、私の方に寄って来た。私は、サルビアの腰に手を回して、転移魔法で、魔法学院まで、移動した。

 魔法学院についてから、これまで、私がやってきたことを細かく説明した。そして、防護服を一つ与えて、来て貰った。

 「それじゃ、行こうか」

 「はい」

 私達は、病室になっている教室を一つずつ見て回り、治療方法について、確認していった。

 「サルビア、どう?」

 「よく分かったわ」

 「それじゃ、自分の国で、同じような事が起こっても、対処できるね?」

 「多分、大丈夫よ。でも、その時は、ムーンも手伝ってくれるよね」

 「もちろんだよ。サルビアの為なら、何でもするよ」

 「また、そんなことを言って、本気にしてしまうわよ」

 「本気だよ。何故、疑うの」

 「でも、まだ、ムーンさんの事、余り、よくしらないから」

 うっかり、テラのつもりで、話してしまったようだ。ムーンとしては、サルビアと、それほど、深い関係ではなかった。

 「これから、知って貰ったらいいよ」

 「分かったわ。これからも、よろしくね」

 「こちらこそ、よろしく」

 今回の事をきっかけに少しは、親しくなれそうだ。私達は、魔法学院の病人が落ち着くまで、2週間ほど、一緒に働いた。

 「そろそろ、魔法学院の人達だけで、回るようだね」

 「そうね。もう、大丈夫みたいね。でも、黒死病が治るなんて、凄い事ね」

 「そうだね。これからも、色んな病気を克服していけると思うよ」

 「そうなの。私も、何か、役に立ちたいわ」

 「今回の事でも、十分役に立っているよ」

 「そうかな? また、教えてくれる?」

 「いいよ。サルビアの為なら、何でもするよ」

 「また、そんなことを言って」

 私は、転移魔法で、サルビアを家まで送っていった。それから、元の国に戻って、ガーベラに報告した。

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