錬金術師の召喚魔法 第Ⅳ部 サルビア編 第25章 宰相ムーン編 2506.ソーロン帝国の陰謀
私達は、ソーロン帝国の王族からの攻撃を受けたが、何とか切り抜けることができた。そして、その襲撃に来た兵士達を捕まえて、逆襲の機会を窺っていた。
兵士達は、王族ゾーウの私兵だった。私兵は、命令された通りに私達を攻撃してきただけで、詳しい事情については、知らない様だった。マリーの拷問でも、何の情報も得られなかったので、これは、本当の事だろう。私は、直接、雇い主にアプローチを掛けることにした。
私は、マリーに思念伝達で、連絡を取った。
「マリー、王族のゾーウを秘密の屋敷に連れて来て!」
「了解」
マリーとの思念伝達を切って、私は、転移魔法で、秘密の屋敷に移動した。
マリーは、配下の部下を複数連れて、ソーロン帝国のテラ・ワールドの支店に転移用魔法陣で移動した。そして、隠密魔法の神具を使って、ゾーウの城に忍び込んだ。
ゾーウは、カタリナが反撃することを予想していたようで、城には、私兵が多数配置されており、防御を完璧に行っているかに見えた。
しかし、ムーンの隠密部隊は、見られることがない。そして、暗殺集団でもあった。マリー率いる隠密部隊は、最小限の敵を倒して、容易くゾーウの潜んでいる部屋まで、辿り着いた。
マリーは、仮面をかぶり、顔を隠した。それから、隠密魔法を解除して、ゾーウの横に立った。もちろん、剣をゾーウの首に直接当てている。
「ゾーウ、間違いないか?」
「そうだ。何用だ」
流石に王族だ。殺されるかもわからない状況に、慌てていない。
「一緒に、来て貰う」
マリーは、声を掛けると同時に、首を剣の柄で叩き、ゾーウを気絶させた。そして、ゾーウを縛り、黒い袋で身体ごと包みこんだ。この袋は、闇魔法で、コーティングされており、外界を遮断するようになっていた。それで、ゾーウは、目も耳も役に立たないようになった。
マリーの一行は、神具で転移魔法を使い、秘密の屋敷に移動した。
私は、マリーと共にゾーウを捕らえている部屋に移動した。そして、私は、隠密魔法で、姿を消した。陰から、ゾーウの様子を見るつもりだ。
マリーがゾーウを黒い袋から引き摺り出し、椅子に座らせた。ムーン直属の密偵も4人がゾーウの傍に居た。
「さて、ゾーウ、正直に話して貰うわよ」
「お前達は、誰に頼まれた?」
「勘違いしないでね。質問するのは、私だけよ。今度、余計な事を喋ったら、痛い目にあうわよ」
「ほう、俺の事を知らないようだな」
マリーは、何も言わずに、密偵に殴らせた。マリーは、密偵と思念伝達で、連絡を取り合っているようだ。
「いきなり、何をする?」
更に、密偵が殴った。ゾーウが何か、声を発する度に、密偵は、殴っていった。ゾーウの顔は、みるみるはれ上がって、見る影も無くなってしまった。
「お願いだ。止めてくれ」
更に、密偵がゾーウを殴った。気絶したかのように、ゾーウは、静かになった。一言も声を発しなくなった。
「ようやく理解した様ね。それにしても、物わかりの悪い人ね。死ぬ所よ」
マリーは、私に思念伝達で、連絡をして来た。
「ムーン様、準備が出来たようです」
「よし、では、カタリナを襲ったことと、どのような目的かを聞き出せ」
「了解」
マリーは、ゾーウに質問を始めた。
「これからは、『はい』なら、首を縦に振り、『いいえ』なら、横に振るように。決して、声を出すな」
ゾーウは、黙って、首を縦に振った。
「よしよし、それで、いい。カタリナ様を襲わせたのは、お前か?」
ゾーウは、すぐさま、首を縦に振った。
「お前ひとりの仕業か?」
今度は、ゾーウは、首を横に振った。
「よし、これからは、質問に答えるときだけ、声を出してよい。よいか?」
「はい」
「お前の仲間は、誰だ?」
「第1皇子のルイです」
「カタリナ様を襲うように頼まれたのか?」
「はい」
「襲撃が失敗したことは、ルイは知っているのか?」
「いいえ、まだ、報告していません。私も、失敗したと分からなかった」
「反撃に備えて、警備を固めたのではないか?」
「いいえ、普段から、あのような警護をしています」
「それは、何故だ?」
「私の敵は、自国内に多数いるからです」
「ソーロン帝国の仲間を言え」
ゾーウは、マリーの質問に素直に答えて行った。それにより、ソーロン帝国の王族・貴族の仲間もすべて把握することが出来た。それに、軍隊の中にも、仲間がいることも知ることができた。
更に、ルイ皇子の仲間もすべて聞き出すことが出来た。私兵を隠し持っていることや、その屋敷も把握することが出来た。
「ムーン様、この者をどうします?」
「元の屋敷に戻してやれ。それから、連絡用の思念伝達用の神具を持たせて、いつでも、報告や連絡が取れる様にしておけ。それから、ゾーウの屋敷に監視用の装置を設置して、常に見張らせておけ」
「了解」
これで、カタリナを襲った者達を知ることが出来た。これから、じっくりと反撃を開始させて貰う。
私は、私に逆らうとどうなるかを思い知らせてやるつもりだ。そのために、直属の部下である密偵を一堂に集めた。そして、指示を出した。
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