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錬金術師の召喚魔法 第Ⅳ部 サルビア編 第25章 宰相ムーン編 2507.女王カタリナの誕生

 私は、ゾーウから聞き出した情報に基づき、密偵を、私兵を隠し持っている屋敷に向かわせた。そして、壊滅させた。これで、ルイ皇子も、その仲間もすべて抵抗できないようにした。

 やはり、もっと、早くにルイ皇子を倒して置くべきだった。でも、泳がしておいたお陰で、ソーロン帝国の王族との関係を知ることが出来たのは、幸いだった。

 ルイ皇子の失脚を知って国王レーモンは、カタリナに王位を譲る決心をした。王宮に、カタリナを呼んだのだ。

 「カタリナ、私は、もう、引退するつもりだ。私の後を継いでくれないか?」

 「えっ、まだ、私は、11才ですよ。いいのですか?」

 「何を言っている。もう、11才だよ。それに、カタリナには、ムーンという後ろ盾がいるじゃないか。何も心配することはないだろう」

 「分かりました。国王がそこまで、言うのでしたら、引き受けます」

 これで、カタリナは、正式に国王になることが決定した。後は、式典をいつ行うか、だけだ。それについても、国王レーモンは、早くしたいようだ。それ故、簡素なものでもいいということで、1週間後に行うことが決定した。

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 いよいよ、カタリナが女王になる日がやって来た。今日は、女王カタリナの誕生を祝って、王宮で、式典が催される。現国王レーモンが生きているのに、早々と王位を継承させること、そして、その時期王が、高々11歳の子供だということに、国民は不安を隠せない様子だった。

 私は、カタリナと一緒に馬車に乗って、王宮に向かっていた。横に座っているカタリナに声を掛けた。

 「いよいよだね。緊張している?」

 「別に。式典に出るだけでしょ」

 「凄いな。平気なんだね」

 「当たり前でしょ。ムーンがいるから、私は、いつも通りでいいのでしょ」

 「そうだよ。カタリナは、厭な事は何もしなくていいよ。いつも通りでいいよ」

 カタリナが、私にもたれかかって来た。他国での襲撃事件以来、外に出るときは、いつも私にくっ付いている。その方が、安全なので、有り難い。

 「今日は、少し時間が掛かるけど、我慢してね」

 「ムーン、その代わり、一つ私の言うことを聞いてね」

 「何だい?」

 「今は、内緒よ。後で、言うわ」

 「わかったよ。カタリナが言うことは、何でも聴いてあげるよ」

 「ムーン、嬉しい」

 カタリナは、私の腕に自分の腕を絡めてきた。すっかり、懐かれたようだ。

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 無事、式典も終わり、これで、カタリナ王女が誕生だ。そして、私は、カタリナ王女の伴侶として、この国の宰相として、大きな力を得たことになる。そして、念願のこの国の王家にだけ知られている秘密に近づくことができる。

 王家の秘密は、国王のみが知ることができるもので、たとえ、伴侶とはいえ、私は、聞くことができない。そこで、隠密魔法で、その場に同席することにした。

 今から、前国王レーモンから、新国王のカタリナに、直接、秘密が語られる。

 カタリナが、前国王レーモンだけがいる、部屋に案内された。私は、カタリナの後ろから、姿を隠して、付いて部屋に入って行った。私の後ろで、ドアが閉められた。

 「カタリナ、こちらに来なさい」

 「はい」

 前国王レーモンは、カタリナ王女を近くまで呼ぶと、小さな声で、語り始めた。

 「今から、話すことは、王家に伝わり秘密だ。たとえ、伴侶だとは言え、教えてはならない。よいか?」

 「はい、分かりました」

 「それでは、1度しか言わぬから、しっかりと聞き、覚えよ」

 「はい」

 「この国は、魔王軍には、攻められることがない。それは、魔王の四天王との密約があるからだ」

 カタリナ王女は、頷きながら、黙って、聞いていた。

 「その密約とは、魔王誕生を妨害しないということだ。その為、四天王の命令に従う。だが、それは、1度だけと決められている。つまり、四天王から、来た指示を1度だけ、実行するということだ。これまで、魔王が復活する兆しがあるときにだけ、指示が来た。およそ、500年に1度だ」

 カタリナは、少し、驚いたようだった。魔王の四天王との密約、しかも、それは、魔王誕生の協力という、この国の民にとっては、真逆の行動ではないか。そんなことを綿々と続けていたというのだ。しかも、500年に1度という、気の遠く成るような年月だ。

 「しかし、実際に指令が来て、実行されたのは、1度だけだ。およそ、1000年前に、1度だけだ。その時、この国に尽力していた賢者を殺した」

 「えっ、そんなことを!」

 カタリナは、思わず、声を出してしまった。

 「すみません。続けてください」

 「いや、これで、すべてじゃ」

 「その秘密は、私は、どうしたらいいのですか?」

 「他者に口外だけはするな。それ以外は、カタリナに任せる」

 「それは、指示通りしなくてもいいということですか?」

 「それも含めて、任せる。カタリナ、自分で、考えるのじゃ」

 「はい、わかりました」

 私は、直ぐに、転移魔法で、自分の城の部屋に移動した。やっと、賢者サビオの復讐を果たすときが来た。

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