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錬金術師の召喚魔法 第Ⅳ部 サルビア編第 22章 ショーバェ編 2202.ショーバェへの依頼

 私が街中に新たに秘密の隠れ家を作ったのには、いくつか、理由がある。一つは、ミューを見られたくないということだ。私が、ミューと関わっていることは、レイカやガーベラには、知られたくなかった。

 私が、ミューとは、大人の関係だと言っても、理解して貰えないだろうから。

 それと、もう一つは、これからの世界で起こる色々な災害に対する研究を独自に行いたいからだ。

 もっとも、大きいのは、未知の研究で、多くの者を危険にさらしたくなかった。だから、少人数での研究を選んだ。そして、人の出入りを極力避けたかった。

 でも、これを決断できたのは、あのショーバェの存在だ。あの子は、思ったいた以上に優秀だ。おそらく、この分野での最先端の研究が出来る人物だろう。その子に、よりよい環境を与えたかった。それも、優遇されていることを気づかさずに行いたかった。精神的な負担や圧力を感じさせたくなかった。

 私は、屋敷に出入口を一つ追加した。それに、闇魔法で、バリアを張り、特殊な人物だけが出入りできるようにした。つまり、ショーバェの関係者だけが出入りできる。また、見ることができるのも、ショーバェの関係者だけにした。それを屋敷の裏側に作った。

 ショーバェがリンダに連れられてやって来た。

 「リンダさん、ご苦労様です」

 「ショーバェの両親も許してくれたわ。少し、過保護な親だったよ」

 「まあ、可愛い子を手元から放したく、なかったんだろうね」

 「そういうことね。私は、もう、行くよ」

 「そう、急がなくてもいいのに」

 「本当? この屋敷は、ちょっと、怪しいよ。どうして、私に探させなかったの?」

 「えっ、それは、リンダさんが、忙しいと思ったんだ。それだけだよ」

 「まあ、いいわ。あまり、私にここに来てもらいたくないみたいだけど、それは、聞かないわ」

 「ありがとう。それじゃ、また」

 リンダは、何かに気付いたようだが、まあ、秘密にしてくれるだろう。

 私は、ショーバェに、屋敷への出入口を教えて、地下へと一緒に入って行った。

 「ショーバェ、何か、必要な物があれば、言ってね。直ぐに揃えるから」

 「はい。わかりました。まず、何から始めたらいいですか」
 
 「まずは、病気の原因がはっきり分かったものについてだけど、『バルファ・フェルレ』というキーワードで、資料を整理して欲しい」

 「それは、何ですか?」

 「それも含めて、整理して欲しい。ショーバェが理解できるまで、研究してくれるかな?」

 「はい、わかりました。その単語だけで、いいのですか?」

 「いや、まだあるよ。後は、『アンチ・ビオテス』と『イプセ』についても、同じように研究してくれるかな?」

 「はい、わかりました。それから、ここにある、機器等はどうするのですか?」

 「資料が整理出来たら、報告書に書かれていることの復元性を調べて欲しい。そのための機器だよ」

 「報告書に書かれていることを私が検証していくということですか?」

 「そうだよ。それに関して、必要な物は、何でも、用意するから、言ってくれ。それから、人材についても、同様にできるだけのことをするから、遠慮はするな」

 「はい、わかりました。これから、取り掛かります」

 「そう、そう、ショーバェにも、思念伝達を教えておこう。何か、急な連絡事項があったら、これを使ってくれ」

 私は、思念伝達用の神具をショーバェに渡して、使い方を説明した。ショーバェは、直ぐに理解し、使える様になった。

 ショーバェには、言わなかったが、『バルファ・フェルレ』は、今の細菌のことで、『アンチ・ビオテス』は、今の抗生物質のような物だ。そして、『イプセ』で、今のクローン技術の事だ。

 私は、ショーバェと別れて、ミューの部屋に転移魔法で移動した。

 ミューは、最近、ベッドで、気怠そうに寝ていることが多い。今日も、ベッドで寝ている。

 私は、ベッドのミューを抱きしめて、囁いた。

 「私の為に、働いてくれないか?」

 「いいわよ。ムーンの願いなら、何でも叶えるわ」

 「ありがとう」

 私は、ミューにカネーダを操って貰いたかった。そして、ミューなら、出来ると信じている。

 私が直接暗示を掛けてもいいのだが、私の存在を不用意に知らせたくなかった。そのため、ミューをおとりに使うことにした。

 「ミューは、今の香水をラベンダーの香りに変えてくれないか?」

 「いいわよ。ムーンは、レベンダーの香りが好きなの?」

 「そうだ。好きな香りだ。ミューがその香りで包まれたら、もっと、愛してあげるよ」

 「本当? もっと、愛してくれる?」

 「そうだよ。今以上に愛してあげるよ」

 「わかったわ。直ぐに買うわ。ラベンダーの香りね。わかったわ」

 私は、ミューの柔らかな身体を確かめる様に、二の腕から、脹脛にいたるまで、一つずつ、確かめて行った。それを、何度も繰り返して、朝まで、ミューと過ごした。

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