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錬金術師の召喚魔法 ゴーレム擬きで世界征服?  第I部 第6章 軍事都市リーベン編 610.ベルーナ大佐との新たな取引

 私は、ベルーナ大佐と懇意になった。そこで、以前から、気になっていたことを聞いてみた。

 「ベルーナ大佐、すこし、変な事を聞きますが、怒らないでください」

 「テラは、いつも、変な事を聞いているように思うが、それでも、気にしているのかな」

 「そんな、いつもではないですよ」

 「そうかね。まあ、テラなら、許すとしようか」

 「実は、噂で、ソーロン帝国が戦争の準備をしていると聞いたのですが、本当ですか?」 

 「確かに、よく、そのような事を軍人の私に聞くなぁ」

 「はい、すみません。でも、気になっていたので、聞きました」

 「そうだね。そのような噂は流れているのは、知っている。だが、真実とは違う」

 「そうですか。それなら、良かったです」

 「そうではない。戦争を起こそうとしているのは、間違いだが、戦争に備えているのは事実だ」

 「どう違うのですか」

 「つまり、ソーロン帝国が戦争を遣りたいわけではないが、そのような状況に追い込まれているということだ」

 「なぜ、戦争をするのでしょうか。多くの人が無くなり、街が破壊されて、いいことはないですよ」

 「だが、食べて行かないといけない。つまり、死活問題で、やむを得ないのだ」

 「何か、お困りの事が在るなら、私がお手伝いしますよ」

 「うむ、そう言ってくれるのはありがたいが、これは、極秘のことなので、たとえ、テラといえども、話すわけにはいかない」

 「そうですか。仕方がありません。いつでも、言ってください。すぐに、応援に来ますよ。ただし、争いごとはごめんですけど」

 「わかった。もし、頼みたいことが出来たら、遠慮せずに頼むよ。その時は、よろしく」

 「はい、わかりました。ところで、先ほどの検分用の神具は、どうしましょうか?」

 「あぁ、あれは、十分合格だ。納入を勧めてくれるか」

 「はい、わかりました。ただ、1個金貨20万枚になりますが、よろしいでしょうか」

 「いままでの物であれば、15種類もの神具を買わねばならなかったから、2倍の値段で納まるなら、まったく、問題ない」

 「それでは、すぐに手配を勧めます。納入の日付は、後程、連絡させていただきます。
 それから、個数は、どうしましょうか?」

 「そうだな、とりあえず、200個お願いする」
 
 「わかりました。それでは、また、連絡させていただきます」

 私達は、ベルーナ大佐の元を去って、工房に戻った。

 ブューラナの商業ギルドのリンダから、連絡が入った。それによると、従業員として、デザイナーを3人、裁断・縫製に5人雇って、工場も確保して、6カ月借りる契約をしたということだ。

 私は、どんどん進める様に言っておいた。最初の服は、来週に見本を届けるということだ。やはり、リンダは仕事が早い。

 私達は、ベルーナ大佐の仕事を仕上げていくことにした。個数は、200個なので、すぐに完成した。サルビアにも、手伝ってもらったので、サルビアも、今後は、一人でも作ることが出来る様になった。

 次に、魔石の確認を行った。農園に置きっぱなしにしておいた魔石は、十分な魔力を吸収していた。やはり、自然に魔力を取り込むことが出来るようだ。

 それから、もう一度、鉱山に行って、魔石の材料を、また、集めて来た。そして、前回と同じように、農園に放置した。

 色んな事が順調に進んでいる。だが、一つだけ、うまくいっていないことがある。それは、サルビアの医者になるという夢の実現だ。
 
 白魔導士にとっての魔法力や経験は十分に満たしているのだが、医師としての経験は、まだ、1人の患者を助けたに留まっている。

 私は、何とかして、サルビアの夢を叶えたいと考えている。その為には、何がいいのか、考えてみることにした。

 「サルビア、仕事の方も順調に進んでいるので、少し、好きな事を考えてもいいよ。
 何か、したいことは、ない?」

 「はい、少し気がかりな事が在るのですが、いいですか?」

 「何でも、遠慮せずに言ってよ」

 「はい、実家の事なんですが、やっぱり、私の為に両親が不幸なままというのは、気になります」 

 「そうか、借金で大変な生活になっていると思うね。それで、どうしたい?」

 「私が、代わりに借金を返して、元の生活に戻してあげたいです」 
 
 「いいよ。それじゃ、両親の事をまず、調べに行こうか?」

 「いいんですか?」

 「もちろんだよ。一緒に行こう」

 「うん。行こう」

 スピアも、行きたいようだ。私達は、ブューラナの貴族エリアに転移魔法で移動した。

 更に、私達は、隠密魔法で、隠れて調査することにした。そして、光魔法で、匂いを消しておいた。

 「それじゃ、まず、屋敷がどうなったか、調べようか」

 「はい、お願いします」

 私達は、サルビアが生活していた、屋敷を覗いてみることにした。すると、借金のかたに取られてしまったはずなのに、まだ、誰も済んでいないようだ。どうも、売りにも出されていないようだ。

 「サルビア、誰も住んでいないようだね」

 「本当ね。変ね。借金のかたに売られたはずなのに」

 「そうだ、バーケン子爵の屋敷に行ってみよう。何か、分かるかもしれない」

 バーケン子爵は、サルビアの叔父にあたる。妾の話を持って来たのも、このバーケン子爵だった。

 だから、何らかの事情を知っていると思われた。私達は、バーケン子爵の屋敷に行って、屋敷の中に入り込んだ。

 「サルビアが亡くなって、もう、1年が過ぎたのね」

 「そうだね。早いものだね。何とか、屋敷を売るだけで借金を返せたのは、運が良かった」

 「そうですね。サルビアの知り合いだという貴族が、借金の肩代わりになってくれて、その代価として、屋敷だけを持っていったのですね」

 「あれは、何と言っていた?」

 「サルビアの友達といっていたね。たしか、ファーリって言ってたと思うわ」

 サルビアの両親は、バーケン子爵の屋敷で暮らしていた。そして、借金は無くなっているらしい。

 それも、ファーリの家が、肩代わりしたようだ。そこで、私達は、ファーリの屋敷に行くことにした。

 2階のファーリの部屋にこっそりと、忍び込んだ。もちろん、スピアに抱きかかえられて、部屋に入っていったのだが。私達は、隠密魔法を切って、姿を現した。

 「こんにちは、元気だった」

 「あ、サルビア、久しぶり。僕は元気だよ。言われていたことは、やっているよ」

 「そう、それなら良かった。
 どうも、私の家の借金を肩代わりして貰っているみたいね」

 「そうでけど、気にしないで、屋敷もそのままの名義にしているよ。
 サルビアの屋敷だから、必ず、帰って来ると思っていたから」

 「そうなんだ、ありがとう。
 でも、ファーリに借金しているようで、嫌なの」

 「いいよ。サルビアの気に済むようにしたら」

 「それなら、ファーリの家が支払った金額を払いたいの。今の私は、十分に支払うことができるの」

 「そうか、それなら、僕から、両親に話をするよ。それで、サルビアは、これから、どうするの?」

 「私は、死んだことになっているので、どうもできないわ」

 「あっ、それなら、サルビアの死亡届は、僕の両親が取り消しているよ。でも、事情がありそうだから、公には、サルビアは、死んだことにしているよ。だから、いつでも、元の生活に戻れるよ」

 「本当、ありがとう。本当に、嬉しいわ」

 「サルビアには、いくら、感謝しても、感謝切れないほどの恩があるから、それぐらい何でもないよ」

 「テラ、私、もう一度、昔のサルビアに戻るわ。いい?」

 「いいよ。サルヒアは、何も気にすることなんてないよ。いつも、自由だよ」

 「ありがとう、テラ」

 私とサルビアは、別れて生活することになった。サルビアは、貴族に戻っていった。

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