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錬金術師の召喚魔法 第Ⅳ部 サルビア編 第27章 ソーロン帝国の秘密編 2703.魔人族の秘密

 ソーロン帝国には、魔王軍が侵攻してくる時に利用するゲートがあり、そしてヘノイ王国には、勇者を召喚できる賢者が代々生まれてくる。それでは、聖剣と聖盾と聖防具は、どこにあるのだろうか?

 おそらく、それぞれが、各国に分散して保管されているのだろう。本気で、魔王を倒すのであれば、探して、集める必要がある。だが、今はそれらしい兆しがない。

 カタリナが、王女になる時に前国王レーモンから聞いた話では、魔王が復活する兆しがあるとき、四天王から指示が出されるということだ。だが、1000年前に1度出されただけで、これまで、出されていない。つまり、魔王の復活の予兆がないということだ。

 これまでの流れから、魔界での魔力濃度が関係しているように思われる。魔界での魔力濃度が一定の水準を越した時に、魔火山が噴火し、ゲートが開く。それをきっかけに魔物が溢れ出て、世界を混沌に落とす。そのため、また、魔両区濃度が高くなる。そして、魔王の復活につながるという訳だ。

 だが、1000年前に賢者を殺すことによって、勇者が召喚されなかった。そのため、この世界の魔力濃度が高くならなかったのだろう。それで、魔火山が噴火せず、魔王の復活もなされなかったと考えられる。

 つまり、四天王が行ったことは、魔王の復活を妨げただけだったということだ。

 それに、私がダンジョンから魔力を抜きとって、マナテリーを作り続けたことも、影響を与えたのかもしれない。まあ、いずれにしても、魔王の復活も、魔王軍の四天王の復活も、その兆しがないということだ。

 私は、聖剣・聖盾・聖防具のありかを調べるために、まず、イーデン王国を調査することにした。ちょうど、イーデン王国からの依頼で、下水道工事を請け負っている。それを口実に、王族に探りを入れてみることにした。

 私は、ガーベラに思念伝達で、連絡を取った。

 「ガーベラ、気分は、どうだい?」

 「急に、どうしたの? 忙しくないなら、ルナjrの相手をしてよ」

 「一つ、仕事が終わったら、直ぐに、行くよ」

 「それで、頼みって何?」

 「あれ、そんなこと言った?」

 「ルナが、何の用事もなく、連絡することってないでしょ?」

 「そうだったっけ?」

 「そうよ。いつもの事よ」

 「実は、イーデン王国の王族と接触したいんだ。それで、下水道工事を口実に、王族に会いたいんだ。できれば、国王がいいけど」

 「分かったわ。レンゲーに連絡を入れておくわ」

 「ありがとう」

 「これが終わったら、私の所に来てよ」

 「はい」

 私は、ガーベラとの思念伝達を切った。イーデン王国は、ソーロン帝国と隣接している国で、ソーロン帝国と同様に軍隊の国だ。おそらく、ソーロン帝国にある魔王軍のゲートの様な秘密があるのだろう。 

 暫くして、レンゲーから、思念伝達で、連絡が入った。

 「ルナ様ですか?」

 「はい、私です」

 「ガーベラ様から、連絡を頂きました。現在、ホータルがイーデン王国の市場調査後、都市ロンデンに居ます。ホータルと一緒に王宮に行けば、国王に会うことが出来ます」

 「ありがとう。早速、ロンデンに行くよ」

 私は、レンゲーとの思念伝達を切った。そして、転移魔法で、イーデン王国の都市ロンデンにある支店に移動した。

 「ルナと言います。ここに、ホータルはおられませんか?」

 「はい、私が、ホータルです」

 「よろしくお願いいたします」

 「それでは、早速、王宮に行きましょう」

 私達は、店の前に止めてあった馬車に乗り、王宮に向かった。

 「ホータル、国王は、どんな人物ですか?」

 「カーブム国王は、穏やかな人物です。軍人の国の国王という雰囲気はないです」

 「そうですか。今回は、どのように取り次いで貰えたのでしょうか?」

 「ルナ様は、ガーベラ様の配偶者ですので、下水道工事完了後の打ち合わせと言うことになっております」

 「わかりました」

 漸く、城が見えて来た。兵士に案内されて、私達は王宮に入って行った。

 「ルナとホータル、もっと、近くに寄りなさい」

 「「はい」」

 「それで、今日は、どのような用件かな?」

 「下水道工事で、ペストに対する予防にはなりますが、完全ではありません」

 「それは、どういうことだ」

 「国内の衛生状態を向上させることで、色々な感染症の予防対策にはなりますが、感染症自体をなくせるわけではありません」

 「なるほど、感染する国民を減らすことは出来るが、病気自体をなくすわけではないということだな」

 「はい、その通りです」

 「それで、どうすればいいのだ」

 「万が一、病気が発症しても、治療できるように、人材を育てておく必要があります」

 「なるほど。だが、魔法学院で、治療魔法を訓練しているではないか」

 「確かに、光魔法での治療は、有効ですが、病気のメカニズムを知らないと根治できません」

 「そうか。それで、何か、方策があるのか?」

 「はい、病気自体を勉強できる施設を作るべきかと、提案します」

 「分かった。其方に任せる」

 「はい、承りました」

 私達は、王宮を後にした。取り敢えず、国王との繋がりを持つことが出来た。これをきっかけに王族に取り入っていくことにした。

 私は、ホータルに別れを告げて、ガーベラの居る城に転移魔法で、移動した。

 「ルナ、早かったわね」

 私は、ガーベラの横に行って、ルナjrの顔を覗き込んだ。そして、ガーベラを抱きしめた。

 「もう、動き回れるのよ」

 「ガーベラに似て、賢そうだね」

 ガーベラが、嬉しそうに私を抱き返して来た。私は、ガーベラの肩を抱いて、幸せを噛み締めていた。 
 

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