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【詩】ね

連続する犬稗の傍に僕が死んでいるとき
早春の恋人は白々と唇を拭っていた
「今を忘れるほど輝く夕暮れ」
恐らくは日曜日
落雷に見つかった午後の半分くらい岩陰
青白く鴉のような形貌をしたお婆さん三人
骨の曲がった腰を若い僕等に記号的に見せる
やがてエルビス
自由を監獄しろ
犬歯をやらかい獣肉の信愛に刺し込んで
銀色の槍や刺又の夢想から挨拶を忘れて
僕は迷っていた
三羽の鴉は憂き世の迷宮へと誘ってくれる

君も迷っていた
深刻な瀝青の上を軽薄な恋人は先を行く
「耳を忘れるほどの光芒と雲の巨人」
或いは火曜日
約束が拘束した僕の昼食は陽に照らされて
瑞々しく腐っていた肉等
美しい腐臭の昇る先へと僕等は続く
離さないでいた
やがてジョン
愛を敷衍しろ
名前を欲しがる天気はいつも晴れで
照れ臭いが繰り返し照り返していた
していたは淋しい物語
ありがとうさようならの放物線
雛菊の窓際に揺れている面影ひとつ
もう一つ約束を増やして
触れない未来に触れたら
「今度こそがさようならだ」
流離いの月曜日
三匹の鴉のように飛び出してしまう二人
まだ迷ってもいるのに
出会いも別れも食べ飽きたって
もうそれくらい別の人なんだよね
ハブラシの音が頭のてっぺんに響く
だからくるり
そしてランボオ
恋を拘束しろ
やがてあなた
やがてでいい
やっとでいいから

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