見出し画像

【詩】詩病室

窓際で絶と共に日暮れを待つ日を過ごしていた頃
残る薫りに記憶をぶら下げて
また日暮れを待った

花部屋の二階で眠る僕のための肌
虹山日暮れの北一文字を指差して
世界の隙間を舐める彼女の舌
鬼田んぼの泥ころがしで汗を流し
夜落ちの銀野菜を料理してくれた御両親
繋いで歩けば足元から立ちイヅル恋いきれ
生まれた街を離れた寂寥のくせに
僕たちは歩幅まで生意気でいた

絶窓に雨が垂れる
与えられた病名は忘れ
匂いの残る記憶に坐って
また日暮れを待った

路地街を結ぶ若者の好奇の摸倣
食肉は繰り返しの幸福記号だった
青風吹いて彼女は垂直に背を伸ばし
絶好の振り向きを春の真中へ
改札口と美術館の孤独を分け合った
った。は改行の英雄戦争
下ら者の両手は泣いている
何時迄も鳥格好を成している

絶に雫
与命
郁足り得る記憶
逢う天の刻

心は一切の侵犯を許さない
記憶は合切を守る要塞だ
此処では次々に死が生まれる
命と引き替えに言葉に変えて

戦む
続けん

やがて来る絶旗の日に
窓はようやく
僕の死を発く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?