見出し画像

大工、三足のわらじを履く

 そんなこんなで二十代は「兄と共に父の工務店をかいがいしく手伝っているように見えて、その実大工には1ミリもなる気のない弟」という状態で生きていた僕。


 19歳から始めたバンドもライブ活動をするようになると、ギター演奏で特別になりたい、作曲で特別になりたい、人として特別になりたい、などとばかり考えるように。まあどんどん中二病をこじらせていくわけで・・・。


 すると、「なにがなんでも大工にだけはなりたくない!」という気持ちは強くなっていく。だけど、二十代半ばにして大工以外はバイトくらいしか経験がなく、バンドで喰えなかったら年齢的にも大工にならざるを得なくなるのでは? という不安がムクムク。


 そこで、少しでもモラトリアムを伸ばすために大学院を受験しました。英語でめちゃくちゃ苦労したけどなんとか入学できて、また一歩大工から遠ざかることに成功。


 父には申し訳ないけど、とにかく大工になるのは嫌だったのです。それに大学院まで出ておけば、とりあえず何かしらの就職口も見つかるだろうと思ったのよね。


 ところがだ、大工・バンド・院生の三足のわらじを履きこなすことはむちゃくちゃ大変でして、ええ。ていうか僕の考えが甘かったのよね・・・。


 バンドは自主企画のイベントを催したあと燃え尽き気味になり、ドラマーが脱退。院では週に5冊~8冊の本を読めと言われ愕然。そこへきて恋愛方面も失敗が重なりボロボロ。


 おまけに、リーマンショックの影響で主要取引先からの新築発注が止まって大工仕事も激減。僕は不本意ながらも足場屋へ出向することになってしまったのだ。


 親のスネをかじりまくって生きてきたことのツケが二十代後半でドカッと回ってきた感じ。そして、段々と精神的に陰鬱になり、人生の暗黒時代に突入していったのです・・・。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?