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大工、スジってなんぞ?

 産廃屋の営業部に入って間もなく、僕のメッキはボロボロ剥がれて、あっという間に世間知らずの31歳末っ子ボーイだということを露呈してしまいました。


 ある日のこと、僕の失態で会社に大きな損失が出てしまう寸前。僕は営業部の先輩YさんとKさんに助けを求めたんです。やばいよやばいよパイセ~ン!


 「おまえ、なにやってんだ! ったくしょうがねえ」


 そう言って電話を切るYさん。とにかく焦っていた僕は手当たり次第に助けを求めました。すると、事の問題だった原因自体がスッと自然に解消。


 「あら、なんか知らんけど助かっちゃった」


 わ~、よかったよかった。助かった~。これで損も出さないですむよ~、ホッと一息。そこへYさんからの着信が・・・。


 「おい! おまえは人を動かしておいて、てめえの問題が解決したら何もなしか!?」


 ひ~~~~!!! Yさんめちゃくちゃ怒ってるう~。こえ~~~。


 と、ビビッてしまった僕ですが、Yさんはズバリ、人と人との関係における責任とけじめ。そういったことをひじょ~に重んじる人だったんです。仕事上、人生上、どちらにおいてもそれを大事にしていらした。


 様々なことを教えてくれたYさんだったのですが、人任せ風任せに生きていた末っ子気質の僕には特にそのことを繰り返し教え込んでくれました。もう長いときは電話で二時間くらい。


 Yさんはね。スジって言ってたんだよね。


 「おまえ、スジを間違えるなよ」

 

 「スジさえ通せば大丈夫だ」


 「それじゃあスジが通らねえ」


 こんな風によく言ってた。すごく曖昧な言葉。スジ。


 スジってなんだ~~~~~!!!


 当時は怒られてばっかりだったから、腹立たしい謎ワードだったスジだけど、今ならなんとなくわかるよ、Yさん。


 スジ、それは人と人との関係における責任とけじめ。あ、これさっきも言ったわ。


 えっと、別の言い方をします。スジって言うのは不文律のようなものです。ルールではなくモラル。法律ではなく規律。そういった倫理上の、人と人との関係上に存すべき道徳律・・・とか?


 むっず! ややこし! これそういうエッセイじゃないって!!


 なんかカント思い出したわ。汝の意思の格率が~ってさ。


 Yさん、すいません。俺未だにスジってよくわかってないっス。俺もう42です。すんません。


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