職人二世問題
試しに『職人二世』や『職人二世問題』とネットで検索してみると、出てくるのは伝統工芸や伝統芸能の後継ぎ不足の問題がほとんど。それと、芸能人やタレント二世の記事くらいです。
タレント二世の話は置いといて。話題にしたいのは後継ぎ不足の問題の方。ちなみにChatGPTに『職人二世問題とは何か』と尋ねてみたら、『伝統的な職人の技術や技能が次世代に受け継がれずに、失われてしまう問題』という答えが返ってきました。
確かに世の中は職人不足の人手不足。やれ非婚化だ~、やれ少子化だ~、とあちこちで目にする令和の時代に後継者が不足するのは必然です。
だけどこれ、問題の視点がその職人や業界サイドから見たものなのよね。
これに対して僕が問題にしてほしいのは、親が特定の職業に従事している場合に、その子供たちが同じ職業を選ばざるを得なくなるっていう、後継ぎサイドからの視点の方です。こっち埋もれてるよ~。影にかくれてるよ~。
あの現職議員銃撃事件以降、有識者の方やメディアの尽力によって方々で話題にされるようになった『宗教二世問題』。報道を見たり聞いたりするうちに、あら? これって、職人にもけっこう似てるところあるな~、と共感。個人の自由意志と家族やコミュニティからの期待との間で葛藤する、ってところは一緒なんじゃないかと思ったんです。
大工の息子として生まれた僕は、家族や親戚の集まる席で「将来は〇〇も大工さんだ」「お父さんと一緒の大工になるのよね」と言われ続け、当の本人の父には「お前は職人の息子なんだから職人以外はできるはずがない」と言われるなど、例えを挙げればきりがないほどの心理的圧力、強要、期待をかけられて育ちました。
母には「お父さんの夢はあなたたち兄弟と三人で大工をやることなのよ」と言われ続けてきたし「お母さんが男だったら絶対に大工になるわ」とも言われてきたんです。おいおいマンマッ!
でね、実際に中学生からは大型連休に入ると毎度毎度、父に現場に駆り出されるようになるのですが、器用でスポーツ万能な兄とは違って、不器用で運動が苦手な僕は大工仕事においても家族のドベ。
何をやっても半人前扱いだったので、任せてもらえる仕事の範囲も長らく狭いままでした。大工の一人親方として独立した今でも、ま~だ僕の父は「半人前でもこなせる仕事を選んでるからお前は喰えてるんだろ?」っていう目でしばしば見てくる。
は~・・・うんざり。
何が言いたいかというと、人には向き不向きがあるし、個人の興味や関心事なんて違うっていうのが常識なんだから、職業選択の自由くらい子供に与えて欲しいということです。
子供はいろ~んなことに興味と好奇心を持ってすくすく育ち、やがて自分の”スキ”を見つけて夢中になって、個人の幸福感や達成感を覚えていくものでしょうが! 違うんかいっ!?
更にはその過程を、親や、家族や、コミュニティに愛されて応援されることで、自分自身を好きになって、自分の”スキ”に自信をもって、延いては他人や、人生や、世界が好きになっていくんだと、僕は考えるよ。いや、これ確信だYO?
逆に言えば、育ての親に自分はもちろん、自分の興味や関心事に目を向けてもらえないと、自分が何かを好きになる、ってことすら難しいんだよ。
人は心に根源的な寄る辺がないと、不安定になる。そりゃぁ〜そうでしょ!? 心が頼りにして帰る場所がなけりゃ、思い切って外に飛び出すなんて出来っこないZE!!
僕自身、才能って言葉で散々苦しんできた人生だから、あまり使いたくないですけど。その才能や成功だって、個人の興味や関心事に基づいて職業を選択するから、モチベーションのお水と努力&工夫の肥料を与えることが出来て、花も開いてくるんです。
その可能性を親の職業に合わせることでスパッと制限することになるっていう大問題。こういう意味での『職人二世問題』。多様性を目指してるはずの社会の中で埋もれてるのが現実なので、もうちょい可視化されるべきだと思うし、それを願っています。
そもそも論、『毒親』とか『親ガチャ』っていう言葉が流行ったみたいに、親の問題だっていう考えもありそうだけど、僕の場合、実家の工務店で働く他の大工や他業種の職人からも「大工は喰いっぱぐれねえぞ」「早く一人前になって父ちゃん手伝え」「お前も現場に来いよ」なんて言われてきたから、コミュニティの問題でもあるのよね。
僕と同じような境遇の人、たくさんいらっしゃることと思います。だから社会全体で、もうちょい問題意識を持つことで、親のみならず世間の視野も広くさせる必要があるよね。
と同時にだ! 職人二世の本人も親や家族とコミュニケーションをとって、自分のことをしっかり話して、少しでも理解してもらうことが必要だよ。
これにはめちゃくちゃ勇気がいるけどね。家族や親せきの期待を裏切るって、簡単じゃないですよ。嫌だったら辞めればいいじゃん、なんて簡単な話じゃないってば。
自分自身の幸福を追求することが、家族の期待に反する。家族ががっかりするような道って、結局は自分自身の幸福でもないんじゃないか? こんな風に葛藤するんですから。ぐむむむむう・・・。
だけど手を挙げて自己主張するのは早ければ早い方がいい、歳を重ねると体力も精神力も衰えるし、経済的な理由ものしかかって、本当に勇気が無くなってくすぶることになるからね・・・。
もし、今これを読んでくれているあなたが、この問題と似たようなことで悩んでいるのなら、出会えたときに僕はあなたに間違いっなく、こう言います!!
「親を裏切ることになったとしても、自分の夢中になれることを信じて続けてください」
あ、あと最近食べたものでむちゃくちゃ美味しいと思った食べ物ってなんですか? ってのも、絶対聞くけどね。
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