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【学び直し】「これに当てはまる人は大人の学び直しをしてもいいんじゃないか」チェックリスト

この春から、東京藝大の修士課程で30代にして社会人院生をしております、アーティストの市原です。
コロナ禍の社会変動を経て、昨今は「改めてこれからの時代に向けて勉強し直したい」という方が潜在的に多いのでは?ということを感じているため、
これに該当する人は学び直しを検討してもいいんじゃないか」というチェックリストを独断と偏見でつくってみました。

☑大人になってから一生やりたい分野・仕事が見つかった人

ハタチそこそこで自分の適性や才能、世の中にどんな仕事があるかなんて完璧に見通せることの方が少ないと思うので、大人になり、社会に出ていろいろな経験をする中で、ようやく「自分はこれが向いているらしい」「こんな仕事があるらしい」と気づくことは往々にしてあると思います。
年を重ねてから自分の適職にたどり着いた人が、時間差でやりたい分野について学び直しをすることは非常に有用かと思います。

私も10代の頃は自分の才能に確証が持てず、「そんな状態で学費が高く潰しもきかない美大に行くのはバクチすぎる、食えるかわからないし」と美大進学を諦めたクチだったのですが、色々あって会社員を経て普通にアーティストとして生計が立つようになり、作家業を一生の仕事にする確信が持てたので、「職業訓練として行くか、絶対に学費も回収できるはず」とドッシリとした気持ちで進学できました。

☑自分の専門性を確認したい/言語化したい/深めたい人

自分もそうでしたが、「社会人になってから独学あるいは現場叩き上げでなんとか仕事になっちゃったけど基礎や体系的な知識に自信がない
ご依頼や要請があるままに色々と仕事をしてきたけど、でも専門分野が何なのかはっきりと言語化できない
という人も、学び直しにより得られるものが多いかもしれません。

私も独学で作家になり、要請があるままに仕事をしてきたのですが、
入学後はようやく「作家の仕事にはどんな要素があって、自分には何ができていて、何ができていないのか」がなんとなくアタリがつくようになりました。
入学前までは全てが行き当たりばったりで、そういった地図すら頭に思い描けていなかったです。

学び直しで「コンパス」のようなものを入手できている気がする

☑仕事がある程度コントロールしやすい状況になった人

仕事がウルトラ激務でバンバン仕事がふられて業務量をコントロールできません、というような状況だとやはり学業との両立は厳しいと思うので、仕事量がある程度コントロールしやすいワークスタイルであることは前提かとは思います。よほど馬力がある人ならどうにかできるかもしれませんが、個人的には体力も落ちてくる30代以降は無茶は禁物だなと。

自分の場合は比較的時間のコントロールはしやすいフリーランスではあったものの、とはいえ毎日バタバタの自転車操業で学び直しをするイメージは長らくわかなかったのですが、
コロナの影響で海外の展示案件が「リモート設営」という選択肢が入ってきたこともあり、海外出張で毎回必ずしも長期にわたり日本をあける必要がなくなったのと、打ち合わせもオンラインで良くなったのは本当にありがたいです。コロナ前だったら恐らく学び直しで時間をあけるのは無理でした(下記の国立台湾美術館での展示もオンラインで準備&リモート設営だった)。

☑人生の寄り道を体験したい人

自分自身は学生時代「モラトリアムの延長なんてとんでもない、早く社会人として一人前になりたい」と大人になることを焦っていたタイプで、浪人留年留学休学院進いずれも経験せずストレートで社会に出たのですが(そもそも学生を延長できるほど親のスネをかじれない状況だったこともありましたが)
「最短距離で目的地にたどり着く」ことばかり目指していると、自分の想定の範囲外のことに出会えない弊害もあるなと感じるようになりました。

大学院=人生の寄り道とまでは言わないですが(普通に大変だし忙しいし)、普通に仕事をして稼いでいるときにはやらないようなことをたくさんやったり知ることになるので、経験の幅は広がると思います。
(自分に関しては、農学部に入ったのか?と思うほど、自然や土と戯れることが増えた。研究室の活動から派生してヤギと散歩したり、草刈りしたり……)

そういえばメディアアート系の大学院「IAMAS」は、「人生のサービスエリア」と呼ばれているとかいないとか……。言い得て妙。

☑アウトプットばかりでインプットが枯渇している自覚がある人

取材を受けたりあるいは講師業をやることも多かったので、「自分の活動を外部に向けて話す」活動はよく行っていたのですが、その一方で忙しく過ごす中で何か新しいことを知ったりすることがおろそかになっている感覚がありました。
なんだろう、自分が喋り慣れたことを繰り返し喋っているような……。

普段教える立場にいる人があえて学生に戻ってみるのも、それはそれで得るものが非常に多いのではと思います。むしろ、教える/教わる立場を両方経験することで得られるものが二倍になるのでは。

私も、ゲストでいらっしゃる先生のプレゼンテーションの仕方や学生としてどういった印象を受けるかという肌感覚を俯瞰して考えることで、普段の仕事にも活かされている気がします。

☑やりたい分野での人脈を広げたい人

やりたい分野の学校で学び直しを行う場合、やはりなんだかんだでその分野における人のつながりが広がる作用は間違いなくあると思います。

自分のケースだと、これまで一匹狼で活動してきて同業者とあまり関わりも多くなかったのですが、他の作家さんに対して「先輩、後輩」という新しい関係性で接することができたり、
自分がファンだった作家さんが講師でやってきたり、キャンパスで何気なく遭遇したり、
単なる「他の無関係な作家」とはまた違う有機的な関係性ができるのが面白いなと思っています。
コロナ禍の学生生活ではこのあたりは難しかったかもしれませんが、これからの入学年度だとこれがメリットなのではないかと。

☑青春やり直したい人

自分は30代で大学院に入学しましたが、同級生は基本的には20代がボリュームゾーン。
自分も同世代も、ある程度仕事や働き方が定まってきて自分の力量もわかって将来のことであれこれ悩むことも少ない年代ですが、「将来の可能性はまだまだ無限大、でもだからこそ悩む」お年頃の方々と肩を並べて学ぶことで、そういった心の揺れを追体験できるのも、それはそれで得難いです。青春の追体験感があるし、おこぼれで大人の自分探しがはかどる。

美大において「ハチクロはフィクション」と呼ばれていますが、しかしああいった将来に対しての焦燥感や自分探しみたいな要素は学生生活につきものではあるので、あながち完全にフィクションではないかも。
自分も現役の大学生活ではひたすら悩み続けていましたが、そういった悩みこそが青春の象徴だったのでは、と2周目の学生生活では楽しめるようになりました(学生になると、不思議と悩みが増えるがそれもそれで面白い)。

あとは、自分に当てはまっているとは限りませんが、以下のような条件も学び直しを後押しする要素になると思います。

・社内に学び直しに対しての手当や補助がある(うらやましい、是非活用すべき)
・家族の理解がある(恐らくライフスタイルが変わり、多少なりとも迷惑をかける局面はあるはず)

以上、独断と偏見ではありますが、「学び直しやってもいいのでは」と思う人のチェックリストでした。
別に明確に「何個当てはまったら学び直し」みたいな目安があるわけではないですが、共感できることが多かった人は、頭の片隅ででも可能性を考え始めていいかもしれません。


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