見出し画像

「未知への挑戦」への憧れ。

「タコを最初に食べた人はとんでもない野郎だ」とどこかで書いた記憶がある。真っ赤で8本の足をウニョウニョと動かし、黒い炭を吐く海の生物をなぜ食べようと思ったのか甚だ疑問であると。

それと同じように、「スカイダイビング」や「バンジージャンプ」をこの世で初めて行った人もとんでもない野郎だと思う。鳥になりたいと思ったことは何度もあるけれど、落ちたら死んでしまうような高い場所から飛び降りたことは一度もない。よくもまぁ、傘やら紐やらを信じて飛ぶことができよなと思う。

そんなふうに考えているぼくでもたった一度だけ、本気でスカイダイビングをしてみようと思って、調べたことがある。たしか5年ほど前、和歌山県紀の川市で、みかんかキウイフルーツの農作業をしているときだったはずだ。

スカイダイビングをしてみたいと思ったのは、畑の上空を飛ぶ色とりどりのパラグライダーを見たからだ。紀の川市は日本屈指のパラグライダーのスポットで、天気がいい日であればだいたい空にパラグライダーを見ることができた。


農家のおじさんが休憩時に、柿ピーをボリボリと食べながら空を見上げる。

「おー、今日もよく飛んでるな」

コーヒーをズズッと飲みながら、ぼくもつられて空を見上げる。

「ほんまっすね!めっちゃ気持ちいいでしょうね」

眩しそうな顔をしながら、おじさんが続けて言う。

「でも昔な、知り合いの畑にパラグライダーが落ちたことがあって。そこで作業してた人にパラグライダーの紐が引っかかって、耳がちぎれてしまったことがあったんよ。作業するとき、上も気つけとかんとな」

「え、ほんまっすか。やっぱり落ちることあるんすね……」

たまたまかもしれないが、そんな事故があったことを聞いて、スカイダイビングもやばいのではと怖気づき、結局スカイダイビングに挑戦することはなかった。もちろんパラグライダーもやったことはない。

タコを最初に食べた人も、スカイダイビングやバンジージャンプを最初に飛んだ人も、やっぱりとんでもない野郎だなと思う。自分もいつか、とんでもない野郎の仲間入りができたら嬉しい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?