ベランダの植木鉢に小鳥と風が植えていったもの

広いベランダが気に入ってここに引っ越すことに決めた

だから、せっかくだから家庭菜園を始めるよ

そう言って始めたベランダの庭にミニトマトの種を植えた

ミニトマトはたわわに実ってその年の食卓を賑わせた

翌年　忙しさを理由に私は種を植えなかった

ミニトマトの苗は朽ち果て枯れ木となったが

前年収穫し損ねて土に落ちたミニトマトの種が勝手に育ち身を結んだ

固定種というのは強いものだな・・・

私が植えたミニトマトは固定種できちんと採種をすれば翌年も収穫できるものだった

育ったミニトマトは少量だったが、勝手に育ったミニトマトをありがたくいただいた

その翌年も私は何もしなかった

昨年落ちたミニトマトは少し芽吹いて弦を伸ばしたが、収穫できるほどのミニトマトは実らせなかった

その代わりにどこから来たのか野イチゴが実った

植えるはずもない野イチゴがどうして実ったのが不思議だったが、ベランダにたびたび遊びに来る小鳥たちが植えたのだと理解した

前年までちょくちょくつまみ食いをしていたミニトマトがなくなったので、代わりに野イチゴを植えていったのだ

庭に植わった野イチゴは小鳥のエサ

ベランダに放置された植木鉢の、受け皿に溜まった雨水とともにその年の小鳥たちの食卓を賑わせた

その翌年も私は何もしなかった

代わりに小鳥たちが野イチゴを植えて、野イチゴは再びベランダの植木鉢をいっぱいにした

今年　ベランダの植木鉢はイヌホウズキでいっぱいになった

いつの間にか風が運んできた種が、この植物に居場所を与えたのだ

小さな花も実もこれはこれで可愛らしいが、やっぱり来年はミニトマトをもう一度植えよう

今年私はそう決心した