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知らない人んち 第一話(案)

(テロップ)
約7ケ月前 2月17日

簡単な旅行鞄をリュックを持って、寒そうに家の近所を歩いている、コート姿のアク。
家の前に立つと呼び鈴を鳴らす
しかし、中からは何の返事もない
イライラとノックをする

アク:姉さん。いないの?僕だよ。今日帰るからって随分前に約束しただろ?お父さーん?も、いないの?

どんどんとドアをたたくが、中からは何の返事もない。

アク:参ったなあ・・・いると思ったからカギは置いてきちゃったし・・・

つぶやきながらスマホを取り出して確認する。

アク:明日こっちの不動産屋さんと朝から約束してるから、今日中に行くってメール送ったの、見てないのかなあ?

玄関の扉に手をかけるアク。
音もなくスーっと扉が開く。

アク:なんだ。開いてんじゃん。入るよー。

家の中に入るアク

アク:姉さんー? いないの? お父さーん? タッくーん。みーちゃーん。おーい。大学休みに入ったから今日帰るって約束したよね。

姉や父・甥・姪を呼びながら家じゅうを探し回るアク。二階にも上るが、部屋は開けずにノックして回る。

アク:ちぇ。買い物にでも行っているのかな?僕が帰って来ることを忘れてて、慌てて買い出しにでも出かけたのかな?
まあ、いいか。夕方になれば帰ってくるだろうし。それより今日は疲れたから、ちょっと休ませてもらおう・・・

リビングのソファに横になると来ていたコートを毛布代わりに掛けて眠ってしまうアク


ボーンボーン

夜中の

12時を告げる時計の音がなる。

驚いて目を覚ますアク。スマホを見て時間を確認する

アク:え?もうこんな時間?

辺りを見回すが誰もいない。不審な顔をするアク。

アク:姉さん?

驚いて飛び起きると、慌てて家を探し回る。和室の扉を開く。二階に上がって、女子部屋、男子部屋と開けていく。すべて誰もいない。

そして暗室をノックする

アク:お義兄さん、すいません。いますか?

返事がない。思い切って暗室のドアを開くアク。すると、その真っ暗な部屋の中に吸い込まれるようになるアク。必死でドアノブにしがみつき何とか、はい出て廊下に出る。そしてどうにかドアを閉める。

息を切らして廊下に座り込むアク。

アク:なんだ?なんなんだ?今のは?


(テロップ)
6月21日

近所をゆっくりと歩いているジェミ
家に近づくと呼び鈴をならす

もう一度呼び鈴を鳴らそうとすると、いきなり玄関が開き、そこには驚いた顔をして茫然と立つアク。

ゆっくりと手を合わせて深々とお辞儀をするジェミ

ジェミ:この辺りから黒い暗黒の気が感じられます。あなたの周りに何か良くないことが起ころうとしています。黒い気があなたを覆っていくのが分かります。早急に払わなければなりません。

カバンの中から水晶玉を取り出す。

ジェミ:水晶には邪気を払う力があります。あなたの運命を浄化してくれるでしょう。私たちの属している聖ヨハンナマリアキリストカテドラル・・・・・・・(えんえんと続く)自由の血結社では、あなたの邪気を払うためのお祓いを行っています。
それもたった10万円という破格のお値段で、あなたの運命は暗黒時代から大いなる光の時代へと・・・

アク:払ってくれ

ジェミ:え?

アク:だから。10万円払うから、邪気を払ってくれ。

ジェミ:マジかよ(ボソッと)

アク:とにかく、入って。

ジェミの腕をつかむと、家の中に連れ込む。

リビングに入るジェミとアク。

まじまじとアクをみるジェミ

アクの姿は、疲れ果てやつれた様子で、しかももう6月も終わりだというのに寒そうにセーターを着こんでいる。家の中は暖房がついていた。にもかかわらず微妙に寒い。

ジェミはぞくっと肩を震わせる。

ジェミ:やだ。どうしよう・・・。ここんち、本当に取りつかれてるのかも?

真剣にジェミの顔を見ているアク。

アク:払ってくれ。

ジェミ:・・・

アク:浄化できるんだろう?

ジェミ:・・・はい・・・

アク:早くやってくれ

ジェミ:・・・あのう・・・?何かにとりつかれているんですか?

アク:分からないのか?分かってて来たんじゃないのか?

ジェミ:いえ。この辺りを回っていて・・・あの、マニュアル通りに・・・あ。いえ、そうじゃなくて。

ジェミ:コホン。えっともちろん悪い気を感じてやってきました。でも、悪い気の正体の細かいところまではまだ感知できていません。詳しい内容を伺うことで、さらに完全な浄化へとあなたを導くことができます。

アク:閉じ込められている。

ジェミ:え?

アク:ここから出られないんだ。正確にいうと、家からは出られるんだけど、いつの間にか戻ってきてしまう。

アクを見つめるジェミ

ジェミ:・・・大丈夫かしら?この人・・・

アク:姉さんたち家族も戻ってこない。どこかに行ったままだ。それに電話も通じない。いや。ちょっとまった。君。今日は?今日は何月何日だ?

怯えて肩をすくめるジェミ

ジェミ:え?今日は6月21日ですけど・・・?

ジェミをまじまじと見つめ、振り返って、ホロスコープの巨大なカレンダーを見つめるアク・・・

アク:6月21日・・・ふたご座・・・ジェミニの終わりか・・・

ジェミ:え?

アク:いや、何でもない

ジェミ:あの。それより、お姉さんたち一家が戻ってこないっていうのはどういう・・・?

アク:いや。何でもない。それより、君は暗黒の気を感じてやってきた。そういったよね?

ジェミ:はい。もちろんです。我が聖ヨハンナマリアキリストカテドラル・・・・・・・(えんえんと続く)自由の血結社の正式な加盟員になると、様々な悪の気を感じられるようになります。そしてその力を、困っている方のために使うことでさらなる徳を積むことになり、そのことでさらなる力を・・・

アク:つまり、この家が暗黒の気に包まれている。ということでいいんだよね?

ジェミ:・・・ええ。まあ、そういうことです・・・

アク:・・・そうか・・・やっぱり・・・つまり、その結界みたいなもののの中に閉じ込められてしまったんだ・・・僕も、姉さんも・・・

ジェミ:・・・あの?・・・

アク:払ってください。お祓い。出来るんでしょ?

ジェミ:はい。もちろんです。10万円になりますが・・・

アク:大丈夫。それくらいならありますから。アパート契約のための賃料その他もろもろで。

ジェミ:アパート?引っ越しされるんですか?

アク:ええ。就職でね。

ジェミ:この時期に就職ですか?

アク:え・・・ああ・・・今日6月って言いましたっけ?

ジェミ:6月21日です。

アク:・・・そうか・・・いや、気にしないでください。それより早くお祓いしてください。暗黒の気ってやつを払ってください、お願いします。

ジェミ:・・・はい・・・

どうしようかと、考えるジェミ。

ジェミ:ちょっと頭のおかしい人っぽいけど・・・まあ、いっか。とりあえず適当にお祓いをして、10万円もらって帰れば、支部に今月収める分のノルマは達成するし・・・

ジェミ:・・・分かりました・・・それでは、この家の暗黒の気を取り払うための儀式を行います。

アク:お願いします。

持っていたカバンの中から様々な品物を取り出し、祈祷の準備を始めるジェミ、それを見守るアク。

お祓いを始めるジェミ。神妙な顔をしてお祓いされるアク。

しばらく熱心な祈祷が続いた後

ジェミ:これにてすべての暗黒の気は取り払われました。このあたりの邪気は全て取り払われました。あなたの人生はこれから徐々に好転してまいります。これまでの全ての不運や最悪とも思えるアクシデントは、全て全能なる聖ヨハンナマリアキリストカテドラル・・・・・・・(えんえんと続く)様の与えたもうた試練であり、聖ヨハンナマリアキリストカテドラル・・・・・・・(えんえんと続く)自由の血結社の協議に賛同して・・・・・・

ジェミの話を無視して、自分のスマホを開くアク

スマホの画面には 23:45 2019/2/17 の文字。

アク:ダメだ・・・まだ、俺の時間は進んでいない・・・

バッグに様々な祈祷道具をしまい、帰り支度を始めるジェミとそれを見つめるアク

アク:ちょっと待って。

ジェミ:?

アク:まだお祓いは終わっていない

ジェミ:いえ、変化というものはゆっくりと訪れるものです。今はそれと感じなくても確実に変化は起こっているのです。それというのも・・・聖ヨハンナマリアキリストカテドラル・・・・・・・(えんえんと続く)

アク:ちょっと、見てくれ

ジェミ:?

アク:こっちだよ。見てほしいものがあるんだ。それが解決していればまさしくお祓いは成功ということだし・・・そうだ、10万円どころか、100万円払ったって惜しくない。

ジェミ:え?マジで・・・? (ボソッと)こいつまじチョロいかも・・・100万円あれば・・・10ケ月はしのげるじゃん?

アク:さあ、こっち。2階の部屋を見てもらいたいんだ・・・

アクに連れられて二階へ向かうジェミ
暗室の扉を指さすアク

ジェミ:え?

アク:この部屋がどうにもおかしいんだ。もしかしたら、暗黒の気ってやつはここから発生しているのかも・・・と思って・・・

ジェミ:(ボソッと)暗黒の気って・・・そんなもんあるわけないだろ

ジェミ:なるほどなるほど・・・わかりました。確かにこの奥に邪悪なものを感じます・・・

息をのんで頷くアク

ジェミ:しかし、その大半は、先ほどの祈祷で消滅しています。念のため、残った残留思念を除去しておきましょう。

アク:お願いします

ゆっくりと暗室の扉を開くジェミ
するとその暗室の暗闇に吸い込まれるようになるジェミ

ジェミ:ひー

目を見張るアク

ジェミ:助けて―

扉をつかんで必死で耐えるジェミ、慌ててジェミの腕をつかんで引き寄せるアク、そして何とかジェミを廊下に引っ張り出し扉を閉める。

廊下に倒れこみヒーヒーとあえぐジェミ。
ぐったりと座り込み息を切らすアク。

ジェミとアクは気づかないがこの時、リビングの時計が日付の変更を知らせる鐘をならしていた。

茫然としているジェミ

ジェミ:これは一体なに?なんなのあれは?

アク:暗黒の気ってやつんなんだろ?君が払ったんじゃなかったのか?

ジェミ:そんなもん、あるわけないじゃない。

アク:どういうこと?だって、君はそれを察知してこの家にやってきたんだろう?

ジェミ:そんなもん、行き当たりばったり、この辺の家全部に当たって砕けろに決まってんでしょ、あんたいくつよ!

アク:そんな、ばかな・・・だって、だって、僕がこの家にやってきてからこの方、一度も、誰もここに来なかったんだ。いや、誰にも会えなかったんだ。

ジェミ:え?あんた何言ってんの?

アク:だから、初めて会った人間が君だったんだよ!しかも、今は6月21日だっていう。僕がこの家に来たのは2月の18日なんだ。それ以来、誰にも会わず、連絡することもできず、ここに閉じ込められているんだ!

ジェミ:え・・・?何それ?

アク:そうだ・・・今は・・・?今日は何にちなんだ?さっきまで2月18日だった・・・

ポケットからスマホを探り出して日付を確認するアク。

スマホの画面には 00:05 2019/6/21 の文字が。

アク:やった!やった!進んでいる!6月21日だ!ついに2月18日を抜け出したんだ!

アクのスマホを奪い取り日付を確認するジェミ

そして、自分のスマホを取り出して日付を確認する。それはアクの持っているスマホと同じ日付になっていた。

ジェミ:・・・うそ。うそよ!6月21日の00:05ってどういうこと?だって、私は今日の、6月21日の夕方にここに来たのよ!

アクと見つめあうジェミ

アク:今度は・・・6月21日に閉じ込められた?

頭を抱えるジェミ

アク:・・・どういうことだ?・・・いや、でも、日付は進んでいる・・・


はっと目を覚ますきいろ。さるぐつわをはめられ、手足を縛られて和室に転がされている。

きいろが目を覚ましたことに気付いたキャンがアップになってきいろをみつめている

キャン:ごめんね。手荒なことはしたくなかったんだけど。

キャンを見つめるきいろ

キャン:でもほら。きいろちゃん、言ってたでしょ?一泊させてくださいって。

目を丸くしておずおずと頷くきいろ

キャン:だから、今日は泊っていってほしいの。それだけなの。あとね。さっき、きいろちゃんが撮影しているスマホ画面のぞき見しちゃったんだけど。今日は2019年の9月22日?それであってる?

不思議そうな顔をしながらも頷くきいろ

キャン:そっか・・・2ケ月たったんだ・・・

どこか寂しそうに遠くを見つめるキャンをみて、不思議そうな顔をするきいろ

キャン:あのさ・・・

息をひそめてきいろを見つめるキャン

キャン:きいろちゃんって、ユーチューバーだって言ってたよね?

頷くきいろ

キャン:あのさ。有名なユーチューバーなの?例えば更新が途絶えちゃったりすると心配するフォロワーとかが多いみたいな?

微妙な顔をして首をかしげるきいろ

キャン:なんだ・・・。自称ユーチューバーか・・・

ちょっとむっとした顔をするきいろ

キャン:・・・あ。でも、家族とかは?一緒に住んでいる人とかいる?例えばきいろちゃんがいなくなると、大騒ぎして騒ぎ出すような?

え?・・・どういう意味だろう・・・?もしかして殺されちゃうとか?顔色がかわるきいろ

遠くを見つめるキャン

キャン:私達さ。誰も探しに来てくれないんだよね・・・だから、ここにいるっていうか・・・アクも、家族とか以外に付き合い浅かったみたいで、友達とかも探してくれてないみたいだし、私とかジェミなんか、友達どころか家族とも無縁だし・・・なんか、このまま閉じ込められて消えちゃっても・・・誰も気づかないみたいな・・・?

じっとキャンを見つめるきいろ

キャン:私達、ここから出られなくて、このままここで生活していてもなんか、別に誰にも気づかれないみたいな・・・そんな感じなんだよね・・・

キャンを見つめるきいろ

きいろを振り返るキャン

キャン:・・・なんか、でも。きいろちゃんは違うような気がする。もしきいろちゃんがいなくなったら、誰かに気付かれて、そして必死にきいろちゃんを探しに来てくれる人がいるような・・・そんな気がする・・・

キャンを見つめるきいろ。

キャン:今ね。アクもジェミもいないの。きいろちゃんが来たことでもしかしたら、何かが変わったかもしれないと思って、それを調べに出かけたの。きいろちゃんが逃げ出さないように見張っとけってことでね。私だけ残ったんだけど。

うんうんと、頷くきいろ。

きいろを見つめるキャン

キャン:うーん。喋るだけならいいか・・・

きいろのさるぐつわを外すキャン

プファーと、息を吐くきいろ

きいろ:何かが変わったとか、ここに閉じ込められてるってどういうこと?

キャン:あはは・・・さすがユーチューバー。身の危険より好奇心の方が優先するって感じ?

きいろ:身の危険?

キャン:あはは・・・大丈夫・・・別に危害は加えないよ。きいろちゃんの望み通り、今日一日泊っていってほしいだけだから。
・・・ただ・・・今日一日泊ったとして明日が来るかどうかは分からないんだけど・・・

きいろ:え?何?どういうこと?

キャン:だって、今日は9月22日なんでしょ?おとめ座は今日まで、明日からはてんびん座になる。おとめ座がきいろちゃんを気に入ったら、永遠にてんびん座は来ない。きいろちゃんはヴァルゴになるってことね。

きいろ:え?何それ?どいうこと?

キャン:気付いていたでしょ?この家が星座の神に支配されていて、今この家はかに座が支配しているけど、きいろちゃんが新しく入って来たから星座が動くの、おとめ座の時代に入るのよ。

きいろ:え?

キャン:私たちは星座の神様が放してくれるまで、この家から離れなれない。だから私は新しいかに座を待っているの。そのためには星座を進めなくてはならないのよ。

きいろ:・・・分からない・・・

キャン:すぐにわかるわ。明日になればね。明日になれば、きいろちゃんもこの家から出られなくなる。

きいろ:まさか・・・だって・・・そうよ、だって他の二人は外にいるんでしょ?

キャン:どんなに逃げても何故か戻ってきてしまうの。・・・そうね・・・明日になればきいろちゃんの縄をほどいてを自由にしてもいいの。どうせ、この家に戻ってきてしまうから・・・

きいろ:・・・えっと・・・明日になれば・・・って言いましたよね?今日なら?今日なら大丈夫?

キャン:・・・そうね・・・もしかしたら・・・多分・・・

きいろ:・・・あの・・・それなら・・・今日は泊めてもらわなくても大丈夫なので・・・この縄をほどいてもらうとかどうでしょう?いえ、もちろん、もしご要望がございましたら警察に通報するとか、いろいろ協力できることもあるかな・・・なんて・・・ははは・・・

きいろをじっと見つめるキャン


じっと見つめあう二人をアップでとらえているRECの文字(きいろが縛られている和室の状況も上方のカメラから録画されている)

・・・続く

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