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Green Bookの争点

3ヵ月連続投稿チャレンジ29日目。
うちの小さかったこぞー(息子です)が16歳になりました。
なんか感慨ぶかいなぁ。私もトシ取るわけだよ。

さて。昨日は家族で映画の日になりました。
うちではオットが映画好きっていうのと、
アメリカでは映画が安い
(特にマチネ=早い時間の上映だと一人$6〜$8だから)ので、
教会とか行かない我が家は
日曜なんかにそろって見に行くことがよくあります。

見に行ったのはアカデミー賞で作品賞など3部門受賞したグリーンブック。
Wikiに出てるあらすじをお借りします。

舞台はジム・クロウ法の真っただ中、ニューヨークのナイトクラブで用心棒をしているトニー・“リップ”・バレロンガ(英語版)は、アメリカのディープサウスでのツアー中に有名な黒人のピアニストドン・シャーリー(英語版)の運転手の仕事を受ける。保守的な家庭で育ったトニーは黒人の運転手を務めることに抵抗を感じたが、有名なピアニストでありながら各地でひどい扱いを受けるドンの姿を見て考えが変わり始める。

ちなみに、ジム・クロウ法というのをコトバンクで簡潔に説明してくれているので、興味ある方はこちらを。

一度上映終わってたんですけど、こういう大きな賞をとると
アメリカではしばらく再上映が続きます。
ので、見逃したのを見に行ったというわけでした。

コメディに分類されてますが(そして実際、結構笑えました)
根底にあるのはアメリカではいまだに大きな問題になる差別のこと。
一応、ストーリーは50年ほど前ってことになってますが
以前ほどではないにせよ まだ厳然とあるんです。
まるでこのお話のDr. シャーリー(PhD博士号を取ってるからかな)のように
尊敬を勝ち得るお仕事をされながら無言で戦っている方たちと
ボランティアの仕事でよくご一緒させて頂きます。
dignity(尊厳・気品)で戦う、それをあちらこちらで見ます。

アカデミー賞を取った後に かなりの酷評や文句も出たらしいですね。
その反発意見の理由が「ステレオタイプだから」・・・うーん、
私は 妥当だし 今だからこそ、だよなって思いましたが。

ステレオタイプ、とはブリタニカに拠りますと

本来は同じ鋳型から打出された多数のプレート (ステロ版) の意味であるが,社会学や政治学の用語としては,一定の社会的現象について,ある集団内で共通に受入れられている単純化された固定的な概念やイメージを表わすものとして用いられる。通常それは好悪とか善悪の感情を伴った「できあい」の概念,あるいは「紋切り型」の態度というふうに訳される。ステレオタイプは,複雑な事象を簡単に説明するには役立つが,多くの場合,極度の単純化や歪曲化の危険を伴い,偏見や差別に連なることになる。特に支配者が社会統制の手段としてそれを意識的に操作する場合には,ナチスのユダヤ人に対する迫害運動,アメリカの「赤狩り」のような,大きな社会的弊害を引起す。

ですが、うーむ、なんかこの場合の批判(ハリウッドではこういうストーリーがウケる、みたいな)はこじつけに感じるけどなぁ。
白人が差別救済のヒーローになる、って言ってもさぁ、
実際こうやって考え方を変えていく人が出てきたからこその
差別が減ってきた現在なのだから。

私はアメリカで「人権擁護活動家」のはしくれなので、
これらの差別っていつもremind(思い出させることを)しないと
じわじわとまた現れてくるのをよく見ますし
それらは手のつけようがなくなる前にちゃんとアピールしないと
良いように「忘れ去られた過去のこと」にされてしまう、という
悲しいけれど現実のこと、を見聞きしてます。

同じ話をくりかえしやがって、という人には
残念ながら「差別という感情は動物がもつ原初の本能」という
なんとも難しい部分があることすら気付こうとしてない方が結構いて
だからほんと、難しいのですけれど。
日系人の歴史を 一部の活動家(白人も結構います)が
忘れ去られぬように語り継ぐ一方で
もうウンザリなんだよ、あんた達の被害者意識は、という視線を、
時には直接的な言葉で 投げかける人達もいるのです。

アメリカの映画には人種差別を題材にしたものって結構あって、
どれも秀逸であったりします。
まぁ、文句のつけ方は色々でしょうけれど
動かせない事実は 私達だれでも差別側に回りうるということ
そして 差別していることを本人は直視しないものだということ
誰が何といおうと「差別だ」と感じるひとがいる限り
差別なんてなくなった、とは言えないのだということです。

文句を言う人達がいたとしても
こういう世界的に有名な大きな賞を こういった作品に与えるって
このアメリカという国の成長をみる部分だよね って思います。

アカデミー男優賞を取った ボヘミアン・ラプソディでも 
実は裏テーマ?と私は思ってたけど
あれもパキスタンという国からイギリスに来た家族のことが
うしろに大きく影響していたお話でもありました。
(パキスタンとインドの関係性、インドとイギリスの関係性を知れば
主人公の、彼の家族の苦悩はさらに深く分かるかと)

で、Green Bookという題名になったモノ
黒人が頑張って中流階級にあがってきた頃
「黒人が車で旅行するとき安心して泊まれる宿」を集めた本でした。
実際、そういう本が有名になるほどの
ひどい差別にくるしんでいたひとたちがいる、ってことですね。

国境や文化の境目が曖昧になりつつある昨今
一部で他民族・他文化排斥という傾向がでてきています。
日本人の私でも アメリカのド田舎に行ったときに
身の危険を空気に感じることが無いわけではないのです。
でも それらを起こすのは「無知」、相手を知らないから、が理由であって
何かをきっかけにお互いを知り始めると
自分のもっていた恐怖感は幻想だったと
白人だろうが有色人種だろうが関係無くおこるもんです。

もうすぐアメリカで公開になる映画、The Best of Enemiesは
「Green Book」の二人よりも さらに より対極にいる2人、
黒人のシングルマザーとKKK(白人至上主義団体)の有力者が
対立しながらいろんなことをお互い学んで行く映画のようです。
ちょっと楽しみにしてます。
これもノンフィクション(実話に基づく話)らしいしね。

そうそう、話をGreen Bookに戻せば
白人の救世主はなにも主人公のトニーに限ってなんかいなくて
私は物語の最後の頃にでてくる警官もでしょ?と思ったんだよね
あれは地域的なことももちろんあっただろうけれど
短いながらもの凄くheart warming(こころがあったかくなること)で
ああ、この先のアメリカはちゃんと良い方向へ変わっていける、というのを
しっかり期待させてくれる、希望の光みたいな逸話でした。

チャンスがあったら、この映画みてね、
すでに書いたけど 結構笑えるし。

・・・個人的にはこのTony役の「おなかの出た」イタリア人役が
ロード・オブ・ザ・リングス(指輪物語)の「アラルゴン」をやった
ヴィゴ・モーテンセンだった!!!という衝撃が
実は一番・・・ショックだったんだけどね 大笑

だって この「アラルゴン」が!!!

・・・・OMG・・・・

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