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常識はいずこ

もう何年も前のことになります。

一言で言えば、「正体見たり」というような経験をしたことがあります。

たぶん、どんな人でも一度は同じような経験をしたことがあるのではないでしょうか。

自分が恐れていたものが、実は恐るるに足りないものだったことを知り、心の呪縛から解放された、という話です。

「私こそ常識よ」

と胸をはって他人に言えるくらい、常識的に生きることを美徳としている女性がいました。

「常識的に生きることこそ幸せなのだから、波風を立てず、まわりと足並みを揃えていればいいの」

彼女の日頃の言動と行動からは、そんな姿勢が感じられました。

私は以前、地域のコミュニティには参加しない、というスタンスをとっていました。

子供もいないし、まだ若かったので、必要性を感じていなかったのです。

しかし、彼女の目には、「地域に密着した仕事をしているのだからコミュニティには参加すべき」と映っていたようでした。

そんな彼女からお叱りを受け、納得こそできなかったものの、そうかもしれないと思うところもありました。

結局、年長者の圧には逆らえず、「とりあえずやってみるか」と飛び込んでみたのでした。

私の場合

実際に地域のコミュニティに飛び込んでみたら、地域の方と顔見知りになれたり、知らずに恩恵を受けていることを知れたり、地域の行事が意外に楽しかったりと、私が想像していたよりも学べたことがたくさんありました。

自分の生活に時間を使いたいのはみんな同じです。

でも、ある程度の秩序を維持しようという、誰かの影の努力がなければ、成り立たないものというのはやっぱりあるのです。

地域の街灯だったり、公園だったり、ゴミ捨て場だったり。

人と人とが緩やかに繋がっていることで、その地域の治安が維持されているということもあります。

色々な人が集まれば、揉めごともそれなりに起こるわけですが、うまく協力し合えると、できることってこんなにあるんだなと知れたことは、私にとっては収穫でした。

きっかけとしては、彼女の意見を押しつけられてイヤだったけど、やってみて良かった。

それが、彼女に半ば「やらされた」私が得たものでした。

彼女の場合

ちょうど同じタイミングで、彼女も、地域のコミュニティに参加していました。

そこで私が見た彼女の姿は、「あれ?」という意外なものでした。

彼女にとって私は、知らない人ばかりの中にいる唯一の知人であったため、何かというとそばにくっついてくるのです。

そんな時に彼女が私に話すことといえば、地域の活動やまわりの人に対しての不満や愚痴ばかり。

こんなとこで時間使ってないでみんな早く家に帰ればいいのにね、もっと他にお金の使い方あるよね、私こんなことやってる時間ないのに、などなど。

あれ?

働く人たちを目の前にして、働きもしないうちから不満や愚痴を言う気にはなれなかった私は、自分の気持ちを優先して、彼女のことは放っておいて、目の前のやるべきことに協力するという行動をとりました。

後日、私のその行動について、彼女が「moimoiちゃんは私のことが嫌いだから、私を無視してわざと別行動をとった」と言っていたと、別の人から注意を受けました。

あれれ?

女子中学生のようなことを言う。

「私こそ常識よ」と言っていた彼女はどこへ?

私は混乱しました。

彼女の中身

「常識的な年長者」の姿をした彼女の中身は、「女子中学生」でした。

目からウロコが落ちた私には、彼女はもう、以前の彼女には見えませんでした。

彼女の言動と行動を観察すればするほど、まわりと足並みを揃えることを嫌悪しているように見えました。

それほど嫌悪するコミュニティに、なぜ参加するのか。

「何かあったときに助けてもらえないかもしれないから」

と、ある時彼女は言いました。

「うちの仕事は地域に密着してるわけじゃないから、来年から参加するのやめようかな」

とも言いました。

あ、そうか。

彼女にとっての「常識」は、自分を守るための盾であり、他人を動かすための武器なんだ。

言葉に惑わされることなかれ

「常識」と言われると、どんなに偏ったものでも、なんだか途端に強制力を持つような気がします。

でも、使う人によって「常識」の概念はこんなにも違うのか、と実感してから、これほど曖昧なものはない、と思うようになりました。

アインシュタインの名言に、こんなものがあるそうです。

「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションでしかない」

どうりで。

彼女の言う「常識」は、私には結局、さっぱり理解できませんでした。

彼女には、よくわからないことでさんざん振り回されましたが、おかげで人を見る目が養われ、生きていくうえで役にたつ教訓を得ました。

人を見るときは、言動に惑わされず、行動と結果を見るべし。

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