男性がフェミニストになり得るための、いくつかの要素とは?(個人的考察)

先日のnoteでは、僕がフェミニストを称するに至るまでの時系列について執筆しました。
今回は、具体的に「男性がフェミニストになり得るために必要な要素について」について解説します。

はじめに

時系列編では、経験を通じて僕の考えが変わっていく過程を述べました。
しかし、同じような経験をしても、男性の誰もが僕のように女性の生きづらさについて考えるようになるわけではないと思っています。

いくつかの要素があって、生きづらさを理解し、自分事として捉え、フェミニストになる。
僕はそう考えています。

それでは、その「いくつかの要素」とは何でしょうか。
過去を振り返りつつ、個人的に考察してみました。

要素1:反ホモソーシャル

これが最も大きな要素といえます。

まず、ホモソーシャルの定義について明確化していきます。
ここでの「ホモソーシャル」とは、家父長制をバックグラウンドとした男性優位型社会構造のことを指します。これには、権威主義やミソジニー、体育会系文化、マッチョイズムなどが内包されます。

そしてこのホモソーシャルに基づく価値観(以下、「ホモソ的価値観」とします)は、さまざまな形態で現代社会に深く広く浸透しています。
それゆえ、以前よりは弱まったものの、依然として事実上の「社会における共通認識(コモンセンス)であり続けています。

具体例としては、「男は強く、リードする存在でなければならない」「男は精一杯働き、女は専ら家事に従事すべき」「上下関係は絶対である」などが挙げられます。
競争を是とし、それに基づく優劣が価値を決めることから、資本主義との親和性も高いように思われます。

教育の場においても、(かつてに比べると緩和されたと言われていますが)ホモソ的価値観に基づく教育が行われているように感じます。
このようにして、ホモソ的価値観は受け継がれています。

ホモソ的価値観の何が問題かというと、「適性を無視して、肩書きや性別などで画一的なカテゴリに当てはめる」ことにあります。
たとえば、先程記載した「男は精一杯働き、女は専ら家事に従事すべき」がそれです。
本来ならば、先天的に「男性は仕事向き」「女性は家事向き」などないはずなのです。
ただ、これらは幼少期から巧みに刷り込まれることによって、いつの間にか自分の意思と一体化してしまうように思います。

そしてそれによって、人々が悩んだり、「自分は社会不適合者だ」という認識を得たり、最悪自殺したりしていく。
こういった構図が現に起こっているように思います。

僕が反ホモソーシャルに至った経緯については長くなるので別記事で解説しますが、ホモソーシャルによる不利益を長年に渡り被ってきたこと、ならびに個々の事例を知り、事例ごとに背景を探って本質を探るにつれて「ホモソーシャルこそが女性も男性も生きづらくする諸悪の根源である」ことに気づいたことがきっかけです。

逆に、ホモソ的価値観に違和感を覚えることなく支持していれば、女性の生きづらさに視点が及ぶことはそうそうないように思われます。

要素2:共感性

男性がフェミニストになるためには反ホモソーシャルであるのみでは不十分で、「女性の境遇について自分のことかのように共感し、理解する」というフェーズが必須であると、自分の経験から考えられます。

たとえば、妊娠した女子専門学生が相手男性と音信不通になったために中絶の同意が得られず、中絶可能期間を超過してやむなく出産し、保護責任者遺棄致死罪で逮捕されたケースにおいては、凄まじいむごさと、僕自身まで涙が出るほどの悲痛さ、無念さを感じるとともに、弱い立場に置かれる女性のみが一方的に刑罰を受け、男性は罪に問うことすらできず、名前すらわからない現実に行き場のない憤りを覚えました。

逆に共感性がなければ、「合意だったから男性側が罪に問われるのはおかしい。専ら女性側が悪い」などの冷酷な反応をしやすい傾向があるように思います。
なぜなら、感情が動かず、問題として認識しづらいこと、そして個々の事例について自分事として置き換えて想起しづらいと思われるためです。

ただ、これには「抽象化思考力」も必要だと考えられます。

要素3:抽象化思考力(構造のメタ認知)

簡単に言うと、それぞれの具体的事例から権力構造や社会構造などを読み解き、一般化する思考力です。
女性が社会構造上弱い立場に置かれていることを認識するうえでも、重要な要素といえます。

これを養うためには、「なぜなぜ分析」が有効です(こちらのサイトに詳しく記載されているので、ご参考ください)。

たとえば、「なぜ女性は結婚相手となる男性に収入を求める傾向が強いのか?」という命題があるとします。
例としては、

「なぜ女性は結婚相手となる男性に収入を求める傾向が強いのか?」
・女性特有のライフイベントに伴う収入減・退職や賃金格差、雇用格差を考慮すると相手の収入が必要なため

「なぜ女性特有のライフイベントに伴う収入減・退職や賃金格差、雇用格差が生じるのか?」
・男性が会社で働き、女性は家庭を守るという伝統的性別分業意識に基づいて雇用慣行が設計されているから

「なぜ伝統的性別分業意識に基づいて雇用慣行が設計されているのか?」
・社会的な共通認識となっているうえ、労務上の管理がしやすいから

といった具合です。
ここで重要なのは、サイトにもありますが「属人的な理由に回帰しない」ことです。

先ほどの命題でいうと、

「なぜ女性は結婚相手となる男性に収入を求める傾向が強いのか?」
・女性にとって相手男性の年収がステータスになるから

このようになっては、根本的な問題点が見えなくなります。
目的は「仕組み上の根本的な問題点を洗い出す」ことにあるためです。

そして、このような「なぜなぜ分析」を異なるテーマの事柄でも意識的に行う習慣をつけていくと、それぞれに共通する構造がうっすら見えていきます。
さらに続けていくと、一見無関係に見える事柄が、実は繋がっていることに気づきます。

たとえば「選択的夫婦別姓の反対派」「森友・加計学園問題の安倍派」「校則緩和反対派」は論旨の構造が同一であることがわかります。
どこが同一なのかというと、「社会構造的強者の都合を優先する」点です。

そして、この「社会構造的強者の都合を優先する」事例は、現在の与党や、中年以上で社会的地位が一定以上の男性に多いことがわかります。

ここまで構造を横断的に把握できるようになると、本質的な問題は「社会構造的強者たる、ロールモデルに従順な男性の地位を高くし、優先させ、逆にそれ以外の者が不利になる構造的特徴を持つ、ホモソーシャル」であると考えることができます(あくまでも僕なりの考察です)。

まとめ

男性がフェミニストになりうるには、以上の3つの要素

・反ホモソーシャル
・共感性
・抽象的思考力(構造のメタ認知)

を兼ね備えていることが前提にあるように思います。

構造としては「抽象的思考力」が大前提で、そこに「共感性」が加わることで女性の生きづらさについて当事者意識を持ちやすくなり、それが結果として「反ホモソーシャル」に結びつくものと思われます(少なくとも僕の場合は)。

次回は、本編として僕がなぜフェミニストになったのかの本質部分に迫りたいと思います。

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