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フィンランドの図書館と居場所づくり


そこには文字どおりの老若男女がいました

ヘルシンキにある中央図書館「oodi」を見学しての萩原健太郎さんの感想である。先日、松屋銀座でデザインジャーナリストの萩原健太郎さんがフィンランドの話をするというので聞きに行ってきた。冒頭の台詞は、そこで萩原さんが口にしたもの。

フィンランドの図書館というと、僕らのよく知っている図書館とはその印象が若干異なる。図書館の機能を兼ねた公共スペースといった感じだろうか。だから、かならずしも本を借りる目的がなくとも人はそこを訪れる。そのなかには、赤ちゃんを連れたお母さんもいれば新聞を眺める老人もいるといった按配。

日本の場合、子どものための場所、若者の場所、また老人のための場所といったようにあらかじめ対象や目的ごとに仕分けされた施設は用意されているが、では、老若男女がいっしょに過ごせるような施設となると即座には思いつかない。

初めてフィンランドを訪れたとき、カフェで老若男女が“ふつうに”くつろいでいる光景と出会い新鮮な驚きをおぼえた(moiをつくった原点はその驚きにある)。当時、日本にもカフェはいろいろあったけれど、たいがいは若者のための空間といった印象だったから。

もちろん日本でも、老若男女が過ごせる空間をつくろうという動きやそう考えている人はたくさんいるだろう。だが、なかなか実現しないのはそれが実際とてもむずかしいからである。

そういうむずかしさを克服するのに、ひとつの成功例としてフィンランドの“図書館”の研究をするのはとても役立つのではないか。萩原さんの話を聞きながら、そんなことを考えていた。

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