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街角クラブ〜ミナスサウンド ⑭ Antonio Loureiro&Rafael Martini x長谷川白紙@WWWX


今年はライブに行くのを控えようと思っていたのだけれど、ツイッターでハファエル・マルチニとアントニオ・ロウレイロのライブ告知が目に入り、当然これは行かねばと思い発売日にチケットをゲット。
ロウレイロはSóの頃とカイピバンド(ドラマー)で観ているのだけれど、マルチニのライブは未見だったのがずっと気掛かりだったので発売日に即購入。(マルチニは17年にアレシャンドリ・アンドレスと共に来日)。
ライブを観てなによりも良かったのが、ふたりの歌を中心に組まれていて、息の合うニ声のボーカルも、単独の歌声を堪能出来たのが嬉しかった。勿論凄まじく高い二人のプレイアビリティもライブの真骨頂ではあるのだけれど、曲の中心に歌を添えていた所に彼ららしさが存分に出ていた。曲はハファエル・マルチニのMotivoとSuite Orinicaを中心に(Suite Orinicaの独唱はラージアンサンブルだったアルバムの装飾部分を除いた演奏)、ロウレイロの曲も交えたものだった。
演奏はとにかくパワフルで、ロウレイロはサイドマンだったカイピバンドよりも力の入ったプレイで、キックとシンベが合わさったキメはそれだけで心ざわめくものがあった。力強くフロアタムを叩いていたり、ECMや現代ジャズドラマーがよくやる金物をスティックの腹の部分で撫でる演奏など細かいプレイや、トリガーを使ってPCの音源を鳴らしていたりとモダンな演奏が全編で奏でられていた。マルチプレイヤーらしい、キーボードでのリードやベースラインの演奏までこなしていて、次元の違うプレイアビリティの高さを発揮していた。
方やマルチニはピアノとシンベをメインにしながら、表情豊かなジャズとクラシックを股にかけるプレイに舌を巻いた。アンコールでの長谷川白紙との共演では70年代のSSWのようなバッキングに徹していたが、長谷川とマルチニのボイシングの違いがはっきりと明確に露わになった瞬間だった。マルチニのピアノプレイは、左手のジャズ的ボイシングと、右手のクラシック的なメロディラインとアッパーストラクチャーやブラジルらしいテンション感の融合を成し得ているのだなと強く感じた。
そんなジャズらしい即興をベースにしながらも、コンポーズと歌をメインに添えている所にブラジル音楽の魅力があるのだなとつくづく思い知らされた。
ふたりともMacBookを傍らに置いていて、ロウレイロの画面は確認できなかったが、マルチニはAbletonのLiveが立ち上がっていて、シーケンスを走らせていた。ふた昔前だとブラジルのミュージシャンはあまり打ち込みとの同期を使う場面は無かったが(ドメニコがMPC1000をリアルタイムで叩いていたくらい)、高いプレイアビリティがありながらもシーケンスなど打ち込みを多用している辺りに時代の変化を感じさせる。
柳樂さんのマルチニのインタビューにもある通り、アルヴァ・ノトや池田亮司をフェイバリットに挙げていてエレクトロニカへの影響は、新作アルバムでも取り込まれていたのは音から感じ取ってはいたものの、正直なところ驚きもあった。

エレクトロニクスの部分では、それまでのブラジル音楽ではあまり感じられなかったので、エレクトロニカやポストクラシカルからの影響は今の音楽シーンから考えれば至極当然な流れなのかも。

思っていた以上に今の世界的な音楽と通じる部分をちゃんと咀嚼して、自分たちなりに表現しているのがミナスにら限らないブラジルの音楽シーン(一部の先進的な人たち)なのかともつくづく思わされた。
長谷川白紙氏の楽しそうな姿も中々ぐっとくるものがあったけれど、彼のライブは音が飽和していたり、腰高なキックとブーミーな低音処理に正直それじゃ踊れないよ!と思ってしまったので、その辺りを改善してもらえればと思う。こちとらクラブ世代で、かつベルリンのトレゾーのハードハウスの馬鹿みたいな音圧を経験してるので、デカい音でキックが鳴っていたり、トリートメントされてないベースでは踊るわけじゃないぞと記しておきたい。でも嬉しそうな感じは見ていて良かったね!と素直に思った次第。長谷川白紙がんばれ!

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