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【映画】レッド・ロケット Red Rocket/ショーン・ベイカー


タイトル:レッド・ロケット Red Rocket
監督:ショーン・ベイカー

タイトルが意味する所はレッドネックのロケットというしょうもないタイトルが、まあ監督らしい感じなのだけど、この元ポルノ男優の役柄がどうも憎めない。やってる事も、考えている事も(まあ何も考えてないだろうけど)人として最低なのに、拒絶するべきキャラクターかというとそうでも無い。別居していた妻の実家に転がりこんで、ポルノ男優という経歴から職に就けずハッパの売人で食い扶持を繋ぐ逞しさ。劇中乗り回す自転車は大人としてこれほどかっこ悪い事はないのに、爽快感がある。十代の子供みたいな無邪気さ、自由さが溢れている。自転車のバックに映る川崎みたいな工業地帯の夜の灯りや、テキサスの日差しなど荒涼としながらもどこか美しさを感じさせる。
元ポルノ女優の妻とのセックスに至る描写がユーモラスで、誘い文句もセックス中もポルノそのままな台詞で笑える。素にかえると心の内が出てきて、この夫婦にとってのセックスがふたりのいびつな関係を如実に表していて面白い。
ドーナツショップで働く高校生を捕まえて、ポルノ業界へ誘おうとするのだけど、どれもこれもポリコレ的なアウトな事ばかり。仕舞いにはジェットコースターに乗る最中に、ポルノ男優である事がバレる所の表情など、とにかく描き方が上手い。2016年のアメリカ大統領選の最中という事もあって、ポリコレが世の中を左右していた時期だけに、こういった人物を描いたショーン・ベイカーの視点はユニーク。「フロリダプロジェクト」でも貧困から体を売る女性を描いていたけれど、社会から取り残された人たちを掬い上げる所は、ギリギリだけど魅力的でもある。道徳観や倫理観から無きものにされがちな人々を可視化していて、実の所世の中のマジョリティはこちらなのではと思う。
二時間越えの作品なのだけど、テンポも良く特に後半に起こる程よい緊張感が飽きさせない。映画の構成は「フロリダ・プロジェクト」とそう違いはないのだけど、どちらも切迫感はありながらこちらはスコーンと抜けた明るさがある。
ラストの主人公が逆襲される様は、笑っちゃうほど小気味良い。まあそうなるよな。
配給が打ち出してないのが不思議だけど、これアメリカの配給はA24。なんか勿体無い感じ。

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