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【映画】プアン/友達と呼ばせて วันสุดท้าย..ก่อนบายเธอ/バズ・プーンピリヤ

タイトル:プアン/友達と呼ばせて วันสุดท้าย..ก่อนบายเธอ 2021年
監督:バズ・プーンピリヤ

「バッドジーニアス」のバス・プーンピリヤ監督の新作かつ、ウォン・カーウァイがプロデュースという事で否が応でも期待が膨らんでくる。
予告にある様に前半と後半で構成が分かれていて、前半部分は淡々と描かれているものの、後半部分の雰囲気はかなり堪らないものがあった。「バッドジーニアス」の監督なだけあって映画の造りはトリッキーで、ミステリーさながらに主人公ふたりの過去が徐々に明らかになっていく。
ふたりの主人公のうちのひとりであるボスが、プリムとの出会いから息苦しいタイの生活を離れてニューヨークへ行く後半の物語のドラスティックな関係と街の雰囲気は心をざわつかせる。「初めて」の関係をカクテルを通してやりとりする会話のロマンティックさは、心にじんわりと染み入るセリフだったりと、一見ちゃらそうなボスの一途な過去と、その後の自暴自棄になる粗暴さが明らかになるにつれて物語が変化していく様に心を打たれた。
しかし一方でもうひとりの主人公であり、物語をかき乱したウードの出自が全く描かれず、彼がなぜニューヨークに来たのか、前半の元カノ巡礼の旅を行ったのかイマイチ整合性が取れない部分もあって片手落ちな所でもあった。前半部分は一体なんだったんだ?と思ってしまう弱さがどうしても否めない。
とはいえ、ボスの物語としてだけで見ると個人的にはかなり好みだったので、その部分だけにもっとフィーチャーしても良さそうだったのだけれど、ケレン味あふれる映画のトリッキーさの方を優先させたのかなとも感じてしまった。
良いか悪いかはひとまず置いていて、ニューヨークのシーンの夢見心地な雰囲気はウォン・カーウァイの「マイ・ブルーベリー・ナイツ」が好きな人も嫌いな人(どちらかといえば消化不良)も観てほしい部分ではある。
ポストウォンカーウァイ世代の映画としては、間違いなく一番近いと思うし、これからの作品がどうなっていくのか楽しみな監督だと感じている。
音楽の使い方も巧みだし、DJだったウードの父の描き方やシーンとの合わせ方もかなり良かったので、この辺りもウォン・カーウァイマナーとしても申し分ない。

後ギャガらしい邦題の付け方はどうにかならんもんかね。ライト層を狙っているのは分かるけど、これだけで本当のコア層が離れてしまってる様にも思えるのだけど。普通にプアンでいいんでないの?

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