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【映画】デビルクイーン A Rainha Diaba/アントニオ・カルロス・ダ・フォントウラ


タイトル:デビルクイーン A Rainha Diaba 1973年
監督:アントニオ・カルロス・ダ・フォントウラ

キャンプ映画といえばそうなのかもしれないが、フレンチカルチャーからの影響の強いブラジルにあって(ある時期まではリアルタイムで相互関係にあった)ヌーヴェルヴァーグからアメリカンニューシネマの延長線上にある映画なのは間違いない。自滅的な展開と、悦楽的なキャンプ感は70年代アメリカの空気とリンクする。しかしキャンプカルチャーの代名詞ともいえる「ロッキーホラーショー」はこの映画の翌年公開で、比較されたファスビンダーの作品については個人的に74年以前ではあやつり糸の世界しか観ていないのだけど、「自由の代償」や「13回の新月のある年に」はこれよりも後の作品であった。キャンプとクイアという点では1970年のラス・メイヤーの「ワイルド・パーティ」のZマンや、1972年のジョン・ウォーターズの「ピンクフラミンゴ」辺りが先んじてはいる。ただその辺りの映画か、軍事独裁政権下のブラジルに入ってきていたかというと、恐らく入ってきてはいないだろう。ブラジル国外でそれらの映画に触れた可能性はあるものの、それよりもナチュラルにブラジル国内のゲイカルチャーからストレートに影響されたものと捉えた方が自然な気もする。そう考えると同時代的なシンクロニシティとしてはかなり早い表現とも言える。
映画の詳細はパンフレットに詳しいので、是非ともそちらを読んで欲しいが、なによりも軍事政権下の影響が強く一歩間違えばナショナリズムに傾倒しそうな状況で、シネマノーヴォが台頭した時代の最中である事と、ゲイカルチャーが政権にとっては取るに足らないものとしてスルーされた経緯は面白い。
音楽の面でもモット・ザ・フープル、チャック・ベリー、キャロル・キング、ハリー・ベラフォンテ、ミリアム・マケバ、ジェイムス・ブラウン、エルヴィス・プレスリー(ポスターのみ)など欧米チャート主体のものと、ジャレス・マカレーやホベルト・カルロス、ガル・コスタ(Indiaの頃のポスター)、ヴァンダルレアなどリアルタイムのものがメインに添えられている。ブラジル音楽ファンとしてはイザ役で監督の元妻かつエレンコでヴィニシウス・ヂ・モラエスとも共演していたオデッチ・ララの存在だろう。しかも劇中で歌われるのはジョアン・ジルベルトもカバーした「Una mujer」という演出もにくい。監督の音楽への造のが深さを感じさせる。


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