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【映画】メリーゴーランド Merry-Go-Round/ジャック・リヴェット


タイトル:メリーゴーランド Merry-Go-Round 1981年
監督:ジャック・リヴェット

本作「メリーゴーランド」は四部作になる予定だった「デュエル」と「ノロワ」に続く二作の制作が頓挫した後に作られた作品で、クライムミステリーさながらの謎解きの物語が主軸になりつつも、並行して森の中や砂丘を主人公二人がお互いを追いかけまわす強迫観念を描いたものが交互に描かれる。
しかしながら見ているとひとつ大きな違和感を感じる。違和感の原因は森や砂丘のシーンで追い追われる女性がもうひとつの物語とは別人で、一体どういった繋がりがあるシーンなんだと頭の中で”?”が残り続ける。謎解きの話のその先のようにも見えるのだけれど、繋がる事のないふたりが逃げ惑うシーンは互いを追い詰めながら、悪夢のような場面でもある(砂丘の砂に雪崩れ込む様子は「砂の女」のようでもある)
なぜこんな表現になったかというと、どうやら主役のマリア・シュナイダーは撮影中、体調を崩していてほとんど寝込みながらの状態で挑んでいたらしく途中降板。森と砂丘のシーンはシュナイダーから「デュエル」にも出演していたエルミヌ・カラゲウズに交代したという流れだった。レオというキャラクターをデニムの服装や似たような髪型の別人が演じる事で、観客は違和感と共に混乱させられるが、それは意図して混乱を招いたというのではなく、演者交代の結果シュールな状態になってしまったのが実情であった。結果的にリヴェットらしい謎を呼ぶ不条理な展開に、否応なしに引き込まれるのはそれはそれで面白い。
不思議な映画ではあるのだけれど、「デュエル」や「ノロワ」と同じように音楽の扱い方も面白い。脈絡なく登場するバスクラリネットとウッドベースのデュオによる演奏を観て「ジョン・サーマンみたいな人がECMみたいな音楽を奏でているな」と思っていたら、まさにジョン・サーマンその人で、ウッドベースのバール・フィリップス共々ECMでアルバムをリリースしていた二人だったのはちょっと驚いた。

リヴェット曰く、自ら失敗作だと烙印を押され、当時劇場公開もままならなかったと言われているが、決してつまらないというわけでもない。映像は素晴らしいし、奇妙な立て付けの物語としても「デュエル」や「ノロワ」の延長として観ると充分に楽しめると思う。

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