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2020年5月の記事一覧
聖なる鹿殺し The killing of a sacred deer/ヨルゴス・ランティモス
タイトル:聖なる鹿殺し The killing of a sacred deer 2017年
監督:ヨルゴス・ランティモス
ランティモスの映画はとにかく痛い。肉体の痛みもあれば精神的な心の痛みもある。「籠の中の乙女」も「ロブスター」も鏡越しに自らを痛みつけるのだけれど、どちらも痛みの先に彼ら彼女らが望む、ある種の幸福が用意されている(と思っている)。
ただ観ていて感じるのは、どうも痛みや快楽
ふたりのベロニカ La Double Vie de Véronique/クシシュトフ・キェシロフスキ
タイトル:ふたりのベロニカ La Double Vie de Véronique 1991年
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
イレーヌ・ジャコブが放つふたりの魅力
トリコロール赤の愛でも主演だったイレーヌ・ジャコブの魅力は、やはりこちらの方が余す事なく感じられる。細かな表情だけでなく、セックスシーンがありながらもそれ以外のシーンの方がどころとなくエロチシズムを感じさせる。恐らくポーラン
心と体と Testről és lélekről/イルディコー・エニェディ
タイトル:心と体と Testről és lélekről 2017年
監督:イルディコー・エニェディ
不思議な感覚の作品だった。歳の離れた男女ふたりが見る同じ夢をテーマに、抱えた孤独の輪郭を丁寧に縁取っている。
前半マーリアというキャラクターの非人間的な行動や仕草がやたらと無機質な形で描かれていて、杓子定規な様は冷淡な印象を持つ。しかし、途中に出てくるプレイモービルを使ったシーンを見る事
タクシー運転手とペパーミントキャンディ/光州事件を巡るドラマ
タイトル:タクシー運転手 택시운전사 2017年
監督:チャン・フン
タイトル:ペパーミント・キャンディ 박하사탕 2000年
監督:イ・チャンドン
徴兵制度と独裁政権から民主化への波
韓国で大ヒットした「タクシー運転手」は、ソン・ガンホ演じるタクシー運転手という一市民の視点と、ドイツ人のジャーナリストのピーターが関わる事で1980年5月に起こった光州事件を描いた映画だった。映画自体は親
家族ゲーム/森田芳光
タイトル:家族ゲーム
監督:森田芳光
いやはや凄い映画だ。成績の悪い中学生と家庭教師の話という凡等なテーマを取り上げているのに、何故ここまで非凡な内容になっているのか。登場するキャラクターが見事に自己中心的で、自らの方しか向いていない。それを端的に表していたのが、夫婦の会話にあった目玉焼きの食べ方だった。家族がお互い想いやって行動していると思い込みながらも、結局のところ自分のことしか考えてい
お嬢さん 아가씨/パク・チャヌク
タイトル:お嬢さん 아가씨 2016年
監督:パク・チャヌク
冒頭の車が走るシーンから、あの和洋折衷の建物が映るシーンまでだけでただならぬ映画だという予感がよぎる。一体あの建物はなんなんだ?恐らく観た人は真っ先にそう考えると思う。あの建物はどうやら三重にある六華苑という実在するものらしい。
キャラクターだけでなく、建物や土地に語らせる映画は台詞以上に大きな存在感をもつ。それが有るだけで説得
薄氷の殺人 白日焰火/ディアオ・イーナン
タイトル:薄氷の殺人 白日焰火 2014年
監督:ディアオ・イーナン
フィルムノワールな雰囲気がありつつ、中国の映画によく見られるネオンの輝きは蠱惑的な魅力がある。殺風景な街並みの中で輝くネオンが発する赤や、黄色がかった蛍光灯の灯や、緑色の壁など色味が発するどこか如何わしい雰囲気も感じさせる。かなりドライな世界観かつ猟奇的な殺人をテーマにしつつも、ありがちなサイコドラマに陥れる事なくあくまで
浪漫三部作/鈴木清順
「花様年華」の劇中で何度もリフレインされる夢二のテーマ。その元になった鈴木清順の「夢二」では一、二回流れるだけなのであの曲をピックアップして取り上げたウォン・カーウァイの意図は何だったんだろう?
あまり深い意味は無いと思うのだけれど、同じ曲を使いながらも全くテイストの異なるニュアンスを映画にもたらす作用は中々面白い。シリアスな恋愛ものの「花様年華」に対して、竹久夢二を主人公に据えた「夢二」は