『モダンタイムス(上下)/伊坂幸太郎』 話の筋や結末より、セリフを引用したくなる小説
「魔王」の続き(50年後)が気になり、再読した。
久々に読み直してみると「面白いけど長い」と感じ、調べてみるとKindle換算で689頁。自分が出版したKindle本で一番長いものが400頁、その原稿が15万字なので25万字はあると思う。今のところ、彼の著作のなかで最長らしい。
購入済みKindleを再読したあと、Amazonで確認すると新装版に変わっていた。
中身は同じで外装が変わっただけだが、上の扉絵のように上下巻を横に並べると続絵になっている。カバーイラストは木原未沙紀さん。
内容紹介
人物紹介(ネタバレあり)
小説に出てくる名言
ネタバレを含む感想
50年後の時代感
2007〜8年に講談社の週刊漫画誌『モーニング』で連載された作品で、その頃から50年後の設定だが、ITに関しては現実になっているものも多々あり、すでに内容が時代遅れのものもある。
例えば、都心のオフィスビル内のワンフロアをあえてサーバ室にするケースは縮小傾向(だからデータセンターが満杯になりつつある)。
なので、ビルまるごとデータセンターであれば都心にもいくつかある。
感想
著者が文庫版のあとがきに書いたとおり作品の筋は『主人公たちがある大きな秘密に関わることになり、それを隠蔽する仕組みに翻弄される』である。
そのあとの解説を引用する。
『この小説にとって重要なのは「事件の真相」ではなく、「事件の真相を隠そうとする力」「その力に翻弄されること」のほうで、事件の真相については「何でも良い」のです。』
引用しておいてだが、あとがきを書いてしまうと、読書感想文としてそれ以上書くことはない(言いたいことは、上の名言で引用した)。
強いて上げるとすれば、他の伊坂幸太郎氏の作品にも出てくる『能力者』が、話が詰まったところで超能力を発揮して窮地を脱し、物語が大きく展開する。
彼の物語を面白くさせているのは、娯楽小説の皮を被ったSF小説(必ず人知を越えた能力を持つ人物が登場する)だからなのかも知れない。
あとがきの中には次のような記述もある。
「『モダンタイムス』は三年前(2008年)に発表した時から『自分にしか書けない自信作だ』という思いがありました。『どうすることもできない』仕組みを、娯楽小説の形で表現できた、という思いがあるからかも知れません。
前作の『魔王』と同様、彼が得意とする伏線とその回収もなく、この作品には政治家が登場して長々と語るシーンもあり、国家の仕組みを論じたりしている。
筆者は『作ったもの』と断っているが、程度の差こそあれ、現実の政治も似たようなものだと思う。
最初に書いたとおり、伊坂幸太郎氏の長編小説。
著者と微妙にペンネームが異なる小説家井坂好太郎は、主人公に疎んじられながらも(結構ウザい設定)、最後は惜しまれながら亡くなっていく。
彼の小説が好きで未読の方にはオススメしたい。
MOH