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書いたことも忘れていたショートショート(monogatary) 「忘れていた声」

2〜3ヶ月、小説を書いていない。
小説を書き始めてから、初めてだと思う。
 
連載小説を投稿したまま,続編を放ったらかしにしているものもある。

この物語の中では9月だが、暦はもう11月。
このエピソード、結末までのあらすじは書いているが「物語」として書き起こしのモチベーション(リソース)が今ひとつ。
 
最近、「楽曲」と同じく「物語」も短い方が多くの方に読んで頂けるのではと思い、『カクヨム』原稿にいくつかショートショートを書き散らしているが、note に載せるには今ひとつ。
 
ショートショートは monogatry.com」だったのを思い出し、久しぶりにログインしてみると、書いたことも忘れている短い物語がある。
以前、 monogatary.com に投稿した物語を note に転載していたが、今年に入ってからは半年前のものが最後。

今回転載するショートショートは、翌月 monotagary.com に投稿していた。

お 題 :不在着信
タイトル:忘れていた声
作品情報:誰でも大事なことを忘れている

 
 
その日は、早く仕事が終わり帰宅途中に、スターバックスで資格試験の勉強。
iPhoneの振動に気がついてディスプレイを見ると「不在着信」。
知らない番号で気になるが、詐欺電話も多いのでそのままにして、参考書に目を戻す。
 
数日後、同じくスターバックスでMacBookを開いていると、また「不在着信」通知。
iPhoneを手に取り、ディスプレイを見ると番号はこの前と同じ。
掛け直したくなる気持ちを抑え、無視することにした。
 
日が経つにつれ、iPhoneに「不在着信」の通知が頻繁に現れるようになる。
毎回、相手の番号は同じだが、MacBookに保存している古い連絡先を検索してみても同じ番号はない。
「昔の彼女?」と思わないではないが、そうであれば掛け直さない方が無難に思う。
 
それから「不在着信」通知は日常の一部となったが気にも留めず、定期的な振動だと思っていた。
会社の人にそれを話すと「なぜ掛け直してみないのか?」と聞かれるが、「面倒だから」と答えていた。
 
あるときから「不在着信」通知を見ることも止めた。
通知を見ることで感じるわだかまりや、意味のない申し訳なさが、大きくなっていたのかもしれない。
 
 
そんなとき夢を見た。
いつものスターバックスで2%ラテを飲んでいると iPhone が鳴り響き、ディスプレイには何回も見た「不在着信」の電話番号。
思わず電話に出ると、懐かしく感じる声が聞こえてくる。
 
「もうすぐ行くから、待っててね」
 
その声はとても優しく、安らぎを与えてくれる。
でも、その声の主が誰なのかわからない。
その声に向かって聞いてみた。
「誰ですか?」
 
微笑むような声が流れて来た。
「私のこと、忘れたの?『ずーっと、一緒だよ』って言ってくれたよね」
 
 
肘がガクッと落ちる勢いで、目が覚めた。
周りはいつものスターバックス店内。
目の前には、ディスプレイに『nnnnnnnnnnnnn』が続くMacBook。
寝落ちしていたようだ。
 
 
それから数日後、数少ない高校時代の友人からメッセージが入って来た。
「さゆりが亡くなった連絡が入ったけど、聞いてる? お前、付き合ってたよな」
 
 
 
今年の夏は、何年も帰っていない実家に帰り、地元にいる友人に聞いてみよう。
彼女のことを。
 
 
(了)


MOH


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