失はれる物語/乙一(著)短編集
「鷗外の母/森於菟(著)」を読んでいたら、お薦めに出てきた(何故?)
タイトルに惹かれ、クリックしてみるとUnlimited😊
ライブラリに入れようとすると、既にライブラリ入っているとの表示。
注文履歴を検索してみると…… 以前、買ったまま電子積読?
乙一という作家さんは、初見(いや、2015年に名前は見ているはず)
タイトルの「失はれる物語」を読むと、初めて感じる読後感。
初版は2003年
「失はれる物語」を代表作と感想に書いている人も多い。
感想
Calling You
「失はれる物語」のあとに読んだので、脳内携帯電話を持つボッチの女子高校生がどうなるのかと思い読み始めた。
テレパシーとタイムトラベルの使い方が効果的なSF短編。
テーマソングは、BAGDAD CAFE - I'm Calling You
失はれる物語
まずタイトルに惹かれた。
圧倒的に絶望感いっぱいの、ひたすら切ない物語。
この物語と関係はないが、主人公が置かれた状況が同じ「ジョニーは戦場へ行った」を思い出した。
傷
「幸福な王子(The happy prince)」オスカー・ワイルド(作)を思い出す物語。
手を握る泥棒の物語
この物語は読んでいた。
叔母が窓際の棚にバッグを入れるシーンを読んで、主人公があとで外壁に穴を開けて盗み出すのを思い出したから。
タイトルのとおり、手を握るだけの泥棒。
「手に汗握る」とはならない。
しあわせは子猫のかたち
死者からの贈り物
ボクの賢いパンツくん
超ショートショート小学生日記。
マリアの指
短編集の中で一番長い物語。
一応、ミステリー小説?
一人称で話は進むが、文章の稚拙さで気持ちが物語の中に入っていけない。
気持ちの表し方は参考になるところもあるが、あらすじには無理がある。
あとがきにかえて─書き下ろし小説 ウソカノ
モテない同級生と演じた、架空の彼女持ち。
クラスのみんなにバレるけど、新しいスキルを身につける。
雑感
著者が20代半ばに書いた短編集。
心の表し方に個性を感じる。
最初の3編は脳内活動が多く(失はれた物語は全部)、著者がその才能を遺憾なく発揮する。
4作目以降は現実を描写する場面が出てくるため、それまでの表現力との落差が大きい。その後も著作活動を続けているので、今は現実描写も上手くなっているのかもしれない。
多くの主人公がティーンエイジ。誰もがコミュニケーション下手で学校では孤立しており、家庭環境も複雑な設定にしている。
どの物語もハッピーエンドはなく辛い人生。幸福感のない未来を予見させるが、どの主人公も力強く生きて行くことを想像させる物語。
この短編集を読むと「小説って、何を書いてもいいんだな」と実感する。
当たり前のことだが…
小説を書いていて、無意識に「この方向で書いた方が(無難で)良いよね」と、勝手に決めつけている自分を確認した。
これからは、その時々で筆が進む小説を書き進めることにしたい。
とりあえず『安定を重視して〜 第2編』(SF)と『彼女と僕の〜 続編』(日常系)の両方を書き進めて行く予定。
そう言う意味では、自分に『気づき』を示唆してくれた良い短編集。
『マリアの指』は、文章のあちらこちらに違和感を感じ、脳内校正をしながら読んだので、時間が掛かってしまったが…
MOH