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失はれる物語/乙一(著)短編集

鷗外の母/森於菟(著)」を読んでいたら、お薦めに出てきた(何故?)
タイトルに惹かれ、クリックしてみるとUnlimited😊
ライブラリに入れようとすると、既にライブラリ入っているとの表示。
注文履歴を検索してみると…… 以前、買ったまま電子積読?

本を開くと最初の頁 1頁も読んでいない

乙一という作家さんは、初見(いや、2015年に名前は見ているはず)
タイトルの「失はれる物語」を読むと、初めて感じる読後感。

作風・別名義
初期は、奇抜なアイディアの短編小説やハートフルなライトノベルが中心であったが、『GOTH リストカット事件』はミステリー小説として、本格ミステリ大賞を受賞するなど高く評価された。また初期の作品はホラー小説寄りのものと切ないストーリーに大きく分かれていたため、それぞれ「黒乙一」「白乙一」と呼ばれていた。乙一名義では主に集英社、角川書店、幻冬舎などで小説を執筆している。
2005年ごろから、メディアファクトリー(現 KADOKAWA)の怪談専門誌『幽』で山白朝子として、また祥伝社の恋愛小説アンソロジーや恋愛小説専門誌『Feel Love』で中田永一として、それぞれ別名義での執筆活動を開始した。
2011年6月30日に、山白朝子中田永一の別名義で活動していたことを乙一(安達寛高)のtwitterで明らかにした。2012年11月には、中田永一名義の『くちびるに歌を』が選ばれた小学館児童出版文化賞の贈呈式に出席し、毎日新聞がこの別名義の件を報じた。
本名の安達寛高名義では自主映画の制作を行っており、2015年までに4本の作品を発表している。2004年には『ゴーストは小説家が好き』で第5回宝塚映画祭・映像コンクールに上位入選している。2016年には乙一中田永一山白朝子越前魔太郎による短編集(解説は安達寛高)という、5人分の名義が並んだ『メアリー・スーを殺して』を刊行、その巻末でさらに枕木 憂士名義でも映画エッセイを寄稿していることを明かした。
小説の執筆にあたっては、まずストーリー展開を決めたうえで、それにあったキャラクター設定を作る方法をとっている。また、デビューからまもない頃に『シナリオ入門』という本で勉強した映画の脚本作りの技術を取り入れている。特に、物語のちょうど真ん中で転換点を迎えるという手法(ミッドポイント)を多用し、全体の構成が4分割、16分割までされているものも多い。
妻の押井友絵押井守監督の娘)は乙一の制作への姿勢について「小説にも映画にも執着してないんじゃないか」といい、本人も「作品が形になっていくのがとにかく楽しくてやっている感じ」だと述べている。

wiki抜粋

初版は2003年
「失はれる物語」を代表作と感想に書いている人も多い。

乙一の里程標(マイルストーン)として屹然と立つ短篇集!
事故で全身不随となり、触覚以外の感覚を失った私。ピアニストである妻は私の腕を鍵盤代わりに「演奏」を続ける。絶望の果てに私が下した選択とは?
珠玉6作品に加え「ボクの賢いパンツくん」を初収録。

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感想

Calling You

「失はれる物語」のあとに読んだので、脳内携帯電話を持つボッチの女子高校生がどうなるのかと思い読み始めた。
テレパシーとタイムトラベルの使い方が効果的なSF短編。
テーマソングは、BAGDAD CAFE - I'm Calling You


失はれる物語

まずタイトルに惹かれた。
圧倒的に絶望感いっぱいの、ひたすら切ない物語。
この物語と関係はないが、主人公が置かれた状況が同じ「ジョニーは戦場へ行った」を思い出した。


「幸福な王子(The happy prince)」オスカー・ワイルド(作)を思い出す物語。


手を握る泥棒の物語

この物語は読んでいた。
叔母が窓際の棚にバッグを入れるシーンを読んで、主人公があとで外壁に穴を開けて盗み出すのを思い出したから。
タイトルのとおり、手を握るだけの泥棒。
「手に汗握る」とはならない。

しあわせは子猫のかたち

死者からの贈り物

わたしも、子猫も、自分が不幸だとは思っていない。確かに、世の中、絶望したくなるようなことはたくさんある。自分に目や耳がくっついていなければ、どんなにいいだろうと思ったこともある。
 でも、泣きたくなるくらい綺麗なものだって、たくさん、この世にはあった胸がしめつけられるくらい素晴らしいものを、わたしは見てきた。この世界が存在し、少しでもかかわりあいになれたことを感謝した。カメラを構え、シャッターを切る時、いつもそう感じていた。わたしは殺されたけど、この世界が好きだよ。どうしようもないくらい、愛している。だからきみに、この世界を嫌いになってほしくない。

失はれる物語:しあわせは子猫のかたち

ボクの賢いパンツくん

超ショートショート小学生日記。

マリアの指

短編集の中で一番長い物語。
一応、ミステリー小説?
一人称で話は進むが、文章の稚拙さで気持ちが物語の中に入っていけない。
気持ちの表し方は参考になるところもあるが、あらすじには無理がある。

あとがきにかえて─書き下ろし小説 ウソカノ

モテない同級生と演じた、架空の彼女持ち。
クラスのみんなにバレるけど、新しいスキルを身につける。

雑感

著者が20代半ばに書いた短編集。
心の表し方に個性を感じる。

最初の3編は脳内活動が多く(失はれた物語は全部)、著者がその才能を遺憾なく発揮する。
4作目以降は現実を描写する場面が出てくるため、それまでの表現力との落差が大きい。その後も著作活動を続けているので、今は現実描写も上手くなっているのかもしれない。

多くの主人公がティーンエイジ。誰もがコミュニケーション下手で学校では孤立しており、家庭環境も複雑な設定にしている。
どの物語もハッピーエンドはなく辛い人生。幸福感のない未来を予見させるが、どの主人公も力強く生きて行くことを想像させる物語。

この短編集を読むと「小説って、何を書いてもいいんだな」と実感する。
当たり前のことだが…
小説を書いていて、無意識に「この方向で書いた方が(無難で)良いよね」と、勝手に決めつけている自分を確認した。

これからは、その時々で筆が進む小説を書き進めることにしたい。
とりあえず『安定を重視して〜 第2編』(SF)と『彼女と僕の〜 続編』(日常系)の両方を書き進めて行く予定。

そう言う意味では、自分に『気づき』を示唆してくれた良い短編集。

『マリアの指』は、文章のあちらこちらに違和感を感じ、脳内校正をしながら読んだので、時間が掛かってしまったが…


MOH

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