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第6話 文化祭!?(とある受験生のつぶやき)

「高校で初めての文化祭だから、最初はみんな盛り上がったよね?」
 黒歴史になる手前、みんなが高揚した雰囲気を思い出した。

「そうなの? 私には元気な男子が五月蝿うるさかっただけだけど」
 当時の高校一年生にしてはとてもクールな感想である。
 僕もそうしておけば黒歴史にならなかったのに。

「だいたいさぁ、思いつきで映画を撮ろうとする時点でおかしいのよ。TVが垂れ流すドラマだって、企画してシナリオライターに粗々あらあらすじを書かせてタレントを確保しながら、スポンサーを探して行けそうになったら、局のお偉いさんの会議に諮ってようやくGOよ。それでもお蔵入りしたりするからね」
 彼女は何でそんなに、TV業界に詳しいの?

「文化祭の映画なんてノリで作るんだし、まあ記念というか?」
 嫌な思い出なのに、いつの間にかクラスで作った映画を擁護している。

 彼女は何かを思い出したかのように瞳を輝かせながら、ニヤリとする。
「あんな格好をして映画に出演したから一生の思い出! まさしく記念碑よね」

 アーッ、やっぱり黒歴史だ!
 クラスで撮り始めた『映画』という代物は、みんながスマートフォンで自分たちや学校を好き勝手に撮った映像を寄せ集めてパソコンで編集して完成、というお気楽なものになったんだ。
 一応、班編成をして撮るシーンの割当もしたけど、まともなシナリオがないので集まってきた映像もグダグダ。

 僕がいた班はリーダーが『涼宮ハルヒ』をよく知っていて『エンドレスエイトは最高!』という一家言を持つ変なヤツ。 アッ! 思い出した! アイツが『涼宮ハルヒみたいな映画を撮りたい』と言い出したんだ。 黒歴史の張本人はアイツだったんだ。 でも、もう学校にいないから仕返しも出来ないけど……。
 頭の中で回想していると、彼女が追撃してくる。

「ねぇ、あの格好、自分から『やりたい』と言ったの?」

「まさか! 誰が好き好んで、あんな格好で商店街を歩くわけ?」

「だよね。そんなことするのは変態さんくらいだもの。あの映画を観たとき、あなたのことを変態だと思ったのよ」

 変態、変態、言うなし。 アレのおかげで、学校中に悪い意味で、有名になったんだから。
『今年の1年生にウサギの格好をした、変な男子がいる』って。


[ to be continued ]

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MOH