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Book review;無人島に生きる十六人(青空文庫・Kindle版) いまのご時世、私にとって今年一番の本かも知れません

 この本、ココnote.comでも何人かの方がレビューされていて『いまさら』感が無きにしも非ずですが、自分のためにも記録として投稿します。

どんな本

日露戦争、第一次世界大戦に従軍し、商船学校教授・東京商船学校校長を歴任した須川邦彦による冒険実話。「少年倶楽部」に1941(昭和16)年から翌年にかけて連載。明治32年、帆船・龍睡丸は太平洋上で座礁し乗員16名は無人島に上陸。飲み水を確保し、火を起こし、海亀の牧場を作り食料を確保するなど様々な知恵を出し助け合いながら生き延びる。そしてその年の12月末、救出され無事祖国の土を踏むのだった。1999(平成11)年に「本の雑誌」で「漂流記ベスト20」の1位に選出された。 (Amazonの紹介から)

レビュー

 冒険実話ですが、著者の須川邦彦が経験した話ではありません。
 東京高等商船学校の実習学生として、著者が練習帆船乗船時に教官の中川倉吉氏から聞いた体験談です。

 物語の始まりの語りに依れば、著者は以前から中川教官に無人島での話を所望していたそうで、千葉県の館山湾に碇泊した休日(他の学生は上陸済み)に船内で中川教官が話してくれたそうです。

 長い話ではありませんが、数えてみると約10万字あり、著者の書き出しには「46年前に聞いた話」とあるので、本当に実話であれば、熱心に口述筆記したのかな? と思います。
 でなければ著者のフィクション?(良いお話なので貶すつもりはありません)

 今までのどなたのレビューにも載せているので、繰り返しになりますが、一番印象に残った同じところを備忘として掲載します。

 朝飯は、正覚坊の焼肉と、潮煮。飯がすんでから、私は、一同にいった。
「島生活は、きょうからはじまるのだ。はじめがいちばんたいせつだから、しっかり約束しておきたい。
 一つ、島で手にはいるもので、くらして行く。
 二つ、できない相談をいわないこと。
 三つ、規律正しい生活をすること。
 四つ、愉快な生活を心がけること。
 さしあたって、この四つを、かたくまもろう」
 一同は、こころよくうなずいた。

 1から4の約束だけを載せてる方が多いので、若干前後も足しました。
 ちなみに 正覚坊(しょうがくぼう)とは、アオウミガメのことです😅

 この本は無料なので、まだ読まれていない方は読んでみては如何でしょうか?

 ひとつ言えることは、我々現代人が同じ環境に置かれたら、まず生きて帰国することは不可能でしょう。彼らは当たり前のようにやるべきことをやっただけなのですが、海でのサバイバルスキルが半端ではありませんし、中川氏のマネジメントスキル、16人のヒューマンスキルも一級品です。
 軍隊でもないのに規律ある行動、他人への思いやり、これらも現代人には不可能な行いだと思います。

 それだけ大変な環境に置かれながら、彼らの心(気持ち?)は終始スッキリとしており、いまの日常を過ごす我々の方が、どんよりとして先行きが不安だらけの環境に生きている様な気がします。

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ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。
MOH

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