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【読書感想文】透明な迷宮/平野啓一郎

後期分人主義の短編集
平野啓一郎氏のことは読書感想も含め、何度か記事にした

平野啓一郎 (著)『タイアップ小説集』 / 原田 宗典 (著)『どこにもない短編集』
本の読み方 スロー・リーディングの実践/平野 啓一郎 (著)
私とは何か「個人」から「分人」へ :: 平野啓一郎(著)
つぶやき
つぶやき

深夜のブタペストで監禁された初対面の男女。見世物として「愛し合う」ことを強いられた彼らは、その後、悲劇の記憶を「真の愛」で上書きしようと懸命に互いを求め合う。その意外な顛末は……。表題作「透明な迷宮」のほか、事故で恋人を失い、九死に一生を得た劇作家の奇妙な時間体験を描いた「Re:依田氏からの依頼」など、孤独な現代人の悲喜劇を官能的な筆致で結晶化した傑作短編集。

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最近、長編小説や2時間を超える映画に手が伸びない。
(「自分で長編を書いておいて」というツッコミは無しで😅)
という言い訳めいたことを書きながら、平野啓一郎氏の長編小説はまだ読んでいない。
いつかは読むとは思う。

備忘的な感想

消えた蜜蜂

特殊な能力を持った郵便配達人
ベルを2回鳴らさないが、2度目の…

ハワイに捜しに来た男

ちょっと不思議なショートショート
自分は誰?

透明な迷宮

本のカバーはこの短編の内容を示唆している
分人の逆パターン? 合人?
一卵性双子と付き合うのは難しい

family affair

老人が残した遺品は、Smith & Wesson
登場人物の方言を含め、著者の故郷

ピストルを捨てた関門海峡は長編拙作の最終決戦場
西暦4020年の未来人が作った機械獣との戦い

火色の琥珀

平野啓一郎氏の短編には珍しく私小説的な物語
火を愛し、火に焼かれる

Re:依田氏からの依頼

この短編集の中で一番長い物語
物語の大半は小説家の主人公が依頼されて作った「劇作家の奇妙な時間体験」

雑感

どの物語を読んでも、文章力を感じる短編集。

話の筋を追うような物語はなく、意外な展開もほとんどないのだが、登場人物とそれを取り巻く周囲の描写を読み返してしまう。

「人の容姿をこんな風には表現出来ないな」とか「景色への入り方をこのように書けたら良いな」とか。
 
以前記事に書いたが、小説を書き始めてから小説を読むのが遅くなった。
ライトノベル系は筋を追うだけなので速読だが。

純文学とは言わないが、人や背景が練られた文章を読むと無意識のうちに注意を払い、物語の筋とは関係なく表現方法が気になる。

文字が集まり文章となり、それが塊となってエピソードができ、その集合体で一つの物語が綴られる。

言葉の使い方ひとつで、物語の雰囲気が大きく変わることもあり、それを考えると言葉の一つ一つに注意を払わなければならないのだが、そのような書き方をしていたら執筆は進まず、一つの物語を書き終える前に寿命が尽きてしまう。

形となる小説を書き始めてから3〜4年。チカラを付ける方法は分かってきたが、そのためには時間と根気が必要で、それができているのかというと出来ていない。

そんなことを考えながら短編集を読んでいる。
長編小説を読まない言い訳でもある。


MOH


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