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第8話 シナリオ!?(とある受験生のつぶやき)

 彼女に、バニーガールになったくだりをかいつまんで説明すると、頷きながら十分に納得したご様子。
 もう『変態』とは呼ばないでね。

 僕と彼女の話を、聞くとはなしに聞いていた、彼女から叔父さんと呼ばれている人が口を開く。
「そろそろ説明をしないと、いくら時間があっても足りないぞ」

「彼の話についつい聞き入っていました。同じクラスにいたのに全然知らなかったよ。それでね、最初にクラスで映画のシナリオを募集したでしょう? それに応募したよね?」
 彼女は今説明した映画撮影の苦労話が無かったかのように、急に話を変えてくる。

「何で知っているの?」
 忘れもしない初めて作った物語のシナリオ。

「私、応募のあったシナリオの審査員をやったの」
 シナリオの審査をやったなんて初めて聞いたぞ。
 誰が決めたんだ、応募者の断りなしに。

 小さく驚く僕のことを気にもせず、彼女は審査の様子を説明する。
「10本くらい集まったかな? シナリオモドキが。男子の応募が多かったけど、どれも厨二病ちゅうにびょうこじらせたようなものばかりなの。クラス委員からメールで送られてきたけど、どれも数行読んでデリートしたわ」

 即、消したのか! 中身はどうあれ、書いた本人の想いが詰まった原稿を!
 彼女は僕の表情を読み取ったのか、少し補足説明をする。
「だって、長々と書かれた自分語りを読んでも時間の無駄でしょう? でもその中にチョットおもしろいSFモドキのシナリオを見つけたの」

 嬉しいような嬉しくないような、イヤな予感。
「もしかして、僕が書いたシナリオ?」

 彼女がニンマリとして答える。
「ご名答。さすがに作者だけあって、少し話をしただけですぐに分かるのね」

 気がつくも何も、初めてシナリオを書いて自分なりに気に入ったから、それを物語に仕立てて、ペンネームでWeb小説に投稿を続けているんだ。
 新しいエピソードを投稿すると、必ず読んでくれる読者もいるからね。

「私、思ったの。このシナリオは面白いけど、文化祭の映画には撮れないなって。始まりのところは、学校で撮れなくもないけど、直ぐにターミネーターや恐竜とバトルでしょう? 宇宙人の巨大ロボットも出てくるし。主人公の女の子たちはカッコいいけど、あんなことをスタントなしにやったら、いくら命があっても足りないよ」

 彼女はシナリオをよく読み込んでいるご様子。
 でも宇宙人ロボットは、トライポッドのことだと思うけど、シナリオにそこまで書いたっけ?

「今、なんでそんなに知っているの?と思ったでしょう?」

「まぁ、そうだけど」
 彼女はなんでもお見通しのご様子。

「あのあと『小説家になろう』へ投稿を始めたでしょう?」
 エェーッ! 彼女はなんで知っているの! 投稿していることは誰にも話していないのに。

[ to be continued ]

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MOH