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第3話 地下!?(とある受験生のつぶやき)

 僕は2通目の封筒を制服のポケットに捻じ込み、校門を急ぎ足で出て行く。
 昨日呼び出された図書館は高校から歩いて7-8分の距離にあり、今日彼女から呼び出しがあった駅はそこから更に7-8分、高校から15分の距離にある。
 県内各地からこの進学校に通う生徒の多くは電車通学で、僕もその一人。

 帰り道だから、わざわざ駅を指定することもないと思うけど…
 そう思いながら、いつもより足早に駅へ向かう。

 それにしても、いつ下駄箱に手紙を入れたのかな? 僕が最初に教室を出たと思うけど。
 不思議に思いながら足早に歩く道の先に、彼女の姿はない。

 ホームルームの時には彼女はいたよね?
 後ろを振り返るが、彼女の姿はなかった。

 もしかすると他の道を歩いているのかも?と思い、横断歩道を渡るたびに左右を見てみるが、彼女がいる気配はない。

 駅に近づくとロータリーの手前でブンブン手を振っている制服姿の女子がいる。
『もしかして?』と思い、駆け足で近寄ると今日も手紙をくれた彼女が嬉しそうに手を振っている。

 どんな顔をして応えたら良いのかわからず、曖昧な顔をして『ヨッ』と声を掛ける。

 彼女は満面の笑みで応えてくれる。
「来てくれると思ったの。ありがとう」

「あっ、うん」
 来るも何も、この駅で電車に乗らないと家に帰れないのだが。

「こっち、こっち」
 彼女は駅の改札へは向かわずに、制服の袖を摘んで駅前商店街の方へ歩き始める。

 この商店街も以前は賑わっていたと思うのだが、郊外にあるショッピングモールの影響なのか、僕がこの高校に通い始めた頃にはシャッターの閉まっている店が多く、一年生の文化祭の準備で買い出しに来た時に必要なものが揃わず、結局ショッピングモールまで行った記憶がある。

 そんなガランとした商店街の中を彼女はズンズンと歩いていく。
「どこへ行くの?」

「もう少しだから、ついて来て」
 そう言いながら、うしろを振り返り『ニコッ』とする美少女クラスメイトに逆らうすべはない。

 しばらく歩くと商店街が終わる交差点の角に、昭和の時代に建てられた様な古びた3階建のビルがあり、彼女はその建物の前で立ち止まった。
 見た感じ会社の事務所が入っていたようだが、看板は取り外され空きビルのようだ。

「着きました」
 確認する様に僕の顔を見て、また制服の袖を摘み、ビル正面の脇にある地下へ続く階段を降りて行く。
 彼女が袖を強く引っ張っているわけではないが、何かに吸い寄せられるように僕の身体は薄暗い階段を降りていった。

[ to be continued ]

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MOH