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【実話】防空壕の兵隊【怪談】

母は昔から「人魂を見た」「洗面台の前に知らない人がいる」とかそういうオカルトな話を忘れた頃にしてくる人です。

本人はお化け屋敷とかホラー特番とか嫌いなので、オカルト厨二というより、マジに見えるけど「世の中には説明できないこともあるよねー」って現実逃避してるような感じです。

自分は逆に不思議現象に興味振り切っているので、母から聞いた話を忘れないように、思い出せる範囲でまとめていきたいと思います。


防空壕の兵隊

自分が中学生の時だったと思います。

当時母は清掃会社のパートとして働いており、その日は常連の家(一般の家屋も受け付けている)での仕事でした。

母と母の同僚は何度かその家に来たことがあったので、今回もいつものように仕事を始め、廊下の清掃に差し掛かった時です。

母の後ろ髪が軽い力で一瞬引っ張られるのです。

反射で振り返ってみるも、依頼主は裏庭、同僚は廊下の端。念のため同僚に声をかけるものの、やはり髪など引っ張っていないという返事。

依頼主は裏庭と書きましたが、この家の裏庭は防空壕が残っており、それは廊下に面した窓見えるような場所にありました。

うーわ、嫌な予感がする。
家の間取りはうろ覚えですが、図にするとこんな感じ。

伝わる気がしない。依頼主がいるのは外です。

誰も髪を引っ張っていないと言うし、周囲に引っかかるような物もないので不可解ではありますが、仕事のこともあるので母は気のせいということにして洗面台の掃除にかかることにしました。

するとまた髪を引っ張られるのです。

何度か髪を引っ張られ、それを無視しながら洗面台を磨いていた母ですが、気のせいではごまかせない強い力で引っ張られた時、思わず振り返りました。

振り返れば突き当たりにいる同僚と窓の外に依頼主が見えます。

しかしさっきより人が多い。

防空壕から3人1組横並びになり、一定の間隔で銃を担いだ兵隊が出てきているのです。

兵隊が列を乱さずきっちり、必ず3人。
防空壕から出てきた彼らはそのまま右に曲がり、玄関の方へ歩いて行っていたそうです。

裏庭には前述の通り依頼主が庭木の手入れをしたり、時折誰かが訪ねてきているのが見えたそうですが、誰一人防空壕から出てくる兵隊たちが見えておらず、それに気づいた母は2度と防空壕の方を見ることはなかったそうです。

それから何度かその家に掃除に行くことはあったそうですが、髪を引っ張られることも兵隊を見ることもその日だけだったようです。
自分が中学を卒業する前に、母はその仕事を辞めたような記憶があるので、仕事中に直接遭遇した話はこれくらいだと思います。

学校から帰って早々、紙とペンを持って真剣にその話をする母は、その後も変な体験を色々しているのでこのことを覚えているかは定かでは無いです。

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