スタートアップ採用の苦しい時から、オファー受諾ラッシュを決めるまで。あるいは、オファー受諾率0%→70%超までの旅
★2022年当時の記述です
こんにちは!もえやんです。グローバルのスタートアップにて、HR全般を担当しています。
HR全般といっても、スタートアップといえば採用がいつでも急務。私のお仕事も採用が多くを占め、そしてスタートアップにおいては採用こそが社の未来を決めるといっても過言ではありません。
どんなスタートアップのHRの方もぶち当たるであろう(?)、採用の苦しい時期について、無事に苦しみを体験した私が振り返る草の根運動についてを書いてみたいと思います!
※ちなみにできていなかったことをさらすので、恥を覚悟で書きます。書く前も、書いている途中もめちゃくちゃ恥ずかしいし苦しかったなと思いながら書いています。笑
内定数は増えるも、内定辞退率が上昇した5月
私がプレティアに入社して8ヶ月ほどのこと。「採用がんばってますね」「事業イケイケですね」とお声がけいただくことが増えましたが(ありがたい)、実は4月からは内定辞退率が向上し、採用の目標に対してのビハインドが発生していました。
内定受諾率0%が4ヶ月も続くという緊急事態…!恥ずかしくて晒せない…!(もう遅い)
本当に来てほしかった候補者さんばかりに辞退されてしまい、「これはまずい」と始めたKaizenとして、内定を辞退された方へ15分程度のヒアリングをさせていただき、選んでもらえなかった理由を聞き、原因を探ることにしました。
プレティアは6割が外国籍を占め、採用もグローバルに行っています。ヒアリングに基づき定性的な原因分析を行ったところ、内定辞退の理由は(主語を大きくしますが)外国籍の方、そして日本人の方で大きく異なることに気づきました。
外国籍の方の辞退理由
日本人の方の辞退理由
落ち着いて考えると、日本に在住されている方と海外に住まわれている方の考えるポイントは異なるのは当然なのですが、上記の回答を比べても、日本人の方のほうが圧倒的に「自身が働くであろう人・環境・業界を解像度高くイメージできるか」を重要視されていることがわかります。(そりゃそうなんです、そうなんですよ!)
このヒアリングを踏まえて、プレティアの採用における課題を洗い出しながら、打ち手を考えていくことにしました。
※今思い出してもゴールデンウィーク前後の内定辞退ラッシュは心に来るものがあり、「急募のポジションを採用できなければ会社の未来はないし、その採用ができないなら自分がいる意味はない」と、毎日成果のでない苦しさを思いながら業務に打ち込んでいたことを思い出します。(ワンチャン自分じゃなければ…と思うこともありましたね、うん)
※評価時期には代表に「ここまで改善を重ねていなかったら、この方々にすら内定を出すまでに至らなかったです。もう少しです、一緒に頑張りましょう」と励ましをもらうという情けない状況に…ですが、この評価面談をもって心新たにしたのでした。
コツコツ改善を重ねる、夏
採用を体系的に学ぶ会の2期に通い始めたのもゴールデンウィーク前の時期からでした。申し込んだ際にはまだ余裕ぶってましたが、はからずも(?)苦しい時期と講義時期が重なり、とにかく多くを吸収しようと隔週の講義に臨んでいました。
(詳細は言えないまでも、こういうことがあって…と話すと「わかります!」と仰ってくれた受講生のみなさまがあって心が保たれました)
本当にできていないないことが多いなと思う中で、特に重点的に改善したことを羅列してみます。
1/ まずは自身が採用についてもっとインプットする
採用についてわかった気になっていて全然わかっていなかったのだと反省し、前述の「採用を体系的に学ぶ会」に参加を決めたり、仲良しIncubate Fundさん開催のHRイベントで思いをぶつけたり、人事周りの本を読む会を開催したり、HERPさんのスクラム採用イベントに参加したり、YOUTRUSTさんの「すごい研修」に参加したり…(覚えてないけど他にもあるかも)しました。
焦りからなにかの行動に移さなければ、という気持ちもありましたが、参加したすべての会から学びを得ることができ、少しずついろんなエッセンスを組み合わせながら、"プレティアに合った採用スタイル"を探りました。
採用の面白いところは、他社さんがうまく行ったことが必ず自社に当てはまるわけではないというところです。「うちっぽくないな」と思うことは迷わずやらず、そして自分たち流にアレンジできそうなことはどんどん改善してゆきました。
2/ エージェントさんへの情報共有をマメに行う
特に日本人のエグゼクティブ層はエージェントさんからのご推薦が多くを占めます。エージェントさんも本当に色々とご助言くださり、クロージングまですこしでも確度を高めようとご尽力くださっています(本当にいつもありがとうございます…!)。
前述の採用を体系的に学ぶ会の講義のなかで、会社のアップデートやポジションで選考が進んでいる方のインサイトや当社が課題に感じていること等、自社だけではなくエージェントさんがほしい情報を共有できていないことに気づきました。これに気づいてから毎月エージェントさん向けに事業・ポジションアップデートの資料を送っています。
この情報共有をフックに改めて時間をとってくださるエージェントさんがいらっしゃったり、ミーティング内でも資料にまつわるご質問が増え、事業解像度が上がったとおっしゃっていただけたりしました。メンバーからも「最近面接する方のレベル、すごく高くなった」とフィードバックをもらいました。すごい。
3/ "面接官力"のアップ
「メンバーが会社の全体戦略を理解し、語れていないと感じた」とフィードバックをもらってからメンバー自身にもヒアリングしたところ、「隣の部署が何をしているかよくわからないから、会社の戦略についても話せない」という状況であることがわかりました。
プレティアはスタートアップ・まだ30名程度の社員数ながら事業部制をとっており、週1度のWins-Sessionにて各事業部のアップデートを話しているものの、各事業部の案件が、社がどんな背景をもって進行させているのかまでを伝えきれていないということに気づきました。
自身の事業部のことについて一生懸命にがんばって話してくれるのは素晴らしいことですが、候補者さんが想像するスタートアップ≒ひとつのコトを全員で追いかける姿とは違ったことにギャップを持たれていたのかもしれません(これがプレティアの事業構造的強みでもあるのですが…)。
この課題に対しては、「事業部の理解を促進する」ではなく、「候補者からよくある質問として掲出・回答を会社で用意し、その意味を考えてもらう」というアプローチにしました。回答しなければいけない場面になってから「なぜだろう?」と考えるほうが、本質的な理解につながると考えたためです。
また、面接官力の向上は全社を挙げて優先順位を高め、社内全員参加で研修を行いました。
内容としては面接のベーシックなことから、自己紹介やよく聞かれる質問への回答についてを互いにフィードバックするワークなどを含め、質問も活発に出て、「自分が面接を受ける側だったら…」という意見交換もできてとても良かったです。
ここに至るまでには、面接官をしてくれているメンバーに「もし面接のフィードバックを候補者からもらえたなら、それを改善したいから教えてほしい」と言ってもらえたのもとても大きかったです。改善したいと思う気持ちあってこその打ち手です。本当にうちのメンバーは最高だな。
4/ HR面談を積極的に挟む
特にスカウト経由の候補者様に対して、詳細にヒアリングをする時間を設けるようにしました。「自分は候補者さんの味方で、ぜひ内定が出せるように頑張って欲しいのでそのためのブロッカーをすべて取り除きたい」というスタンスで、会社・メンバー・カルチャー・日本そのものについての疑問について、必要があれば何度も時間を設けました。
お恥ずかしながら、今でもこの時間は恐怖が半分くらいあります。会社のことを適切にわかってもらえるだろうか、そしてわかってもらうには私がどう言葉を紡ぐか次第だ、と思っていて、候補者さんの心を良い方にも悪い方にも振れさせる時間だからです。それだけ真剣に候補者さんと対面するという気持ちでやっています。いつも終わったあとはどっと疲れます…。笑
何度面接を重ねたあとでもこの時間で、意外と面接官には聞けないと思われた質問がポロッと出てくるもので、会社の課題も自分の言葉で包み隠さず話すことで、さらに解像度高く事業・企業理解を深めてもらえているのではないかなと思います。
「選考がここまで進んで、プレティアのことをたくさん好きになれたのは田中さんがいたからです」といってもらえたときは泣くほど嬉しかったです。
5/ オファースライドの作成
実は私の入社当時はオファー面談すらなかった当社。しかし、候補者さんの未来を決める意思決定に対し、オファーレターの内容や期待するロールについての詳細はお互いが納得行くまで話すべきです。
また、こちらからの愛をちゃんと伝えるためにも、オファー面談時にはオファースライドを作成し、わかりあうための"たたき"とすることにしました。
オファースライドに含めているものは下記です。
これを作ってお伝えすると良かったことは、①これまで話したことが改めて言語化され、候補者さんがあらゆる内容を再認識できること②これを叩きに最終的な活躍イメージをディスカッションできること③愛を惜しみなく伝えられること! の3点です。このスライドを作ってからのオファーではぐっと内定辞退率が減り、改めて"言語化する"ということの大切さを思い知りました。
このスライドを作るには、私自身が候補者さんのキャリアの軸や、候補者様ご自身についてよく知っていないと書けないのです。直接お話するタイミングがない方でも、このスライドをご本人様に納得感行く状態で提示するために、面接官やエージェントさんにご本人様の情報を念入りに聞き、集めに行くことが最終的なカルチャーマッチを判断することにもつながっていたと思います。
6/ 代表にしつこいくらい質問する
YOUTRUSTさんが開催された「すごい研修」に参加させてもらった際に、「代表に、事業の優先順位や大切なことについて、しつこいなと思われるくらい質問をしているか?」という良い問いをいただきました。HRはCEOのバディ。代表が考えていることは会社の行く先ですし、社の全体を知らなければ候補者さんに知ってほしいことを話すことはできません。
いつも想像して心に秘めていた内容を答え合わせしていただろうかと自身に問うと、100%そうだったわけではないなと思います。スタートアップのスピード感からして、当時聞いた回答と今は変わっているかもしれない。積極的にキャッチアップしていく必要がありました。
ありがたいことに代表の @yu さんはいつも傾聴スタンスで、何度質問をしても、いつも何度も全力で回答してくれます。毎週の1on1では、「最近なに考えてますか?」を一声目にし、その質問がなければ知れなかったであろう代表の脳内を知りながら、自分であれこれ仮説をたててぶつけ、今の事業や事業の未来への解像度を高めています。
実は代表も質問してもらいたがっているのかもしれませんね。
内定受諾率向上と、急務ポジション充足ラッシュ!!!
苦しい時期を過ごしてはや4ヶ月。採用とはつくづく効果の現れるタイムラインが長いなと思いますが、8月と9月の2ヶ月で下記の重要ポジションについての内定受諾が決まりました!!!嬉しい!!!
Business Developer(1名採用)
UI/UX Designer(1名採用)
Engineering Manager(1名採用)
3D Artist(1名採用)
Backend Engineer(1名採用)
むちゃくちゃ低かった内定承諾率は、70%を超えるまでに改善しました。これは本当にメンバー、エージェントさん、みなさまのおかげです。
もっともっと前に決まっているべきポジションも存在しますし、この間も内定辞退は存在しているため、褒められたものではないことは承知の上で、小さくもKaizenし、そしてその改善の効果を信じながら不断のKaizenを行っていくことの大切さを身にしみて感じました。
今こうして振り返ると、内定承諾率の低さは、候補者さんの「解消できたはずのモヤモヤを察知できなかった」ということが大きいなと思います。そしてこの課題については、内省をしてみると、「自分よりも事業部メンバーや代表が話したほうが候補者にとって良いのではないか」という自身のある意味逃げでもあるような問いを自ら立てて、候補者さんとアクティブにコミュニケーションを取ることを避けていた自分がいたからなのではないか、と考えます。
最近は「私が話さなければモヤモヤは解決されないのだ」と強い気持ちで臨んでいますが、ゆえに候補者さんにたくさんの温かい言葉をかけてくださることが多くありました。
HR冥利に尽きます。そしてここまで温かい言葉をかけてくださるのは、私だけではなく、面接や面談を担当してくれるみんなのおかげです。
内定受諾がゴールではなく、ありがたくもそのあとのオンボーディングも私の責任ではあるので、入社後もぬかりなくサポートし、そして人の面からプレティアが社会にインパクトを残せるよう前のめりにやっていきます。