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6月7日発表の米雇用統計を解説


 2024年6月7日、アメリカの雇用統計が発表されました。今週はイベントが多くありましたが、最後の大きなイベントとして、アメリカの雇用統計の発表がありました。雇用統計のデータと、今後のアメリカの金融政策の見通しについて解説します。

雇用統計の詳細

 雇用統計の結果について、非農業部門の雇用者数は予想が+19万人でしたが、結果は+27万2,000人となり、非常に強い結果となりました。失業率は前月の3.9%を上回り4.0%になりました。予想も3.9%でしたので、予想を上回る結果になりました。そして、平均時給(賃金上昇率)は前月の+3.9%、予想の+4.0%を上回り、+4.1%になりました。

雇用者数の増加と失業率の上昇

 失業率は今回4.0%まで上がりました。これは2022年2月以来のことになります。ここ2年ほどの間、3.4%から3.9%のレンジで推移してきましたが、それが今回上昇してきたということで、アメリカの労働市場が徐々に悪化してきている兆候と言えます。しかし、雇用者の数は力強く伸びています。これはなぜなのか、雇用者の数が伸びているのに失業率も上昇している理由が2つあります。

雇用者数増加と失業率上昇の理由(移民について)

 1つ目の理由は、統計にカウントされていない移民や不法移民の人たちが仕事についている可能性です。雇用者数という数値は企業側への調査で把握している数値ですが、失業者としてカウントされていない人たちが仕事を得ていて、失業者数が全く減らないということが起きている可能性があります。

雇用者数増加と失業率上昇の理由(副業について)

 2つ目の理由は、副業をする人たちが増えていることです。すでに仕事を持っている人がさらに仕事を得ても、企業側は雇用者の数が増えたと報告します。
 雇用者数が増え続けているのに失業率が徐々に上がり続けている現象は、今の社会の変化を受けたものだと考えられます。

労働参加率とその影響

 続いての注目のポイントとしては労働参加率です。これは16歳以上の人口の中で就業者と失業者の割合のこと、つまり働ける人の割合を示しています。
 労働参加率は今回62.5%でした。新型コロナのパンデミックが起こった後、この労働参加率は一時大きく下がりました。コロナの影響からなかなか上昇できなくなっていると言われています。
 アメリカも移民は入ってきているとはいえ、人手不足感はそれなりにあるといった状況になっています。今後も賃金上昇率がなかなか下がっていかない一つの要因になると見られています。

市場の反応と金融政策の見通し

 この結果を受けFRBの金融政策がどうなるか、多くの市場参加者が注目しています。今回の結果、失業率が上昇したことでアメリカ経済の弱さも見られるものの、雇用者の数が力強く伸びていて、賃金の上昇率も上がってきています。つまり、サービスインフレの高止まりがより一層深刻になる可能性を示唆しています。そのため、この結果ですと、利下げがやりづらいということになると思います。
 今回の結果が発表された直後に、アメリカの金利は上昇し、ドルは強くなる展開になっています。今月FRBの金融政策を決定するFOMCがあります。今回は元々金融政策の変更はないと見られていましたので、その部分は特に変化はないでしょう。注目になるのは利下げの開始時期で、これまで9月頃になるのではないかと見られていましたが、今回の結果を受けまして、9月も難しいという見方がまた多くなってくる可能性が高いでしょう。

私の考え

 欧米はサービスインフレの高止まりというのが徐々に表面化してきているといった状況ですが、これはなかなか落ち着かない性質があります。欧州もアメリカも労働者は過去に取りこぼした分の賃金を要求するようなケースも多いですし、契約期間は複数年のことがほとんどのため、賃金の上昇は一度上がり始めるとなかなか収まらない。それがサービスの価格を長期間にわたって押し上げるということが現実のものになってきています。
 
すでに欧州の中央銀行ECBやカナダの中央銀行も利下げを開始しましたが、今後はそれほど継続的な利下げは難しくなっていく可能性があるかもしれません。
 FRBも大統領選挙を前に金融政策をどうしていくのか、非常に神経質と言いますか、微妙なバランスを取らなければならない状況になっています。引き続きデータをよく見ていく必要があると思います。


ご参考(前月分)

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