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「競合相手が餓死するのをひたすら待つ」クラウドソーシング企業の成功譚

先日個人開発者の集まりがあって、頑張っている友人の開発をお手伝いしてきました。

彼は仕事をやめて自分のサービスの開発運営に専念しているのですが、とはいえまだまだ立ち上げ期、ランチ代もためらうくらい苦しい生活が続いています。なんでそんな状況でも頑張れるの?と聞いたら、こう答えました。

「実家から米送ってもらえるんで。米があるから死ににくいんですよ」

あ、こいつには勝てないなーと思いましたね。そんな事言われたら応援するしかないじゃないですか?ちょっと預金が減ったら不安になって受託開発に手を出しちゃうぼくみたいなのも死ににくいとは思いますが、色んな人から応援してもらえるのは、きっと彼みたいなタイプの人です。

さて、「中国ユニコーン列伝」、今日のテーマはクラウドソーシング。米があるから死ににくい彼にも負けない根性で成り上がった成功譚です。

猪八戒網のはじまり

地方夕刊紙の記者だった朱明躍さんが、ネットで懸賞金を出してエンジニアを募って、ロゴデザインをマッチングするサイトを立ち上げました。いまでいうクラウドソーシングです。

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半年ほど副業で運営してみて、行けそうだと思った朱明躍は新聞社をやめ、フルタイム企業を決意します。一年後、エンジェル投資を獲得すると同時に、かっこいいサイト名「猪八戒網」もゲットして、順風満々に思えるスタートを切りました。

「競合相手が餓死するのをひたすら待つ」

けれども、この時期はまだクラウドソーシングの黎明期。なんだかわからないサイトに仕事を発注してくれる会社は少なくて、「週に四日も注文があれば最高」という状態でした。

しかもクラウドソーシングの競合は次々立ち上がって猪八戒網を追い抜いていきます。猪八戒網は重慶で起業していて、競合はみんな北京とか上海で起業していたので、仕事をとってくるのにとても不利だったのです。

大都市に移行する選択肢もあったと思うのですが、朱明躍は重慶に居続けることにしました。まず重慶を抑えようという目的もありますが、重慶はコストが安いので、売上が少なくても「自分は養える、競合相手が餓死するのをひたすら待つ」という戦略です。コメがあれば人は死なない!

かくしてひたすら耐え忍ぶ戦略を選んだ猪八戒網は、低コストな運営を続けながらサイトの改善を続けます。1年経つと、注文件数が徐々に上昇をはじめます。「週に四日も注文があれば最高」は「毎日一万元(約15万円)で飯は食える」状態まで改善されました。

数年後には、競合を抜き去り、クラウドソーシングサイトのトップに立ちます。いまや猪八戒網は評価額10億ドルを上回るユニコーン企業です。

この記事は

「中国ユニコーン列伝」という本の宣伝のために書いています。これまでの紹介はマガジンにまとめてあります。

この章は特に面白くて、朱明躍さんが起業した当時中国のインターネットで主に稼いでいるのは「百度のクローラーを騙してアドネットワークにアクセスさせて広告費を騙し取る商売だった」話とかも書きたかったのですが、あ、書いちゃった。

ほかにも、クラウドソーシングの問題点とその対処、収益構造(ロゴデザインを依頼する会社は、商標登録サービスも申し込んでくれる事が多い話とか)、についても語られています。

紹介しているぼくも面白くなってきたなあと思いながら書いているので、興味を持った方はぜひ本を買ってくださいませ。

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