紛らわしい語の識別③
このページは受験生のための古典文法の復習を目的としたものです。
★:古文漢文の基本知識に関する掲載一覧は古典読解のための知識確認:目次に戻ってご確認ください。
■ ここで扱っているのは文法問題のための文法、いわゆる紛らわしい語の識別です。下の目次から探したい識別に入って下さい。識別は無限にありますが、ここでは押さえておきたい10程度の識別を扱うことにします。
■ 別ページにある確認テストが根拠を以てきちんと解ければ、大丈夫だと思います。ます、そちらをやってみることをお勧めします。
◆:ナ行の識別
■1・「ぬ」の識別
A:識別の基本
「ぬ」の識別では次の3種類を識別したい。
①完了・強意「ぬ」終止
②打消「ず」連体
③ナ変終止活用語尾
★①②は、接続上、完了は連用形、打消は未然形、また接続で見分けられなくても、活用形が終止形なのか、連体形なのかで識別が可能。
B:識別のポイント
①完了・強意「ぬ」終止
・例文:竹を取ること久しくなりぬ(長い間竹を取っていた)
・→ 連用形に接続・「ぬ」が終止形である
②打消「ず」連体
・例文:たれこめて春のゆくへ知らぬも(ひきこもって春の移り変わりを知らないのも)
・→ 未然形に接続・「ぬ」が連体形である
③ナ変終止形活用語尾
・例文:必ず先立ちて死ぬ(必ず先立って死ぬ)
・→ ナ変動詞「死ぬ・往ぬ」の一語のまとまりを確認する
C:例文での基本演習
次の各文の「ぬ」の用法を確認!
ア:法師ばかりうらやましからぬものはあらじ
イ:心あわただしく散り過ぎぬ
ウ:思ひよらぬ道ばかりはかなひぬ
エ:春来ぬと人は言へどもうぐひすの鳴かぬかぎりはあらじとぞ思ふ
オ:あるいはほのほにまぐれてたちまちに死ぬ
カ:大納言になりたまひぬ
キ:暮れぬれば参りぬ
ク:春や昔の春ならぬ
ケ:あるいはおのが行かまほしき所へいぬ
コ:山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば
サ:あはれとも言ふべき人は思ほへで身のいたづらになりぬべきかな
シ:来ぬ人をまつほの浦の夕凪に焼くや藻塩の身もこがれつつ
ス:日もくれぬべし
セ:日も暮れぬ時
ソ:日も暮れぬに
タ:日ぞ暮れぬ
解答
ア=打消・イ=完了・ウ=打消・完了・エ=完了・オ=ナ変語尾・カ=完了・キ=完了・ク=打消・ケ=ナ変語尾・コ=完了・サ=強意・シ=打消・ス=強意・セ=打消・ソ=打消・タ=打消
■2・「ね」の識別
A:識別の基本
「ね」では次の3種類の語を識別したい。
①完了・強意「ぬ」命令
②打消「ず」已然
③ナ変終止活用語尾
(④奈良時代の願望の終助詞「ね」)
基本的には、4「ぬ」の識別と同じで、①②は、接続上、完了は連用形、打消は未然形、また接続で見分けられなくても、活用形が命令形なのか、已然形なのかで識別が可能。ただ命令形や已然形は文章中に出て来る頻度が少なく、馴染みがないので注意が必要である。補足的に④奈良時代の願望の終助詞「ね」を加えておく。
B:識別のポイント
①打消「ず」已然
・例文:伝え承るこそ、心も詞も及ばれね(伝え聞くと心でもことばでも表現することが出来ない)
・→ 未然形に接続・已然形である
②完了「ぬ」命令
・例文:かかる中をば別れね(こういう中を別れてしまえ)
・→ 連用形に接続・命令形である
③ナ変命令活用語尾
・例文:恋も死ねとや(恋い死ねとでも言うのか)
・→ ナ変動詞「死ぬ・往ぬ」であることを確認する
④奈良時代の願望の終助詞「ね」
・例文:名告らさね(名を告げてほしい)
・→ 未然形接続
C:例文での基本演習
次の各文の「ぬ」の用法を確認!
ア:往ね。 いま聞こえむ。
イ:にほ鳥のかづく池水こころあらば君にわが恋ふる情示さね
ウ:まことにおろかにも思ひ参らせねどえ参らせず
エ:玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする
オ:具しておはしましね
カ:右近だに訪れねば「あやし」と思ひ嘆き合へり
キ:月見ればちぢにものこそかなしけれわが身ひとつの秋にはあらねど
ク:わが君はわけをば死ねと思へかも逢ふ夜逢はぬ夜二つゆくらむ
解答
ア=ナ変語尾・イ=願望の終助詞・ウ=打消・エ=完了・オ=完了・カ=打消・キ=打消・ク=ナ変語尾
D・入試問題に挑戦
次の「ね」の文法的説明を選べ。
A:「人してこそいはせたまはめ。とく帰られね」
B:申しつぐべき人のさらにさぶらはねば
選択肢
ア 完了の助動詞「ぬ」の未然形
イ 完了の助動詞「ぬ」の已然形
ウ 完了の助動詞「ぬ」の命令形
エ 打消の助動詞「ず」の未然形
オ 打消の助動詞「ず」の已然形
カ 打消の助動詞「ず」の命令形
解答:A=ウ・B=オ
E:記述してみよう!「1ぬ・2ね」
各文の「ぬ」の文法的説明、識別の理由、全体の口語訳を記なさい。
A:おとなしく物知りぬべき顔したる神官
B:えも言はぬ深山の深き谷
C:秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
D:玉の緒よ絶えなば絶えねながらへばしのぶることの弱りもぞする
E:伝え承ることこそ心もことばも及ばれね
解答
A:おとなしく物知りぬべき顔したる神官
・強意の助動詞「ぬ」の終止形
・連用形に接続(終止形である)
・年配のよくものを知っていそうな(きっとものを知っているだろうと見える)神官
B:えも言はぬ深山の深き谷
・打消の助動詞「ず」の連体形
・未然形に接続(連体形である)
・何とも言えないほど深い山の中の深い谷
C:秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
・完了の助動詞「ぬ」の終止形
・引用の格助詞「と」の上は終止形(したがって「来」は連用形で「き」と読む)
・秋が来たと目にははっきり見えないけれども風の音に思わずはっとすることだ
D:玉の緒よ絶えなば絶えねながらへばしのぶることの弱りもぞする
・完了の助動詞「ぬ」の命令形
・第二句で切れている→未然連用同形接続識別不能:文脈上命令(放任法)
・私の命よ絶えるなら絶えてしまえ。生きながらえればこらえられずに恋を人に知られてしまうといけないから
E:伝え承ることこそ心もことばも及ばれね
・打消の助動詞「ず」の已然形
・「こそ」の結びで已然形。接続では別不能
・伝え承ること(内容)は心でも言葉でも表すことができない
■3・「なむ」の識別
A:識別の基本
「なむ」については次の四種類を識別したい。
①係助詞
②終助詞:他への願望
③強意「ぬ」未+「む」
④ナ変未然活用語尾+「む」
B:識別のポイント
①係助詞
・例文:名をばさかきの造となむ言ひける(名をさかきの造と言った)
・→ 係り結びを確認する(結び省略のケースに注意)ことや、係り結びの用法が「強意」なので除いても文意が成立することなどが識別のポイントとして言われる。普段から音読を繰り返して学習すると自然に「強意」のニュアンスは分かるのではと思うが、現実はそうでもないようだ。
完璧ではないが一番わかりやすいのは接続だと思う。係助詞「なむ」は種々の語に接続してしまう語だが、名詞・助詞に接続していれば係助詞だということは確実で、用例としても非常に多い。必要条件に過ぎないが、いい手がかりにはなる。
細かいことだが、A:美しかりなむ・B:美しくなむ、など補助活用を持つ語の連用形に「なむ」が続いている場合に混乱するようだ。これは補助活用は助動詞を接続させるためにあると考えれば、Aの「な」は助動詞であり、Bは助動詞ではないので係助詞「なむ」だと考えることができる。(C例文→ソタチ)
②終助詞:他への願望
・例文:いつしか梅咲かなむ(早く梅が咲いて欲しい)
・→ 未然形に接続することを押さえればよい。他に対する願望(~してほしい)は文章読解の上でも欠かせない大事な用法である。
③強意「ぬ」未+推量 or 意志「む」
・例文:百千の家も出で来なむ(百千の家もきっとできるだろう)
・→ 連用形に接続することを押さえる。「ぬ+む」であり「ぬ」が連用形接続であるからだが、推量系統の助動詞の上にある「ぬ」は強意であることも明確に押さえたい。また「む」は推量である場合も(きっと~だろう)、意志である場合も(ぜひとも~したい)ある。
④ナ変未然活用語尾+推・意「む」
・例文:願はくは花の下にて春死なむ(できることなら桜の下で春死にたい)
・→ ナ変動詞「死ぬ・往ぬ」の活用語尾なので、その一語のまとまりを確認すればよい。
★覚えやすい比較例文
①梅なむ咲く・梅咲くなむ
②梅咲かなむ
③梅咲きなむ
④梅の下にて春死なむ
C:例文での基本演習
次の各文の「なむ」は上の①~④のどれに該当するか。
ア:高砂の尾の上の桜咲きにけり外山のかすみたたずもあらなむ
イ:見る人もなき山里の桜花外の散りなむのちぞさかまし
ウ:ものは少し覚ゆれども、腰なむ動かれぬ
エ:髪もいみじく長くなりなむ
オ:早く往なむとて
カ:飛び降るるとも降りなむ
キ:このわたりになむ住みはべりし
ク:雪降らなむ
ケ:いまはただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならで言ふよしもがな
コ:散りなむ後ぞ恋しかるべし
サ:惟光とく参らなむ
シ:橋を八つ渡せるによりてなむ八橋とぞ言ひける
ス:死なば一所で死なむ
セ:扇に書き付けてなむ持たる
ソ:花美しくなむ
タ:花美しかりなむ
チ:花美しからずなむ
ツ:夕暮れのまがきは山と見えななむ
テ:あやしと思ひてなむ
解答
ア=終助詞・イ=強意+推量・ウ=係助詞・エ=強意+推量・オ=ナ変語尾+む・カ=強意+推量・キ=係助詞・ク=終助詞・ケ=強意+意志・コ=強意+推量・サ=終助詞・シ=係助詞・ス=ナ変語尾+む・セ=係助詞・ソ=係助詞・タ=強意+推量・チ=係助詞・ツ=終助詞・テ=係助詞
D:入試問題
■次の「なむ」と同じ用法のものはどれか。
(中宮が内裏に)入らせ給はぬさきに雪降らなむ
選択肢
①来む世には虫に鳥にもわれはなりなむ
②かかる御使ひの蓬生の露分け入り給ふにつけても恥づかしうなむ
③春立てば消ゆる氷の残りなく君が心はわれにとけなむ
④その初めを思へばかかるべくなむあらぬ
解答=「とく」は未然連用が同形であるので文脈判断。「春になって残りなく消える氷のように(「の」は比喩)あなたの心が私に溶けてほしい」という意。→3
E:記述してみよう
次の「なむ」について文法的説明、識別の理由、口語訳を記しなさい。
A:いつしか梅咲かなむ。
B:願はくは花の下にて春死なむ(その望月の如月のころ)
C:昔人は、かくいちはやきみやびをなむしける。
D:(家にても宮仕へにても)会はでありなむと思ふ人来たるに
E:小倉山峰のもみぢ葉心あらばいまひとたびの行幸待たなむ
解答
A:いつしか梅咲かなむ。
・他に対する願望を表す終助詞
・未然形に接続
・早く梅が咲いてほしい
B:願はくは花の下にて春死なむ(その望月の如月のころ)
・ナ変動詞「死ぬ」の活用語尾に意志の助動詞「む」の終止形が付いたもの
・死ぬという動詞の一語のまとまりから
・願いがかなうなら桜の下で春死にたい
C:昔人は、かくいちはやきみやびをなむしける。
・強意を表す係助詞
・助詞に接続し、係り結びが確認できる
・昔の人はこのように激しい雅(な振る舞いを)したものだった
D:(家にても宮仕へにても)会はでありなむと思ふ人来たるに
・強意の助動詞「ぬ」の未然形に意志の助動詞「む」の終止形がついたもの
・連用形に接続
・(決して)会いたくないと思っている人が来たときに
E:小倉山峰のもみぢ葉心あらばいまひとたびの行幸待たなむ
・他に対する願望を表す終助詞
・未然形に接続
・小倉山の峰のもみじ葉よ、お前にもし心があるなら、もう一度の天皇の行幸を散らずに待っていてほしい
■4・「なり」の識別
A:識別の基本
「なり」では次の6種類の語を識別したい。
①断定の助動詞
②存在の助動詞
③伝聞の助動詞
④推定の助動詞
⑤ラ四動詞
⑥形容動詞の活用語尾
B:識別のポイント
①断定「なり」
・例文:泰盛は双なき馬乗りなりけり(泰盛は二人といない馬乗りの名手であった)
・→ 体言・連体形に接続することを押さえる。詳しくは③④伝聞推定のところで説明する。
②存在「なり」
・例文:駿河なる宇津の山辺(駿河にある宇津の山辺)
・→ 存在とも所在とも言われる。体言・連体形に接続。広く言えば断定の一用法のような位置づけであるが、地名や場所を表すことばの下にあって「~にある」という意を表す。
③伝聞「なり」
・例文:男もすなる日記といふものを(男も書くという日記というものを)
④推定「なり」
・例文:弓の音すなり(弓の音がするようだ)
・→ まず、終止形接続(ラ変には連体形)であることを押さえる。断定の「なり」が体言・連体形の接続であるので、その違いが2つを見分ける大きな手がかりとなる。ただ、接続している語の終止形・連体形が同型の場合(四段活用など)は文脈判断となる。・断定と伝聞推定の区別で言えば、「あ(ん)なり・ざ(ん)なり」など撥音便の下にあるときは伝聞推定の助動詞である。
・→ 伝聞と推定の識別は、基本的には伝聞なら「~そうだ」「~という」など伝え聞いたニュアンスが読めれば伝聞。推定は「音あり」が語源だと言われ、聴覚に関連する推定が基本なので、音や声がそこにあれば推定である。
⑤ラ四「なる」連用
・例文:火桶の火も白き灰がちになりてわろし(火桶の火も白い灰がちになってよくない)
・→ これは特に意識せずとも分かる。「為る・成る」という意味の有無を確認する。
⑥形容動詞終止活用語尾
・例文:ぬかづき虫またあはれなり(ぬかづき虫もまたけなげである)
・→ 形容動詞はある状態を表す語なので「いと:たいそう」という副詞で修飾できるため、「いと」をつけて意味成立を確認する。
それが一番わかりやすい。ただこの「なり」の語幹の部分を体言と考え、断定の助動詞と間違うことがあるが、例えば「静かなり」の「静か」は名詞ではない。名詞ならば「が」をつけて主語になるはずだが、「静かが」という表現は成立しない。したがって「なり」の上のことばに「が」をつけて意味が成立しないことを確認する方法もある。
C:例文での基本演習
次の「なり」はAの①~⑥のどれに該当するか。
ア:出でてみればこの雀なり
イ:仏には人のなりたるなり
ウ:恐ろしなんどもおろかなり
エ:女もしてみむとてするなり
オ:笛のいとをかしく吹きすまして過ぎぬなり
カ:わが庵は都の辰巳しかぞすむ世を宇治山と人は言ふなり
キ:この子いと大きになりぬれば
ク:山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり
ケ:昔より賢き人の富めるは稀なり
コ:秋の野に人まつむしの声すなりわれかと行きていざとぶらはむ
サ:筑波嶺の峰より落つるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる
シ:奥山に猫またといふものありて人を食ふなると人の言ひけるに
ス:今日をかも都なりせば見まく欲り
セ:世の中に物語といふもののあんなるを
ソ:駿河国にあなる山
タ:うづら鳴くなり深草の里
チ:山がかる道をわれは行くなり
ツ:その人遠き所へ行くなり
解答
ア=断定・イ=動詞・断定(伝聞)・ウ=形容動詞語尾・エ=断定・オ=推定・カ=伝聞・キ=動詞・ク=断定・ケ=形容動詞語尾・コ=推定・サ=動詞・シ=伝聞・ス=存在・セ=伝聞・ソ=伝聞・タ=推定・チ=断定・ツ=伝聞
C:入試問題に挑戦
次の「なり」はAの①~⑥の文法的説明のどれに該当するか。
A:まがまがしく、尼にならむとのたまふなる、まことか。ゆめゆめしかなおぼしそ。
B:恨みこし背かほしき世なりとも みるめかづかぬあまになるなよ
C:あまならでそれにもしほは垂るれどもうきめかづくとまたはなるべき
解答
A=動詞・伝聞・B=断定・動詞・C=断定・動詞
E:記述してみよう
次の各文の「なり」の文法的説明、識別の理由、全体の口語訳を記なさい。
A:陸奥の国の奥の佐官といふものの妻になりてや往なまし。
B:宮の御腹にも姫君はおはせざなるに、
C:夕されば野辺の秋風身にしみてうづら鳴くなり深草の里
D:これやげに宿世といふものならむ
E:内侍所の御鈴の音は、めでたくいうなるものなり。
解答
A:陸奥の国の奥の佐官といふものの妻になりてや往なまし。
・ラ四動詞「なる」の連用形
・「為る」(「成る」)を意味が確認
・陸奥の国の奥の佐官というものの妻になって行ってしまおうかしら
B:宮の御腹にも姫君はおはせざなるに、
・伝聞の助動詞「なり」の連体形
・(ラ変連体ゆえ接続から識別不可能)撥音便の下の「なり」は伝聞推定。文脈より伝聞。
・宮の御腹(から生まれたお子様)にも姫君はいらっしゃらないそうなので
C:夕されば野辺の秋風身にしみてうづら鳴くなり深草の里
・推定の助動詞「なり」の終止形
・(連体終止同形のため接続から識別不可能)文脈より音に関係した推定
・夕方になると野辺の秋風が身にしみて感じられ、深草の里には鶉が寂しく鳴くようだ
D:これやげに宿世といふものならむ
・断定の助動詞「なり」の未然形
・体言に接続し「である」と意味をとり得る
・これが本当に宿世というものなのだろう
E:内侍所の御鈴の音は、めでたくいうなるものなり。
・ナリ活用の形容動詞「優(いう)なり」の活用語尾
・「いと」(たいそう)をつけて文意成立
・内侍所で女官が鳴らす鈴の音はすばらしく優美なものである
■5・「に」の識別
A:識別の基本
「に」は次の七種類のことばを識別したい。
①格助詞
②接続助詞
③完了の助動詞「ぬ」の連用形
④断定の助動詞「なり」の連用形
⑤形容動詞の連用形の活用語尾
⑥ナ変動詞の活用語尾
⑦副詞の一部
「に」はもっとも大事な識別。特に➀②④➄の区別には特に注意を払いたい。
B:識別のポイント
①格助詞
・例文:駿河の国にいたりぬ(駿河の国に着いた)
・→ ➀体言、連体形に接続(連体形接続の場合は連体形の下に「時、所」等の名詞が補えることを確認する)・→ ②格助詞の働きとして「に」を含む分節が下の用言にかかっていくことを確認する。
★→基本的には格助詞の「に」は現代語と同じ働きなので、「格助詞」という名前に翻弄されず普通に考えれば間違わないはずだ?。①がよく言われるが、他の「に」との違いをわかりやすく理解するためにも、②の格助詞の働きを押さえるといいと思う。格助詞「に」の働きは、例えば「奈良に行く」のように「に」を含む文節が下の用言にかかっていくことにあり(連用修飾格)、したがって「に」で意味を切ることができない。「下にかかる」というキーで考え、かかっていく用言を探すと良い。
②接続助詞
・例文:涙落つとも覚えぬに(涙が落ちるとも思われないのに)
・→ ➀連体形に接続(連体形の下に時、所等の名詞が補えない)・→ ②接続助詞の働きは「に」の前後をつなげること。「ので・のに・と(たところ)」と訳せることを確認する。
★→①の格助詞の所にも書いたが、接続助詞の働きは「つなぐ」ということであり、三つの訳を当てはめて成立するか否かを確認すればよい。ただし、連体形+「に」が格助詞か接続助詞か見分けが付かない場合は実際には非常に多い。
③完了の助動詞「ぬ」の連用形
・例文:幼き人は寝入り給ひにけり(幼い人は寝入ってしまわれた)
・→ 連用形に接続することが基本的な見分け方であるが、「にき・にけり・にたり」など下に過去完了を伴う場合は基本的に完了と考えられる。
④断定の助動詞「なり」の連用形
・例文:異心ありてかかるにやあらむ(浮気心があってこのようにするのだろうか)
・→ ➀体言、連体形に接続・★→ ②「に」の下に「あり」がある。「なり」は本来「に・あり」であり、下に「あり」を伴うことが多い。ただし「あり」が省略される場合もあり、また「あり」が「侍り・候ふ・おはす」などの敬語に変化している場合があるので注意が必要である。・★→ ③また、「に‐あり」を「である(であろうか・ではない)」と言って内容が成立することも確認する。例えば「犬にありける」は断定だが、「犬、家にあり」は「に‐あり」とあっても格助詞である。下に「あり」があり「である」と訳せるという両方の条件を確認したい。・→ また、「にて(であって)」などすべてのケースで「あり」を伴うわけではないことも承知しておく。
⑤形容動詞の連用形の活用語尾
・例文:なほあはれに情深し(やはりしみじみと趣深い)
・→ 4・「なり」の識別参照:「いと」をつけて意味成立(形容動詞は副詞によって修飾され得る)を確認。
⑥ナ変動詞の連用形の活用語尾
・例文:据ゑなほして往にければ(据え直して言ってしまったので)
・→ ナ変「死ぬ・往ぬ」の一語のまとまり確認する。
⑦副詞の一部
・例文:げにいとあはれなり(まことにたいそう趣深い)
・→ 「げに」から「に」を取ってしまうと意味が成立しないように、「に」を取れば不成立であることを確認する。ただし、形容動詞が副詞化したものはどちらとも言えないケースがあるが、文法問題としては注意を払わずともよいだろう。
C:例文での基本演習
次の各文の「に」は上の①~⑦のどれに該当するか。
ア:朝日はなやかにさしいづ
イ:古都はすでに荒れて
ウ:ま静かに、御局にさぶらはん
エ:家に至りて門に入るに
オ:つらきものにやあらむ
カ:せむかたなく思ひなげくに物語のゆかしさもおぼえずなりぬ
キ:その人の名、忘れにけり
ク:これはしわざにこそありけれ
ケ:馬より落ちて死ににけり
コ:国の守にからめられにけり
サ:涙のこぼるるに目も見えず
シ:さらに言ふことなし
ス:奥山に猫またといふものありて人を食ふなると人の言ひけるに
セ:(女は)待ちわびたりけるに、いとねむごろに言ひける人に、「今宵あはむ」と契りたりけるに、この男来たりけり
ソ:あづさ弓引けど引かねど昔より心は君によりにしものを
タ:まことにただ人にはあらざりけるとぞ
チ:みなを張りかへ候はんは、はるかにたやすく候ふべし
ツ:この俊寛も僧なれども心もたけく、おごれる人にて、よしなき謀反にくみしけるにこそ
解答
ア=形容動詞語尾・イ=副詞の一部・ウ=形容動詞語尾・格助詞・エ=格助詞・格助詞・接続助詞・オ=断定・カ=接続助詞・キ=完了・ク=断定・ケ=ナ編語尾・完了・コ=格助詞・完了・サ=接続助詞・シ=副詞の一部・ス=格助詞・接続助詞・セ=接続助詞・形容動詞語尾・格助詞・格助詞(接続助詞)・ソ=格助詞・完了・タ=断定・チ=形容動詞語尾・ツ=断定・格助詞・断定
D:入試問題に挑戦
1・次の「に」の中で種類と異なるものをひとつ選べ(センター試験)
A:桐院の左大将出だされたりける絵に
B:世は皆夢の中のうつつとこそ思ひ捨つることなるに、こはそも何事のあだし心ぞや
C:笠宿りに立ち寄るべき心地にもおぼしめさず
D:御車に召されて
E:年久しく住み荒らしたる宿のものさびしげなるに、撥音気高く、青海波をぞ調べたる
★→この問題は格助詞と接続助詞の識別を問うている。Eに関しては「の」を同格の格助詞と捉え、「さびしげなる宿に(家で)→青海波を調べたる(演奏した)」と考える。後にある補充問題のG「八重葎」の歌も同様である。
2・次の「に」の説明として適当な組み合わせを選べ。(センター試験)
A:おのづから慰むかたもあるにや
B:ある昼つかた、いとしめやかにて
C:過ぎにしことども繰り返し思ほし出でつつ
D:小さき童女の御前に候ひしを、
選択肢
ア:A接続助詞・B格助詞・C完了の助動詞・D断定の助動詞
イ:A接続助詞・B格助詞・C断定の助動詞・D断定の助動詞
ウ:A格助詞・B形容動詞の活用語尾・C完了の助動詞・D断定の助動詞
エ:A断定の助動詞・B形容動詞の活用語尾・C断定の助動詞・D格助詞
オ:A断定の助動詞・B形容動詞の活用語尾・C完了の助動詞・D格助詞
3・次の「に」の文法的説明を選べ。(立教)
A:月いでにけりな
B:御簾まきあげてはしにいざなひ聞こえ給へば
C:思しいりたるに、(更にくどくど申し上げると)いとどしかるべければ
選択肢
ア 断定の助動詞「なり」の連用形
イ 格助詞
ウ 形容動詞
エ 接続助詞
オ 完了の助動詞「ぬ」の連用形
4・次の「に」を文法的に説明せよ。(東京都立大学)
A:(物語を読むことが出来ないので)思ひ嘆かるるに、
B:いとうつくしう生ひなりにけり
C:わづかに見つつ
D:盛りにならば御車に召されて
E:浮舟の女君のやうにこそあらめ
解答
1=B
2=オ
3:A=オ・B=イ・C=エ
4(簡略解答)A=接続助詞・B=完了の助動詞・C=形容動詞活用語尾・D=形容動詞活用語尾(格助詞)・E=断定助動詞
【補充問題】次の和歌中の「に」を識別しなさい。
A:田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪はふりつつ
B:みちのくのしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに
C:月見ればちぢにものこそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど
D:契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは
E:あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな
F:しのぶれど色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで
G:八重葎しげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり
H:夜をこめて鳥のそら寐ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ
解答
A=格助詞
B=格助詞・完了の助動詞・接続助詞
C=形容動詞活用語尾・断定の助動詞
D=副詞
E=形容動詞活用語尾
F=格助詞・完了の助動詞
G=格助詞・完了の助動詞
H=副詞
E:記述してみよう!
各文の「に」の文法的説明、識別の理由、全体の口語訳を記なさい。
A:帝、さうざうしと思し召したるにや。
B:あはれにいとほしきものに思はれて、
C:懐にさし入れて、まかり出でにけり。
D:涙落つともおぼえぬに、枕浮くばかりになりにけり。
E:心なき身にもあはれは知られけり(鴫たつ沢の秋の夕暮)
解答
A:帝、さうざうしと思し召したるにや。
・断定の助動詞「なり」の連用形
・下に「あり」が省略されており、「に」を「である」と言い切って内容的欠損がない
・帝は(何となく)物足りない(心寂しい)とお思いになったのであろうか。
B:あはれにいとほしきものに思はれて、
・ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の連用形
・「いと」(たいそう)をつけて文意成立
・しみじみと気の毒なものに(自然と)思われて
C:懐にさし入れて、まかり出でにけり。
・完了の助動詞「ぬ」の連用形
・連用形(未然形と同形だが)に接続し、下に過去の助動詞「けり」を伴う
・懐に入れて退出した
D:涙落つともおぼえぬに、枕浮くばかりになりにけり。
・逆接の確定条件を表す接続助詞
・連体形に接続し、「に」の上下の内容を「のに」という逆接でつないでいる
・涙が落ちるとも思われないのに、枕が涙で浮くほどになった
E:心なき身にもあはれは知られけり(鴫たつ沢の秋の夕暮)
・対象を表す格助詞
・体言(連体形接続でもある)に接続し、「に」を含む文節が「知る」にかかっていく
・情趣を解することのない(出家の)この身にもしみじみとした情趣が感じられることだ
■6・「にて」の識別
A:識別の基本
「にて」で識別したいのは次の三つである。
①格助詞
②断定の助動詞+接続助詞
③形容動詞の活用語尾+接続助詞
B:識別のポイント
まず、「にて」を「であって」と訳せるかで①と②③を区別。③は「であって」と訳せても「いと」をつけて成立という形容動詞の特徴を優先させる。
①格助詞「にて」
・例文:この家にて生まれし女子の(この家で生まれた女の子が)
・→ 「であって」と訳せない。格助詞は下の用言に「かかっていく」連用修飾格の働きをする助詞であり、「にて」の部分で「であって」と切ることができない。場所・時・手段・原因・資格などを表すが、原因(によって)・資格(として)の用法は、「であって」と訳せてしまえそうな紛らわしさを持っている。注意したい。
②断定の助動詞+接続助詞
・例文:月の都の人にて、この国の人にはあらず(私は月の都の人であって、この国の人ではない)
・→ 「であって」と訳して文意を損ねない(③との違いは、②は「いと」をつけて不成立)
③形容動詞の活用語尾+接続助詞
・例文:声は幼なげにて文読みたる(声は幼い感じであって書物を読んでいるのは)
・→ 「であって」と訳せるが、「いと(たいそう)」をつけて意味成立すれば形動語尾
C:例文での基本演習
次の各文の「にて」はAの①~③のどれに該当するか。
ア:さのみ目にて見るものかは
イ:これも世に静かにて
ウ:大路みたるこそ、祭見たるにてはあれ。
エ:故姫君は十ばかりにて殿に後れたまひしほど
オ:月の都の人にて父母あり
カ:潮海のほとりにてあざれあへり。
キ:深き川を舟にて渡る
ク:老いにてあるわが身の上に病をと加へてあれば
ケ:父はなほびとにて、母なむ藤原なりける。
コ:竹の中におはするにて知りぬ
サ:面つきいとらうたげにて、眉のわたりうちけぶり
シ:ただ人にておほやけの御後見をせさせむ
ス:かばかりのあやまちにてかこの渚に命をば極めむ
セ:いみじうあはれにて、かなしきことなり。
ソ:一の皇子は右大臣の女御の御腹にて、よせ重く
タ:かたじけなき御心ばへのたぐひなきをたのみにてまじらひたまふ。
チ:本の妻はその国の人にてなむありける。
解答
ア=格助詞・イ=形動詞語尾+て・ウ=断定+て(下に「あり」)・エ=格助詞・オ=断定+て・カ=格助詞・キ=格助詞・ク=完了+て・ケ=断定+て・コ=格助詞・サ=形動詞語尾+て・シ=格助詞・ス=格助詞・セ=形動詞語尾+て・ソ=断定+て・タ=格助詞・チ=断定+て(下に「あり」)
E:記述してみよう!
各文の「にて」の文法的説明、識別の理由、全体の口語訳を記なさい。
A:さのみ目にて見るものかは。
B:父はなほびとにて、母なむ藤原なりける。
C:故姫君は十ばかりにて殿におくれ給ひしほど、
D:面つきいとらうたげにて
解答
A:さのみ目にて見るものかは。
・手段を表す格助詞
・「目で(手段)」が「見る」にかかっていくから(「であって」とは訳せない)
・そのように目だけで見るものだろうか。いやそうではない。
B:父はなほびとにて、母なむ藤原なりける。
・断定の助動詞「なり」の連用形に接続助詞「て」が付いたもの
・「であって」と訳し、文意に欠損がない。
・父は普通の家柄の人であって、母は藤原の出身であった。
C:故姫君は十ばかりにて殿におくれ給ひしほど、
・時を表す格助詞
・「十ばかりで」が「おくる」にかかっていくから(「であって」とは訳せない)
・故姫君は十歳くらいで殿に先立たれなさったときは
D:面つきいとらうたげにて
・ナリ活用形容動詞「らうたげなり」の連用形の活用語尾に接続助詞「て」が付いたもの
・「いと」を付けて成立
・顔立ちはたいそう可愛らしくて
E:梅の花咲きて散りなば桜花継ぎて咲くべくなりにてあらずや
・完了の助動詞「ぬ」の連用形に接続助詞「て」が付いたもの
・連用形に接続
・梅の花が咲いて散ったならば桜の花が続いて咲きそうになっているではないか
◆:ラ行の識別
■7・「る・れ」の識別
A:識別の基本
「る・れ」の識別として次の四つを挙げる。
①受・可・尊・自「る」終止
②完了・存続「り」連体
③ラ四終止・連体活用語尾
④上二・下二連体活用語尾の一部
識別としては➀②の識別と➀の意味の識別が重要。③④については一応区別したが動詞の一部と考えればよい。
B:識別のポイント
①受・可・尊・自「る」終止
・例文:冬はいかなる所にも住まる(冬はどんなところでも住むことが出来る)
・→ 未然形に接続・意味の判別も大切にしたい。
②完了・存続「り」連体
・例文:悪しと思へるけしきもなくて(悪いと思っている様子もなくて)
・→ サ変未然・四段已然に接続(さみしいと覚える)。ラ行の識別ではキーになる大事な接続である。
③ラ四終止・連体活用語尾
・例文:すくすくと大きになりまさる(すくすくと大きくなっていく)
④上二・下二連体活用語尾の一部
・例文:たづぬる人の琴の音か(尋ねている人の琴の音だろうか)
・→ 一語のまとまりを考えればよい。
C:例文での基本演習
次の各文の「ぬ」は何か、識別しよう!
ア:船人もみな子たかりてののしる
イ:ひとつ家のやうなれば望みてあづかれるなり
ウ:かの大納言いづれの船にか乗らるべき
エ:道知れるひともなくてまどひ行きけり
オ:舎人が寝たる足を狐に食はる
カ:民間の愁ふるところを知らざっしかば
キ:小野道風の書ける和漢朗詠集とて持ちたりけるを
ク:洛に帰りて貞徳の門人となつて世に知らる
ケ:こはいかに、いかにかては立ちたまへるぞ
コ:はじめて過ぎぬるかたの誤れる事は知らるなれ
サ:しだのなにがしとかやしるところなれば
シ:袋だに上ぐるだにあやしく重たきかな
解答
ア=動詞の一部・イ=完了:・ウ=尊敬・エ=存続・オ=受身・カ=動詞の一部・キ=完了・ク=受身・ケ=存続・コ=助動詞の一部・サ=動詞の一部・シ=動詞の一部
D:入試問題に挑戦
1・次の「る」の説明として最も適当な組み合わせを次より選べ。
A 世の中にありとある事にふれて
B 恋しかるべきことは恋しく
C 富める人は貧しき人の心を知らず
D 子を思ふ道に惑ひぬるかな
選択肢
ア:A:下二段動詞の一部・B:接尾語の一部・C:完了の助動詞・D:完了の助動詞の一部
イ:A:ラ変動詞の一部・B:形容詞の活用語尾の一部・C:推量の助動詞の一部・D:下二段動詞の一部
ウ:A:連体詞の一部・B:ラ変動詞の一部・C:推量の助動詞の一部・D: 受身の助動詞
エ:A:ラ変動詞の一部・B:形容詞の活用語尾の一部・C:完了の助動詞・D:完了の助動詞の一部
オ:A:下二段動詞の一部・B:接尾語の一部・C:推量の助動詞の一部・D 下二段動詞の一部
2・次の「れ」の文法的説明として最も適当なものを選べ。
A:あはれとは見たてまつれど
B:はづかしくてもの申されず
C:いときよげに縫ひいで給へれば
選択肢
ア:動詞(補助動詞)の活用形の一部
イ:存続・完了の助動詞の活用形
ウ:可能をあらわす助動詞の活用形
エ:尊敬をあらわす助動詞の活用形
オ:受身あらわす助動詞の活用形
解答
1=エ・2:A=ア・B=ウ・C=イ
E:記述してみよう。
各文の「る・れ」の文法的説明、識別の理由、全体の口語訳を記なさい。A:つくづくとながめ臥したまへるに、
B:かくてこそ見たてまつるべかりけれ
C:右の大臣のただひとりかしづかるらむ女
D:とどめむもいとほしかるべし。
E:(かぐや姫は)せちにもの思へるけしきにて、
F:殿、「いかに歌は遅きぞ」と仰せられければ、
G:大納言参り給へれば
H:ひどくのがれ申し給ひけれど
I:はかばかしくもあらぬ(歌)が書かれて候はむ、
J:折々のこと思い出で給ふに、よよと泣かれ給ふ。
解答
A:つくづくとながめ臥したまへるに、
・存続(完了)の助動詞「り」の連体形
・四段活用の已然形に接続
・深く物思いに沈んで横になっていらっしゃる(と?)
B:かくてこそ見たてまつるべかりけれ
・ラ四補助動詞「奉る」の終止形の活用語尾
・「奉る」という語の一語のまとまりから
・このようにして見申し上げるのがよいのだなあ
C:右の大臣のただひとりかしづかるらむ女
・尊敬の助動詞「る」の終止形
・未然形に接続
・右大臣がただ一人大切にお世話なさっているという娘(「らむ」「けむ」+体言→伝聞婉曲)
D:とどめむもいとほしかるべし。
・シク活用形容詞「いとほし」の連体形の(活用語尾の)一部
・「いとほし」という語の一語のまとまり
・ひきとどめるようなのも気の毒だろう
E:(かぐや姫は)せちにもの思へるけしきにて
・存続の助動詞「り」の連体形
・四段活用の已然形に接続
・ひどく物思いをしている様子であって
F:殿、「いかに歌は遅きぞ」と仰せられければ、
・尊敬の助動詞「らる」の連用形の一部
・「らる」という助動詞の一語のまとまり
・殿が「どうして歌を詠むのが遅いのか」とおっしゃったので
G:大納言参り給へれば
・完了の助動詞「り」の已然形
・四段活用の已然形に接続
・大納言が参上なさったので
H:ひどくのがれ申し給ひけれど
・ラ下二動詞「のがる」の連用形の活用語尾
・「のがる」という語の一語のまとまり
・ひどくご辞退申し上げなさったけれど
I:はかばかしくもあらぬ(歌)が書かれて候はむ、
・受身の助動詞「る」の連用形
・未然形に接続
・すばらしくもない(私の)歌が書かれるのでしょう
J:折々のこと思い出で給ふに、よよと泣かれ給ふ。
・自発の助動詞「る」の連用形
・未然形に接続
・折々のことを思い出しなさるにつけて、よよと(自然と)泣かれなさる
■8・「らむ」の識別
A・識別の基本
「らむ」の識別は次の四つを押える。
①現在推量「らむ」
②ラ四・ラ変動詞未然活用語尾
③形容詞型活用未然活用語尾(一部)+「む」
④完了・存続「り」未然+「む」
★→ 文中に「らむ」が出て来た時、現在推量の「らむ」と思いがちである。まず判断としては「らむ」の接続は終止形(ラ変には連体形)であるので、「らむ」の上が終止形(ラ変には連体形)かどうかを判断する。そうであれば現在推量「らむ」である。その上で一語としてのまとまりを考えれば、②③は分かる。「らむ」の上が四段已然(サ変未然)なら「り」が関係していると判断する。「り」は7・「る・れ」の識別で見たが、ラ行の識別のキーである。
また、今、現在推量の「らむ」と言ったが、「らむ」には他に原因推量・伝聞婉曲もあるので、その意味も併せて区別したい。
B・識別のポイント
①現在推量「らむ」
・例文:夜半にや君がひとり越ゆらむ(この夜半にあなたが一人で越えているのでしょうか)
・→ 終止形(ラ変には連体形)に接続していることを確認する。推量・原因推量・伝聞婉曲の意味についても押える。
②ラ四・ラ変動詞未然活用語尾
・例文:夕べには朝あらむことを思ひ(夕方にはまた明朝のあるだろうことを思い)
・→ 一語のまとまりを考える(切り離せば不成立)
③形容詞(型活用)未然活用語尾(一部)+推量「む」
・例文:なにせむにか命も惜しからむ(どうして命が惜しいことがあろうか)
・→ 一語のまとまりを考える(切り離せば不成立)
④完了・存続「り」未然+推量「む」
・例文:あはれ知れらむ人に見せばや(情趣を解しているような人に見せたいものだ)
・→ サ変未然・四段已然に接続
C:例文での基本演習
次の各文の「らむ」はAの①~④のどれに該当するか。
ア:ひさかたのひかりのどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
イ:それを射あてたまへらむ人に奉らむ
ウ:懈怠の心あることを知らんや
エ:つれづれも慰む方なくては、いかが明かし暮らすべからむ
オ:逢坂の関の清水にかげ見えて今や引くらむ望月の駒
カ:内裏(うち)へ参らむ
キ:鸚鵡、いとあはれなり。人のいふらむ言をまねぶらむよ
ク:恋しからむことの堪へがたく、湯水飲まれず
ケ:こなたはあらはにや侍らむ
コ:おぼすらむ事、何事ぞ
サ:生けらむうちにぞゆづるべき
解答
ア=現在原因推量・イ=完了+む・ウ=動詞の一部+む・エ=助動詞の一部+む・オ=現在推量・カ=動詞の一部+む・キ=現在婉曲・現在伝聞・ク=形容詞の一部+む・ケ=補助動詞の一部+む・コ=現在推量・サ=存続+む
D:入試問題に挑戦
次の「らむ」の説明として適当なものを次より選べ。(同志社大学)
「五人の中に、ゆかしきものを見せ給へ(1)らむに、御心ざましまさりたりとて、仕うまつ(2)らむと、そのおはす(3)らむ人びとに申し給へ」選択肢
ア:現在推量の助動詞「らむ」の連体形
イ:現在推量の助動詞「らむ」の終止形
ウ:完了の助動詞「り」の未然形「ら」に助動詞「む」のついたもの
エ:動詞の活用語尾の未然形「ら」に助動詞「む」のついたもの
解答:1=ウ・2=エ・3=ア
E:記述してみよう!
各文の「らむ」の文法的説明、識別の理由、全体の口語訳を記なさい。
A:(風吹けば沖つ白波)たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ
B:こなたはあらはにやはべらむ
C:(鸚鵡いとあはれなり。)人の言ふ①らむことをまねぶ②らむよ。
D:多くの中には、誤りもなどかなからん
E:(あたら夜の月と花とを同じくは)こころ知れらむ人に見せばや
解答
A:(風吹けば沖つ白波)たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ
・現在推量の助動詞「らむ」の連体形
・終止形に接続
・竜田山をこの夜半にあなたがひとりで越えているのでしょうか
B:こなたはあらはにやはべらむ
・ラ変(補助)動詞「侍り」の未然形活用語尾に推量の助動詞「む」の連体形の付いたもの
・「侍り」の一語のまとまりから
・こちらは丸見えではありませんか
C:(鸚鵡いとあはれなり。)人の言ふ①らむことをまねぶ②らむよ。
・①現在の婉曲の助動詞「らむ」の連体形
・②現在の伝聞の助動詞「らむ」の終止形
・終止形に接続
・人が言うようなことをまねするということだよ
D:多くの中には、誤りもなどかなからん
・ク活用形容詞「なし」の未然形の一部に推量の助動詞「む」の連体形がついたもの
・「なし」の一語のまとまりから
・多くの中には、どうして誤りもないだろうか。いや誤りもあるだろう。
E:(あたら夜の月と花とを同じくは)こころ知れらむ人に見せばや
・存続の助動詞「り」の未然形に婉曲の助動詞「む」の連体形が付いたもの
・四段活用の已然形に接続
・情趣が分かっているような人に見せたいものだ
◆:その他の識別
■9・「し」の識別
A:識別の基本
「し」の識別で意識したいのは次の3つである。
①サ変連用
②過去「き」連体
③副助詞(強意)
このうち①②については日本人なら自然に理解できる。③の強意の副助詞の見分け方を押えたい。
B:識別のポイント
①サ変連用
・例文:田舎わたらひしける人の子ども(田舎まわりの行商をしていた人の子ども)
・→ 「する」という意味の有無を確認する
②過去「き」連体
・例文:昔ありし家はまれなり(昔あった家はまれである)
・→ 過去「~た」という意味を確認する
③副助詞(強意)
・例文:名にし負はば(名として持つなら)
・★→ この「し」については、強意なので除いても成立するという言い方でよく説明されるが、例えば例文の「名にし負はば」の「し」が強意なので除けるという判断はなかなか難しい。勿論、「し」が単独で使われることも多いが、「しも」「しぞ」「AしBば(例:人しなければ)」「VとしV(例:生きとし生けるもの)」の形で非常によく使われることを覚えておきたい。たとえば「まつとし聞かばいま帰り来む」は「待つ年」と誤解してしまいそうだが、「AしBば」の形で「待つと聞いたならばすぐに帰って来よう」ということである。
C:例文での基本演習
次の各文の「し」を識別しよう。
ア:とかくしつつののしるうちに夜更けぬ
イ:秋の木の葉しも散れるやうにぞありける
ウ:山へのぼりしはなにごとかありけん
エ:天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも
オ:立ち分かれいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む
カ:京に下りし時に、みな人子どもなかりき
キ:我をつらしと思ふことやありし
ク:島隠れ行く舟をしぞ思ふ
ケ:いかにわびしき心地しけむ
コ:来し方行く末も知らず、海にまぎれむとしき
サ:嵐にむせびし松も千年を待たで薪にくだかる
シ:家にあらばけに盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る
ス:妻子のためには恥をも忘れ、盗みもしつべきことなり
解答
ア=動詞・イ=副助詞・ウ=過去・エ=過去・オ=副助詞・カ=過去・キ=過去・ク=副助詞・ケ=動詞・コ=過去・動詞・サ=過去・シ=副助詞・ス=動詞
D:入試問題に挑戦
■ 次の「し」の文法的説明を選べ。
ア:(強い風が)少しなほりて出でむとし給へば、また同じやうになりぬ
イ:いとあやしくおぼして、もの問ひ給へば、神の御たたりとのみいふにさるべきこともなし
ウ:よろづの杜に額のかかりたるに、おのがもとにしもなきが悪しければかけむと思ふ
エ:なべての手して書かせむがわろく侍れば、われに書かせたてまつらむと思ふ
選択肢
A動詞・B動詞の一部・C形容詞・D形容詞の一部・E助動詞・F助動詞の部・G助詞・H助詞の一部
解答
ア=A・イ=B・D・ウ=G・エ=H
E:記述してみよう!
各文の「し」の文法的説明、識別の理由、全体の口語訳を記なさい。
A:聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ。
B:「あはれにかたじけなし」と思ふ。
C:寂しさはその色としもなかりけり(まき立つ山の秋の夕暮れ)
D:すずろ事をさへ言はせまほしうしたまふ。
E:(家にあればけに盛る飯を)草枕旅にしあれば椎の葉に盛る
解答
A:聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ。
・過去の助動詞「き」の連体形
・連用形に接続し、過去の意味が確認できる
・聞いていた以上に尊くていらっしゃったことです
B:「あはれにかたじけなし」と思ふ。
・ク活用形容詞「かたじけなし」の活用語尾
・「かたじけなし」という一語のまとまり
・「しみじみとありがたい(もったいない・畏れ多い)」と思う
C:寂しさはその色としもなかりけり(まき立つ山の秋の夕暮れ)
・強意を表す副助詞
・「し(も)」を除いても文意が成立するから。また「しも・しぞ」という形から。
・寂しさは特にどこが(どういう気配・様子が)寂しいというのでもないことだ
D:すずろ事をさへ言はせまほしうしたまふ。
・サ変動詞「す」の連用形
・「する」という動詞の意味が確認できる
・とりとめのない(つまらない)ことまでも言わせたいとしなさる
E:(家にあればけに盛る飯を)草枕旅にしあれば椎の葉に盛る
・強意を表す副助詞
・「し」を除いても文意が成立するから。また「AしVば」という形から。
・旅にいるので椎の葉に盛る
■10・「けれ」の識別
A:識別の基本
「けれ」については次の三種類を識別したい。
①過去「けり」已然
②詠嘆「けり」已然
③形容詞已然活用語尾(または語尾の一部)
④カ四段已然活用語尾+「り」已然
★→ まず「けれ」の上が連用形であるか否かで①②と③④を仕分けすることがこの識別のコツ。③は非常に間違えやすい。
B:識別のポイント
①過去「けり」已然
・例文:率て行きければ(連れていったところ)
・→ 連用形に接続していることを押さえればよい。詠嘆のニュアンスがないかどうかを確認。
②詠嘆「けり」已然
・例文:かうこそ燃えけれ(このように燃えていたんだなあ)
・→ 連用形に接続。過去、詠嘆は文脈判断。和歌の末尾、会話・心内表現の末尾にある場合に注意が必要。
③形容詞已然活用語尾(または語尾の一部)
・例文:野分の朝こそをかしけれ(台風の翌朝の有様はまことに趣深い)
・→ 形容詞活用語尾なので一語のまとまりを考えればいいということになるが、過去・詠嘆の「けれ」なら連用形に接続しているはずなので、「けれ」の上が連用形か否かをまず確認するのが、この識別のスタートと言える。特にシク活用已然形(例)「をかしけれ」の「けれ」を過去・詠嘆の助動詞と間違えやすいので注意が必要。
④カ四段已然活用語尾+完了・存続「り」已然
・例文:咲かざりし花も咲けれど(咲かなかった花も咲いているが)
・→ 連用形に接続していないので過去・詠嘆ではなく、「咲く」という一語のまとまりを考えれば「咲け・れ」だということが分かり、接続から「れ」は「り」(サ変未然・四段已然)であることに気づける。
C:例文での基本演習
次の各文の「なむ」はAの①~④のどれに該当するか。ただし、助動詞で形容詞型の活用をする語の語尾は③とする。
ア:冬枯れのけしきこそ秋にはをさをさ劣るまじけれ
イ:はやく散り過ぎにければ
ウ:貧しければ恨み切なり
エ:滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ
オ:恨みわびほさぬそでさへあるものを恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ
カ:秋の野をにほはす萩は咲けれども見るしるしなし旅にしあれば
キ:かかる人こそは世におはしましけれ
ク:四十路に足らぬほどにて死なむこそ目安かるべけれ
ケ:散ればこそいとど桜はめでたけれ
D:入試問題に挑戦
■「花も咲けれど」の「れ」が、受身、可能、尊敬、自発の助動詞「る」ではなく、完了、存続の「り」であることを接続の上から説明しなさい。
解答(C・D)
C:ア=助動詞一部・イ=過去・ウ=形容詞語尾・エ=詠嘆・オ=形容詞語尾・カ=動詞語尾+り・キ=詠嘆・ク=助動詞一部・ケ=形容詞一部
D:「る」の接続は未然形であり、「り」の接続はサ変の未然形と四段の已然形である。この「れ」は「咲け」というサ四段の已然形に接続しているので、完了、存続の「り」であると言える。
E:記述してみよう
次の「けれ」について文法的説明、識別の理由、口語訳を記しなさい。
A:これは竜のしわざにこそありけれ。
B:(恨みわびほさぬ袖さへあるものを)恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ
C:冬枯れのけしきこそ秋にはをさをさ劣るまじけれ。
D:埋もれぬ名を長き世に残さんこそ、あらまほしかるべけれ。
E:秋の野をにほはす萩は咲けれども(見るしるしなし旅にしあれば)
解答
A:これは竜のしわざにこそありけれ。
・:詠嘆の助動詞「けり」の已然形
・連用形に接続
・これは竜の仕業だったのだなあ
B:(恨みわびほさぬ袖さへあるものを)恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ
・シク活用形容詞「惜し」の已然形の活用語尾
・「惜し」一語のまとまりから。「けり」を助動詞としてみた場合、連用形接続に反する。
・この恋のために(浮き名が立って)きっと朽ちてしまうであろう我が名が惜しいことです
C:冬枯れのけしきこそ秋にはをさをさ劣るまじけれ。
・打消推量の助動詞「まじ」の已然形の一部
・「まじ」一語のまとまりから(「けり」を助動詞としてみた場合、連用形接続に反する)
・冬枯れの景色は秋にはほとんど劣らないだろう
D:埋もれぬ名を長き世に残さんこそ、あらまほしかるべけれ。
・推量の助動詞「べし」の已然形の一部
・「べし」一語のまとまりから 。「けり」を助動詞としてみた場合、連用形接続に反する。
・埋もれない名声を長き後の世に残すことは理想的であろう。
E:秋の野をにほはす萩は咲けれども(見るしるしなし旅にしあれば)
・カ四動詞「咲く」の已然形の活用語尾に、存続の助動詞「り」の已然形が付いたもの
・「咲く」の一語のまとまりから・「れ」は四段活用の已然形に接続しているから
・秋の野を匂わす萩が咲いているけれど
■11・「せ」の識別
簡易な形だが「せ」の識別についても載せておく。
記述してみよう。
各文のにの文法的説明、識別の理由、全体の口語訳を記なさい。
A:世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
B:わづかに二つの矢、師の前にて一つをおろかにせんと思はんや
C:脱ぎおく衣につつまむとすれば天人つつませず。
D:などかうは泣かせ給ふぞ
E:題出だして、女房にも歌詠ませ給ふ
解答
A:世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
・過去の助動詞「き」の未然形
・連用形に接続。過去「き」の未然形「せ」は、この「せば~まし」という反実仮想の呼応にだけ確認される。
・世の中に全く桜がなかったとしたら春の心は穏やかだっただろうに
B:わづかに二つの矢、師の前にて一つをおろかにせんと思はんや
・サ変動詞「す」の未然形
・「する」という意味が確認できる
・わずかに二本の矢(しかないのに)その一本を師の前で疎かにしようと思うだろうか
C:脱ぎおく衣につつまむとすれば天人つつませず。
・使役の助動詞「す」の未然形
・未然形に接続。「す・さす」が尊敬語と結びつかない場合は使役。
・脱いでおいた衣につつもうとしたけれど天人がつつませない
D:などかうは泣かせ給ふぞ
・尊敬の助動詞「す」の連用形
・未然形に接続。「す・さす」が尊敬語と結びつく場合尊敬であることが多い。
・どうしてこのようにお泣きになるのか
E:題出だして、女房にも歌詠ませ給ふ
・使役の助動詞「す」の連用形
・未然形に接続。「す・さす」が尊敬語と結びつく場合も文脈上使役のケースに注意。
・題を出して女房にも歌を詠ませなさる
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