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分類別古単no.57:結婚までの流れ

57■結婚までの流れ


受験生のための単語リストです。
ここでは「結婚までの流れ」についての古典常識を単語を紹介しながら説明することにし、例文は省略しました。
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■次の語の意味をA→Bで確認!

A 単語リスト

→かいまみる(垣間見)・呼ばふ・たより・懸想文・やをら・やはら・あふ・みる・ちぎる・かたらふ・きぬぎぬ・かよふ・すむ

B 語義と語感

結婚に至るまでの流れ

①噂・垣間見によって女性を知る
昔の女性は男性に姿を見られないようにしていたため、男性が女性を知るのは、噂や紹介で知るほか、源氏が若紫を見出した有名なシーンで知られる垣間見などだった。垣間見は文字通り、垣根の隙間から覗き見ることである。

②求愛行動・懸想文
女性を見初めた男性は求愛行動を取るが、この求愛を呼ばふ・呼ばひと言う。「ふ」は反復継続の上代の助動詞の名残(語らふ・まじらふ・移ろふなど)。具体的な行動として常套なのは、たより(つて)を通じて手紙を送る、これを懸想文と言う。今で言えばラブレター。必ず和歌が贈られ、その和歌の巧拙は重要だった。

③一夜をともにする
いよいよ意が通じると一夜をともにする。(そうでないケースもある。いや相当ある。出かけた先で、女の寝所にそっと「やをら・やはら」忍び込んで思いを遂げるなど頻繁に物語に登場する。)男女の契りは「あふ・見る・契る」などの言葉で表される。
あふ」は、和歌においては逢坂(の関)と掛詞となることも多い。
見る」はこの時初めてお互いの顔を見ることからかもしれない。和歌で「みるめなみ」の掛詞(海松藻:みるめ・波:なみ=見る目・無み→恋人と会う機会がないので)となることも覚えておきたい。
契る」は将来への約束、あるいはこの逢瀬が前世での因縁によるものだったとの意識かもしれない。男女のこうした場面でかたらふという言葉が用いられることがあるが、これは契りであり、語り合っているだけではない。

④後朝の文
逢瀬ののち、朝、男は自宅に帰ってから女へ手紙を送るが、これを後朝(きぬぎぬ)の文と言う。これは初めての逢瀬だけに限らない。男性としての重要な愛情表現であり、マナーである。かつては男女がお互いが脱いだ着物を重ねて逢瀬の夜を過ごした。だから一人寝の寂しさが「衣片敷しきひとりかも寝む」のように歌われている。「きぬぎぬ」はその着物をそれぞれが着る「衣衣」からきていると言われる。

➄結婚の成立
三日間通うと結婚が成立する。三日間連続でなければいけない。その際、女の家で披露宴に相当する「ところあらわし(露顕・所顕)」が行われ、三日夜の餅を食べる。当時の結婚形態は、一夫多妻、男が女の家に通ふ形で成り立っている。これを通ひ婚・妻問婚と言う。住むにも通ふの意味があるケースがある。男は女の家を宵に訪れ、暁に帰っていく。家の経済は女性の家が支える。

➅最終的には
この「通ふ」かたちがずっと続くわけではなく、適当な時期になると正妻を迎え入れて同居する。源氏の六条院のようにケースによっては他の妻も同居することがあった。ただし、こうした場合も、経済的には互いに独立し、子の養育は妻の経済的責任であったようである。中世ころからは現在のような嫁入りの形になり、財産は夫側へ吸収されていく。

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